大学入試センター試験解答速報2008
化学I
全体概観

大問構成に変化なし。マーク数、計算問題が増加した。難易度は昨年並み。 


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問4題、各大問の配点が25点という形式は昨年と変わらなかった。第1問のマーク数が1つ増え、全マーク数が29個となったほか、2006年度の傾向に戻り、計算問題が増加した。目新しいところとして、ヘリウム原子の構造、セッケン分子と油滴が形成する構造のモデル図が選択肢となる設問が出題された。設問によって難易度に差が見られたが、全体的に難易度は昨年並みであろう。

【出題フレーム】

 

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2008

第1問

原子・分子の構造、化学反応式、身の回りの化学

7

8

25

第2問

熱化学、中和滴定、酸化還元、電気分解、電池

4

7

25

第3問

無機物質全般

6

7

25

第4問

有機化学全般

6

7

25

2007

第1問

原子・分子の構造、実験操作、物質量、身の回りの化学

7

7

25

第2問

熱化学、中和滴定、酸・塩基、酸化還元、電池

6

7

25

第3問

無機物質全般

6

7

25

第4問

有機化学全般

7

7

25

2006

第1問

身の回りの化学(無機・有機物質の分野)、実験操作、原子・分子の構造

7

7

25

第2問

気体の物質量、熱化学、酸・塩基の中和とpH、電気分解

7

7

25

第3問

無機物質全般、酸化還元反応

7

7

25

第4問

有機化学全般

7

7

25

2005

 

第1問

原子・分子の構造と性質、化学結合

6

6

19

第2問

蒸気圧、物質の状態、沸点、溶解度、熱化学

5

5

19

第3問

酸・塩基、金属イオン、酸化剤、電気分解、ダニエル電池、アンモニアソーダ法

6

6

19

第4問

無機物質全般、中和滴定曲線

6

7

19

第5問

有機化合物全般

6

7

24


過去2年間の平均点
2007 2006
61.35点 64.13点

設問別分析
【第1問】原子・分子の構造、化学反応式、身の回りの化学     
小問集合は構造式、イオン化エネルギー、物質の分類という基本的な問題であった。問2のヘリウム原子の直径は意外と忘れていた知識ではなかったか。目新しい原子モデル図の選択は、易しいものではあるが、質量数6と原子番号で出題されなかったところがポイントであろう。問4の化学反応式は扱っている内容は環境問題と見慣れない設問であり、係数は間違えやすい。今回、唯一の身の回りの化学について問うた問4は、比較的容易に解ける設問であった。

【第2問】熱化学、中和滴定、酸化還元、電気分解、電池
計算問題が復活した第2問であるが、内容は、反応熱、中和反応、電気分解と電池とほぼ同じであった。しかし、問1で炭化水素をnの不定数で与えられている点や、問4で3種の金属について考察しなければならない点など、確実な基礎知識が必要とされるものであった。問2の電離度の計算も解きにかったのではないだろうか。問3の酸化数を求める設問は過去に何度か出題されている。

【第3問】無機物質全般   
問1では元素の性質についての選択肢のうち、正しいもの1つは確定しやすいが、そこに気がつかないと例外が1つあるだけなど、迷いやすい設問であった。問2で、答えをすぐに確定することや、問3の無機化合物の工業的製法は、化学反応式を組み立てずに、反応物質と生成物質を比較するなど、時間をかけずに処理していくことが、60分で今回の問題を解き終えるためには有効だったと思われる。問4はアンモニアを発生させる実験の化学反応式が正しく書けるかがポイントであった。なお、弱塩基の遊離という反応の原理も同時に出題されている。問5、6とも金属イオンの検出やポピュラーな気体の発生反応で基本的な無機の知識のみで対応できるものであるが、全ての設問をクリアできないと求まらないので、対応は大変だったと思われる。

【第4問】有機化学全般    
問1の高分子化合物は、教科書で頻繁に扱われているポピュラーなものばかりだった。第1問同様、図を選ぶという問2のミセルの構造は、セッケンの洗浄作用(乳化)として、どの教科書にも図が載っている現象である。問4は選択肢の構造式が複雑であることに惑わされず、けん化が2箇所で生じ、幾何異性体、つまり、二重結合を含む化合物とヨードホルム反応陽性のエタノールが生成することに気がつくことがポイントである。問5はサリチル酸メチルの合成及び精製の操作まで扱っている。問6はフェノールの検出反応であることにきづけば解きやすかったものと思われる。
新高3生へのアドバイス
センター試験では60分で23問(2008年度)をこなさなければならないので、迅速な判断力や正確な計算力が要求されます。各分野の配点率はほぼ一定で、教科書の内容を逸脱しない基本的な知識で解ける問題で構成されています。ただし、出題の仕方は工夫されているので、グラフを用いた定量的な扱いをする問題や、表や実験装置図から条件を確認・把握する問題などに対応しておくよいでしょう。また、身の回りの化学の分野からの出題は様々なスタイルをとっています。単に暗記をするという学習法だけでなく、実生活にどう化学が関わっているのかを日頃から意識して幅広く知識を積むことが大切です。  センター試験はもはや国公立大学志望者だけのものではありません。センター試験を利用する私立大学は8割以上に達し、その利用方法も複数あります。得意科目だけで高得点をあげれば合格できるという選抜方式が多いので、各大学・年度によって傾向や難易度が大きく異なる一般入試の化学より、比較的安定して自分の実力が発揮できるセンター試験の化学Iを利用することはかなり有効であるといえます。  2月から始まる東進のセンタープレ入試は、近年のセンター試験の出題傾向に合わせて作られているので、まず、センタープレ入試・2月を受験して自分の学力を判定してみましょう。年々変わりつつある大学入試を攻略するために最良なのは、早期にセンター試験対策に取り組むことです。
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