大学受験|数学


佐藤の単元別超教科書 シリーズ佐藤の数学教科書 三角比・平面図形編

数学を通して身につける力
 私は長年にわたって大学入試の問題を作って来ました。同時に、毎年膨大な量の答案を採点して来ました。その立場から、ぜひ高校生の皆さんに伝えたいことがあります。それは、採点基準の背後にある、数学を通して身につけなければならない 4つの力についてです。

数学の入試で求められている「4つの力」とは
 数学の入試問題で評価しているのは、次の4つの力です。
 (1)読解・分析力 … 与えられた問題文を正確に読んで題意をつかみ、分析する力。
 (2)翻訳力 … グラフや図形、文字、式などを用いて、題意を理解できるようにする力。
 (3)目標設定力 … 当面の目標を定めて、解答までの手順を設定する力。
 (4)遂行力 … 目標に向かって計算したり、式変形を遂行し解答をまとめていく力。

 これらの力は問題によって使い方に強弱・深浅はありますが、基本的にはこの「4つの力」が身についているかを、解答の中から判断するわけです。
 この4つの力は、実は数学だけでなく、英語や国語の問題を解いていく場合にも必要な力なのです。また、大学に入っても、社会に出ても役に立つ力になるのです。それは、人生の途上でいろいろな問題に出会ったとき、その問題を論理的に解決するための力でもあるからなのです。
 ですから、数学は高校の必須科目になっているのです。

【それぞれの力についての解説】
(1) 読解・分析力(問題文を正確に読んで題意をつかむ)
 この力こそ、問題全体を見渡す働きをしている力です。この力をさらに分類すると、大局的な力としては
 (ア)その問題全体の構造を把握できる力
があり、局所的な力としては
 (イ)問題の条件を把握する力
があります。そして、(ア)、(イ)を可能にする数学の知識を背景とした
 (ウ)定義や定理を復元する力
があります。
 与えられた問題に対して、これらの力が適切に使われるならば、解答は“半ば成功”と言えるのです。さらに、「問題文を正確に読む」方法としては
 「読解の仕方」、「読解の視点」、「読解の要領」
を正しく修得することが考えられますが、これらを身につけてこそ、「問題文を正確に読みこなすこと」が可能になるのです。
(2)翻訳力(題意を言い換える力)
 この力は、正確につかんだ題意を、目に見える形に翻訳し、客観化する役割を果たす力です。「題意を言い換える力」をさらに分類すると、
 単純化・簡単化を行なえる力、すなわち
 (ア)文字を使いこなす力
があり、さらに視覚化・具象化していく力として
 (イ)図やグラフなどを使いこなす力
があります。これに加えて機能化・具体化を行なえる力として
 (ウ)文章または式を言い換える力
もあります。
 これらの力の特徴は「〜化」と言われる、対象に働きかけ、その対象を変化させる力を意味します。
 これらの力は「問題文を正確に読む力」と同じく、本来は先天的な能力としての要素が多少はあるのですが、これらの力を身につけるためには、やはり意識的に練習を積み重ね、間断のない訓練によって修得すべきものと言えるでしょう。

(3)目標設定力(当面の目標を定めて、解答までの手順を設定する力)
 これは、解答への足がかりというか、具体的に解答の方向を定め、大きく足を踏み出す力を意味しています。
 ここでの「目標」とは、到達したい「ゴール」のことです。このゴールには、手始めのものもあれば、最終的なものもあります。「目標を定めて、解答の手順を設定する力」をさらに分類すると、
 論理的・直観的な視点から目標を定めていく
 (ア)数や式や図形などの目標を定めていく力
があり、経験的・演繹的な視点から目標を定めていく
 (イ)類似問題を連想し利用する力
があります。さらに、実験的・帰納的な表現法を背景に、目標を模索していく力である
 (ウ)具体化して様子を見る力
もあります。
 これらの力は、解答するに際して、筋道をつくるために当面のゴールを定める力です。特に(イ)に対しては、勉強を通して出会う問題は多いほどよいですが、それにもまさって、ひとつひとつの粒よりの問題を確実に理解している方がより重要と言えるのです。したがって、少数であっても、繰り返し本書で勉強を続けるならば、これらの力は十分に身につくのです。

(4)遂行力(計算や式変形を遂行していく力)
 これは数学の問題を解く上で不可欠の行為です。これらの力は読んでわかるように、答案を実際に作成する場合の基本と言えるものでしょう。
 まず、大局的な力には、方針や解法を定める
 (ア)手法を選択する力
があります。局所的な力には、計算力と言われる
 (イ)目標に向かって具体的に展開する力
があり、さらには、問題全体の流れを見極める
 (ウ)設問を活用していく力
もこの力になります。
 これら、(3)(4)における力は、本来は後天的に獲得できる力と言われるもので、多くの問題を解くことによって、そこに用いられる力がどんなものであるかを確認し、整理して記憶する必要があります。

 特にセンター試験の問題は、全体としてこの4つの力が実にバランスよく作られています。そうして、こうした観点から勉強を続けていけば、みごとに2次に直結する力がついていくのです。

 本書では、一貫してこの方法を学びます。最初のうちは、何かまどろっこしく感じるかもしれませんが、そのうちにだんだんとこの4つの視点が威力を発揮することが実感できます。そして、本書をやり終えるまでにそれが身につき習慣化すると、これまでは行き詰まっていた2次・私大のどんな問題でも突破していける自信がわいて来るでしょう。

佐藤恒雄

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