化学I
全体概観

マーク数に変化なし。設問数、計算問題が増加。出題内容と形式に変化なし。 

大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問数、マーク数ともに昨年と同じであったが、第2問の計算問題の数が昨年の2倍になるなど、全体の計算問題は増加した。第1問で出題された周期表や電子配置を正確に理解しきれていない受験者が多かったのではないだろうか。また、2008年から出題されている実験の操作や結果を考える問題が増えている。いっぽうで、昨年2問出題された8択の問題は1問に減少している。さらに、化学Iになった2006年から、毎年出題されていた油脂やセッケンに関する問題がグリセリンの構造式を問う程度の出題でしかなくなった。難易度は設問によって差があるが、総合するとやや易化と思われる。


年度

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2011

第1問

物質の構造、周期表、物質の量的関係、身の回りの化学

6

7

25

第2問

熱化学、酸化還元、中和滴定、電池・電気分解

6

7

25

第3問

無機物質全般

7

7

25

第4問

有機化学全般

6

7

25

2010

第1問

物質の構造、状態変化、物質の量的関係、身の回りの化学

7

7

25

第2問

熱化学、酸と塩基、酸化還元、電池

4

7

25

第3問

無機物質全般

6

7

25

第4問

有機化学全般

6

7

25

2009

第1問

原子・分子の構造、物質量、身の回りの化学

7

7

25

第2問

熱化学、中和滴定、電気分解

4

7

25

第3問

無機物質全般

6

7

25

第4問

有機化学全般

6

7

25

2008

第1問

原子・分子の構造、化学反応式、身の回りの化学

7

8

25

第2問

熱化学、中和滴定、酸化還元、電気分解、
電池

4

7

25

第3問

無機物質全般

6

7

25

第4問

有機化学全般

6

7

25


過去の平均点の推移

2010 2009 2008 2007 2006
53.79点 69.54点 64.21点 61.35点 64.13点

設問別分析
【第1問】物質の構造、周期表、物質の量的関係、身の回りの化学
小問集合の問1aは電解質を選ぶ問題、bは物質の構造に関する問題であったが、ともに今までの小問集合とは異なり、物質の性質や構造式などを把握していないと解けないものであった。問2は金属・非金属元素と混同した人がいたと思われる。問3は電子配置からその原子を決定し、性質を判定する解きにくい問題である。問4、5の分子数および気体の体積変化の計算は比較的簡単なものであった。問6の身の回りの化学は代表的な物質のみを扱っている。

【第2問】熱化学、酸化還元、中和滴定、電池・電気分解 
問1の反応熱を算出する問題は、昨年と同様であった。問2は水に関する反応熱の正誤問題である。問3の水の温度上昇に関する計算は2009年にも出題されている。問4の還元剤の選択は、化学反応式が与えられているので対応しやすかったと思われる。問5aの実験器具の扱いは、物質量が一定なのか、濃度が一定なのかを基準に判断すれば対応できる。bの中和滴定の計算は,10倍に希釈していることを見落とした人がいたと思われる。問6は実験結果をグラフで判断する問題としてはポピュラーなスタイルではあるが、電池の反応と電気分解の反応を組み合わせた解きづらい問題であった。

【第3問】無機物質全般   
問1は希ガスに関する出題である。原子量から判断できるが、これに気がつかないと個々の性質で迷った人もいたのではないか。問2はアルカリ金属の炭酸水素塩の熱分解によって、二酸化炭素と水が生じることを知っていればすぐに対応できるが、反応物と生成物を比較するだけでは対応に苦慮する問題である。問3の同素体は、とてもポピュラーなものを扱っている。問4もセンター試験でよく出題される金属の反応を扱っている。問5は四酸化三鉄が還元されるときの反応式を要する出題である。問6の難溶塩の判定はいずれか一方ということで難しかったと思われる。問7の塩素酸カリウムは実験室での酸素の製法として頻出であり、記憶していれば対応できたと思われる。

【第4問】有機化合物全般
問1は、1−プロパノールの構造式が書け、第1級アルコールであることに気づけたかがポイント。問2は、幾何異性体と光学異性体を同時に問う点が新しく、やや答えにくい問題であった。問3は、2007年と分子式が異なるだけの同内容の問題であった。問4は、1998年と同じ内容。クメンヒドロペルオキシドの構造式を問う点が新しい。問5は、2008年とまったく同じ実験装置が出題されている。a では、2008年の問題を解いたことがある受験生にはかなり有利であった。b は、問3と同じエステルの加水分解に関する出題であり、エステルに関して苦手意識をもっている受験生にはこの問いで合計3題の出題となりかなり厳しい。問6は、過去に出題された問題とは、出題形式が異なる問題であったため、面食らった受験生が多くいたと思われる。
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