大学受験|数学
佐藤の数学教科書 指数・対数関数編

■はじめに■
「指数・対数関数」について
指数、対数関数の起源は、まず指数から始まり、次に対数に移りました。指数の発展は、多くの数学者の努力が実ったものでした。
3次方程式の解の1つ、例えば、今日では立方根√と書かれる数は、イギリスの数学者ハリオット(1560ー1621)によれば、当時は、立方根に√を用い、√.)26+√と表す工夫をしました。また、今日のa2 はaa、a3 はaaa で表し、指数の記号化に尽力しました。さらに、解析幾何学を発展させ、直角座標で方程式と曲線を同一に見ようという考えを推し進めました。ハリオットはケプラーとも文通し、太陽の黒点や木星の衛星を発見した天文学者でもありました。
デカルトは、aa をa2、aaa をa3 と表す工夫をして、劇的に当時の指数法則の記述を改良します。
一方、オランダの技術者シモン・ステヴィン(1548ー1620)は小数に関する理論で有名ですが、小数の記号に関連して、指数記号を考案します。そして、指数として、整数のほかに分数指数にまで拡張します。
ドイツの数学者で16世紀最大の代数学者といわれるのは、ミカエル・シュティフェル(1487ー1567)は、ルター派の神学者でしたが、数学の愛好者でもあり、数の神秘に興味
をもちます。そして、等比数列と等差数列の関係を調べ、等比数列
…,—,—,—,1,2,4,8,16,…
を
…,2−3,2−2,2−1,20,21,22,23,24,…
と表し、右肩の数字を指数(Exponent)とはじめて名づけます。現今の記号では
y = 2x
ということですから、はじめて指数関数の概念をもった人物と推量されます。この指数関数のアイデアが一旦生まれると、あとは堰を切ったように拡がって行き、各国の数学者が競って指数関数について研究ることになります。フランスのパスカル父子も指数関数を研究しました。
一方、対数の発見は1614年にスコットランドの数学者ネーピア(1550ー1617)によってなされました。現代の高校の教科書をはじめ、本書でも指数の逆関数として対数が定義されていますが、ネーピアがシュティフェルやステヴィンの考案した指数記号がまだよく知られていないときだったので、ネーピアはそれらの指数の記号とは独自に対数を発見したのです。このことは、数学史上の一大驚異であるとされています。
ネーピアは、対数表をつくるために、今日の
y = 107log(10 − 7x)
の形の対数関数を考えています。ここで、e は自然対数の底ですが、ロンドンのグレシアム・カレッジで幾何学の教授をしていたブリッグスがネーピアを助けて対数表の完成を図ったのです。やがて、使いやすい10 を底とする常用対数を考えて対数表をつくることを助言します。
これによって、天文学的数学といわれる巨大な数の計算は対数表を用いて簡単に計算することができるようになりました。当時のイギリスの社会状況から見れば、クロムウェルの清教徒革命の基盤となった反ローマ教皇の精神をもっていたネーピアやブリッグスです。市民革命を遂行したイギリスの先進性を表す
「数値計算」
を生み出した風土にもなっていました。天文学、暦、力学、工学、土木学、音響学、音楽、植物学、生理学などの発展にともない、厳密な数値計算が必要になってきたのです。
数値計算をするには、三角関数表や対数関数表が不可欠です。そのためには、個々の関数の特性を調べ、研究を推進する必要があります。数学の教授ではありませんでしたが、イギリ
スの聖職者オートレッド(1574ー1660)は、数学に深い興味をもち、その知識は一般の教授よりも高かったといわれました。彼は計算尺を発明します。
また、ケプラーやロベルヴァル、バロウなどのニュートンの微積分の発見に先立つ研究を通して、オートレッドはe を底とする自然対数をはじめて用いたといわれます。
このオートレッドの弟子として有名なのが、ウォリスとレンです。ニュートンとライプニッツの微積分学の発見後、ニュートン学派のテーラーやマクローリンは、指数関数や対数関数の級数展開を試み、ルジャンドルやコーシーによって成功します。ライプニッツ学派のホイヘンスやベルヌーイ京大が種々の関数を発見しますが、さらにそれに輪をかけたのが、オイラーです。現在の数学のどの分野でも、オイラーの名を冠した基本公式を見い出すことができます。その意味で、18 世紀は数学にとって関数の世紀、あるいは事実の世紀と呼んでいいのかもしれません。その精神は、やはり目に見えなかった世界の現象を具体化し翻訳化した関数の世紀ですから、本書は歴史を通して必要とする翻訳力をなぞり、またその力を修得する内容となっているのです。
数学を通して身につける力
私は長年にわたって大学入試の問題を作って来ました。同時に、毎年膨大な量の答案を採点して来ました。その立場から、ぜひ高校生の皆さんに伝えたいことがあります。それは、採点基準の背後にある、数学を通して身につけなければならない問題解決のための4 つの視点と12 の力です。
それはまず、I 問題文を正確に読んで題意をつかむ力(読解・分析力)です。これは、問題全体を見渡す働きをしている力で、この力をさらに分類すると、
1.その問題全体の構造を把握できる力
2.問題の条件を把握する力
3.定義や定理を復元する力
になります。与えられた問題に対して、これらの力が適切に使われるならば、解答は半ば成功といえるのです。
2番目は、II 題意を言い換える力(題意の翻訳力)です。これは、正確につかんだ題意を目に見える形に翻訳し、客観化する役割を果たす力で、この力をさらに分類すると、
1.単純化・簡単化を行う文字を使いこなす力
2.視覚化・具象化していく図やグラフなどを使いこなす力
3.機能化・具体化を行う文章または式を言い換える力
になります。これらの力の特徴は、「〜化」といわれる、対象に働きかけその対象を変化させる力を意味します。3番目は、V当面の目標を定めて、解答までの手順を設定する力(目標設定力)です。これは、解答への足がかりというか、具体的に解答の方向を定め、大きく足を踏み出す力を意味します。この力をさらに分類すると、
1.論理的・直観的な視点から目標を定めていく、数や式や図形などの目標を定めていく力
2.経験的・演繹的な視点から目標を定めていく、類似問題を連想し利用する力
3.実験的・帰納的な表現法を背景に、目標を模索していく力である具体化して様子を見る力
になります。これらの力は、解答するに際して、筋道をつくるために当面のゴールを定める力です。
最後は、計算や式変形を遂行していく力(遂行力)です。これは、数学の答案を実際に作成する場合の基本となる力で、さらに分類すると、
1.大局的な方針や解法を定める手法を選択する力
2.局所的には、計算力といわれる目標に向かって具体的に展開する力
3.問題全体の流れを見極める設問を活用していく力になります。
これらの力は、実は数学だけでなく英語や国語の問題を解いていく場合にも必要な力になるのです。また、大学に入ってからも、社会に出てからも役に立つ力となるのです。
そしてそれは、人生の途上でいろいろな問題に出遭ったとき、その問題を論理的に解決するための力になります。じっくりと腰を据えて取り組んでください。
佐藤 恒雄