大学受験|志望理由書・面接


一目でわかるハンドブックシリーズ 一目でわかる志望理由書ハンドブック



~常識の枠組みを超えた「志望理由書」

 本書は、おそらく書店に並んでいる他の志望理由書対策本とは根本的に考え方が異なっています。それは、多くの「志望理由書対策」の本が目前に控えた入試に向けてのごくごくありきたりの取り繕いと素朴な安全策しか述べていないのに対し、本書では昨今の推薦・AO入試の世界で台頭するようになった、平凡な常識の枠組みを超えた激しい意志表明を積極的に紹介しているという点にあります。
 現在の推薦・AO入試の世界では、信じられないような個性的なプレゼンテーション(発表)が高い評価の対象となっており、いつの間にか新世紀型の試験として新しい世界を作り上げています。
 また、このような新世紀型の試験への対応は、特別レベルの高い大学を受ける受験生の間のみで起こっているのではなく、ごく普通の大学を受ける受験生たちの間にも、旋風のように巻き起こっていることが特徴です。

 考えてみましょう。日本の大学の多くの新入生は、偏差値を競っている限り、ほぼ不本意入学です。なぜなら、第一志望に合格することは比率として圧倒的に少なく、あまり意識したことがない大学に、単にそれが試験日程の合ったすべり止め校だったということだけで入学することが多々あるからです。
 もちろん、こういった大学生が愛校心を持ったり、大学のカリキュラムに熱心につき合ったりすることは考えにくいものです。そして、おそらくこれが長く放置されてきた「遊ぶ大学生」という社会問題の背景の一つであるといえます。
 一方、志望理由書を課せられる受験生は、結局、自分の志望大学の中身をきちんと吟味することになります。志望理由書を書くということは、端的に言って、自分の長所や具体的目標を大学のカリキュラムや校風に結びつけていく作業ですが、その過程でどうしてもその大学の真の姿が浮かび上がってきてしまいます。
 以上のことから、一つのことが明確にいえます。それは、志望理由書とは大学が受験生を審査する材料であると同時に、受験生が大学を審査する材料ともなるのです。
 大学生になるための費用、そして卒業までにかかる費用はあまりにも高額で、人生への影響も多大なものがあります。だからこそ、志望理由書は説得力に満ちた良いものが書けないとダメなのです。
 深く考えられた志望理由書の背景には、深く考えられた進学への思いがあります。その大学でいいのか、それは自分の長所や人生の指針に合っているか――志望理由書を書くことで見えてくることは、一つの大きな財産ともいえるのです。

 本書では、数多くの本物の志望理由書を取り上げています。これもまた、一般的な参考書にありがちな、もともと上手い人の書いた模範的な文章を掲載したりはしません。大切なのは、書くことでいかに考えが深まっていくかを体感することです。
 それ故、上手くなる前の下手な志望理由書も多数掲載されます。書き手の名前が出ないとはいえ、掲載を許してくれたかつての生徒たちには感謝の念しきりですが、注目すべき点はそれらの書き手である生徒たちが、非常に満足し、納得して大学に入学した人たちばかりだということです。これは、ぜひ付け加えておきたいことです。

 さて、いよいよ本編です。本書をどのような状況で読んでいるか、人それぞれでしょうが、残された時間に応じてさまざまな対策を提言しています。ぜひ本書を熟読し、大学進学という良き機会を、人生を考える場として十分に活かしてほしいと思います。

河本敏浩

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