物理I
全体概観

設問数、マーク数とも1つ減少したが、全体的な形式・分量は昨年と同様であった。計算量は多くないが、物理現象の考察力が問われる。 

大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問4題形式は例年通りで、各分野の配分・配点も昨年度から大きな変更はない。設問数21問は昨年度から1問減り、マーク数も昨年から1つ減って24となった。第4問では力学と熱の順序の入れ替えがあった。計算の分量は昨年度より幾分減っており、この点での負担は軽くなった。しかし、グラフや語句を選ぶ設問では論理立てた考察が必要で、決して容易には解けない。また、複数の語句を組合せて解答する設問も6問と多く、このあたりで失点を重ねてしまった受験生が多いのではないかと推測される。総合すると、かなり平均点が低かった昨年度より易化したと思われる。過去の出題例に近いものとしては、第1問 問4が2001年本試験 第4問、第2問 問3が1995年本試験 第3問などが見受けられた。

年度

大問

出題範囲

設問数

マーク数

配点

2011

第1問

小問集合

6

7

31

第2問

電磁気学

4

5

20

第3問

波動

5

5

20

第4問

力学、気体の状態変化

6

7

29

2010

第1問

小問集合

6

6

30

第2問

電磁気

4

6

20

第3問

波動

4

5

20

第4問

力学・熱とエネルギー

8

8

30

2009

第1問

小問集合

6

7

30

第2問

電気

5

5

20

第3問

波動

5

5

22

第4問

力学・熱とエネルギー

7

7

28

2008

第1問

小問集合

6

8

30

第2問

電磁気

5

5

20

第3問

波動

5

6

20

第4問

力学・エネルギー

7

7

30


過去の平均点の推移

2010 2009 2008 2007 2006
54.01点 63.55点 64.55点 64.42点 73.42点

設問別分析
【第1問】小問集合

問1の図選択は、固定端反射の特徴を知っていれば正答できる。問2の振り子運動では、力学的エネルギー保存則を立てたうえで、θが90°と180°の場合で速さを確認するとよい。問3では、帯電体の性質とともに電荷分布の様子をイメージすること。問4は、波の進行方向に垂直な波面を考え、速さ・波長の関係を屈折と関連付ける。水波で同様な屈折に関する出題が過去にある。問5は、本年度唯一の剛体のつりあいに関する問題。問6のエネルギーの考察(次元解析)は、意外に失点しやすい。「電圧×電流」は仕事率(単位:ワット)を表し、エネルギー(仕事)ではないので注意が必要である。



【第2問】電磁気学

Aは直流回路と非線形抵抗に関する問題。特性曲線の出題は、白熱電球を用いた2001年本試験、半導体ダイオードを用いた2004年本試験にもある。問1は数値計算であるが、全体の電圧が2つの電球に1:1に分配されることに気付けば難しくない。問2では計算力で押し進めようとせず、電流・電圧がきれいな数値を取るグラフの何ヶ所かで、抵抗にかかる電圧も合わせた計算をするとよい。

Bは電磁誘導に関する問題。95年本試験、07年本試験でも、磁石の移動と誘導電流の関係が出題されている。磁束の増加・減少、起電力と電流の向き、さらにそれらの間に生じる力を丹念に追えばよいのだが、空間内での向きの考察はミスを引き起こしがちである。問3は2つ、問4は3つの語句を全て組み合せる必要があり、ミスした受験生は多かったであろう。



【第3問】波動
   
Aは光の屈折とレンズに関する問題。
問1は、凹レンズによる結像の簡単な作図をすれば難しくないであろう。問2の目の働きは、一部教科書に記載されているのだが、受験生に見慣れない素材で苦労したかもしれない。レンズの公式で簡単な確認をすると、a、b、fのうち、bを一定にしてaを増せば、fも増す必要があると気付くはずである。いわゆる近視では、網膜の前方に結んだ像を、凹レンズで網膜まで移してやればよい。

Bは音波に関する問題。2004年本試験に同様の音波の干渉の出題、2010年本試験では水波の干渉の出題があった。問3は周期をグラフから読み取り計算すればよいので、難しくない。問4は、弱め合う条件を波長を用いて表す。問5では、経路差が変化前と変化後の波長に対してどのような関係になるかを考察しなくてはならず、少々厄介かもしれない。


【第4問】力学、気体の状態変化

Aはばねによる弾性力が題材。問1では、2つのおもりのつりあいを独立に考える。下のおもりには弾性力が、下のばねだけから働くことに注意。問2では、重力の位置エネルギーも考慮に入れて、力学的エネルギー保存則を立てるとよい。

Bは摩擦と運動方程式に関する問題。問3は、等速度運動中の力のつり合いを考えれば難しくない。問4ではAとBの間隔が狭まることから、加速度の大小関係さらには停止までの時間を考察する。特別に難しくないが、組み合わせで正答するのは厄介だといえる。

Cは気体の状態変化の問題。浮力や静水圧に関する出題は、近年では07年本試験、09年本試験にあり、注意が必要な題材である。問5では、円筒の力学的なつり合いから、圧力一定の変化であることを見抜けないと苦しい。それが分かれば、ボイル・シャルルの法則から計算できる。問6は、液面の位置での圧力の求め、さらに円筒のつり合いを考える。静水圧の知識が必要になる。

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