大学入試センター試験解答速報2008
倫理
全体概観

大問構成・マーク数は昨年度と同じ。出題形式・内容・難易度も大きな変化はなし。 


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

2008年度は昨年と大問構成は同じで、一般的な教科書の章立てに近い出題の順番であった。青年期の心理、源流思想、西洋近現代思想、日本思想、現代社会分野の順での5問構成である。昨年までA〜Cのリード文に分かれていた第5問が、一つのリード文での出題となった。出題されているテーマは基本事項であるが、問われている内容は深く掘り下げたものが多く、表層的な理解では正答に至らない場合がある。昨年から引き続き、日本史分野に該当する知識問題が出題された。具体的事例の組み合わせ問題が第1問と第5問で、グラフの読み取り問題が第1問で出題されており、冷静に対処する必要がある。総じて、昨年から大きく傾向は変わらず、対策が立てやすかったこともあり、平均点は昨年並みと予想される。

【出題フレーム】

 

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2008

第1問

青年期の課題

3 

3 

8 

第2問

運命について(源流思想)

8 

9 

24 

第3問

自尊の精神(日本思想)

8

9 

24 

第4問

道徳について(西洋近代思想)

8 

9 

24 

第5問

責任について(現代社会分野)

7 

7 

20 

2007

第1問

 青年期の心理

3 

3 

8 

第2問

 源流思想

8 

9 

24 

第3問

 「和」について

8

9 

24 

第4問

 西洋近代思想と法律について

8 

9 

24 

第5問

 民主社会について

7 

7 

20 

2006

第1問

青少年をとりまく社会環境

3

3

8

第2問

老いの価値と可能性

8

9

24

第3問

人間の力とその限界

8

9

24

第4問

伝統的な価値とニヒリズム

8

9

24

第5問

「他者」について

6

7

20

2005

第1問

「傲慢」であることについて

8

9

25

第2問

近代西洋における自由をめぐる思索

7

9

25

第3問

男女関係に関する日本人の価値観

8

9

25

第4問

近現代における性的役割分担

8

9

25


過去18年間の平均点
2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999
69.66点 68.74点 67.03点 69.87点 60.66点 65.58点 68.13点 54.42点 60.09点
1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990
69.35点 71.10点 64.92点 67.03点 62.75点 62.34点 60.88点 63.31点 71.88点

設問別分析
【第1問】 青年期の課題 
06年・07年に引き続いて組合せ問題が2題出題された。青年期の課題に関する問2は例年どおり。図表の読み取りに手間取らなければ問題ないだろう。時間をかけて良いから、落ち着いて解いてほしい。

【第2問】運命について(源流思想)
問2のソクラテスや問4のイスラームなど、本流を行く素直な問題が多かった。ただし、問2の空欄5は正確な知識が、アウグスティヌスの思想についての問5はかなり丁寧な理解が要求される。インドの宗教的実践について問う問7は、消去法でも解けるとはいえ難問であろう。

【第3問】自尊の精神(日本思想)
昨年と同様、日本史に関わる知識を問う問題が出題された。問3・問4は史料を丁寧に読んで答える必要がある。問7はやや細かい人名が問われたため、受験生には難問だったと思われる。問6の夏目漱石など、頻出の人物が今年も出題されており、過去問演習の重要性が再確認された。

【第4問】道徳について(西洋近代思想)
基本的な知識で解ける易しい問題が多かった。問5のヘーゲルによるカント批判など、西洋近代思想の大きな流れから本質を問う良い問である。問2がやや知識系の問題だが、難しくはない。フランクフルト学派についての問4も頻出のテーマなので、多くの受験生にとって理解しやすかったはずだ。

【第5問】責任について(現代社会)
2年続いたリード文3分割の形式が改められたほか、本文の趣旨を問う問題が新たに配された。また組合せ問題が出題された点も新しい。昨年に引き続き、公益通報についての問2とNGO・NPOについての問5など、時事的な知識を問われているので対策が必要である。

新高3生へのアドバイス
センター試験の倫理はここ3年は大問が5問で構成されていて、出題分野の順番も3年連続で同じでした。平均点は「現代社会」「政治・経済」と比べても高い傾向がここ数年続いています。しかし問題そのものが簡単なわけではありません。センター試験では知識問題に加えて、思想の本質的な理解を問う問題、論理的思考力を問う問題、さらには、具体的事例の組み合わせ問題、原典・資料の読解問題など、出題形式はバラエティに富んでいます。また、選択肢を的確に読み取って正誤を判定する力が求められます。暗記だけでは得点に結びつきにくいと言えるでしょう。しかし、思想の本質にあたる部分を理解できていれば、得点力が飛躍的に向上するのもこの科目の特徴です。そのためには、まず第一に暗記に頼らず思想・宗教の内容を本質から理解すること、そして第二に、問題演習に早い段階から取り組み、実戦的な力を高めることです。東進では2ヶ月毎にセンター試験と同レベル・同傾向のセンタープレ入試を実施しています。直前になってあわてるのではなく、1年間の長い目で計画を立てて下さい。
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