日本史B
全体概観

経済分野からの出題が大幅に増加。図版・地図・グラフが用いられた、バラエティーに富んだ出題内容に。 

大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問数6題、小問数36問の問題数は昨年度と同様。

特定の分野に偏重することなく、政治・外交・経済・文化と満遍なく出題されていたが、経済に関する問題が計15問と増加した。普段からしっかり学習しておけばそれほど難しくないと考えられるが、経済に関する問題のなかにはあまりみなれないものもあり、やや難問に感じられた受験生もいるかもしれない。

なお、全体的には、昨年度より易化した。

また、図版・史料が用いられたセンター試験特有の問題も、それぞれ4問・3問あり、多方面から歴史を考察する力が受験生に求められている

出題形式は正誤問題が中心であり、なかでも「正しいものの組合せ」や「正誤の組合せ」を解答させる問題が増加した。一方で、時代配列問題は減少した。

出題範囲は原始・古代から戦後史までと幅広く、近現代史の問題では1990年代の内容に関わる選択肢も出題された(第1問 問6 (4))。これは、受験生にやや難しい印象を与える要因になったと考えられる。

年度

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2011

第1問

明かりと燃料の歴史

6

6

12

第2問

原始・古代の政治と宗教

6

6

18

第3問

中世の政治・文化・社会

6

6

18

第4問

近世の外交・政治・社会

6

6

17

第5問

金子堅太郎

4

4

12

第6問

近現代の日本の経済・社会

8

8

23

2010

第1問

古代から近代までの武士

6

6

12

第2問

古代の政治・文化

6

6

18

第3問

中世の文化・政治・社会

6

6

18

第4問

近世の政治・社会

6

6

17

第5問

明治前期の産業・経済

4

4

12

第6問

渋沢栄一・敬三

8

8

23

2009

第1問

地方行政区画の歴史的変遷

6

6

12

第2問

原始から中世初期の社会・文化

6

6

18

第3問

中世から近世初期の政治と外交

6

6

18

第4問

近世の政治と社会

6

6

17

第5問

近代の政治・社会

4

4

12

第6問

幣原喜重郎

8

8

23

2008

第1問

古代から近現代の祭礼や信仰

6

6

12

第2問

原始・古代の社会

6

6

18

第3問

中世の政治と文化

6

6

18

第4問

近世の政治・経済

6

6

17

第5問

明治前期の政治

4

4

12

第6問

尾崎行雄を題材にした近現代史

8

8

23


過去の平均点の推移

2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001
61.51点 57.94点 64.27点 67.02点 54.66点 59.27点 56.52点 63.93点 58.71点 55.26点
2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991
61.74点 58.98点 62.18点 55.85点 59.99点 57.37点 70.08点 73.37点 63.97点 66.22点

設問別分析
第1問 明かり・燃料の変遷と社会の変容(古代〜近代の経済・産業)
労働問題やエネルギー問題など、近年社会問題化している題材をあつかった。政治・経済・文化などを問う総合的な問題で、広範囲な時代から選択肢文を用意する傾向は今年も顕著にみられた。まさに、広い視野に立って歴史を考察する能力の有無が、得点を大きく左右したと考えられる。また、問5では明治時代後期の紡績業における工場労働の形態について、問6では1990年代の内容に関わる選択肢が出題されたが、やや難易度が高いものであった。

第2問 原始・古代の政治・宗教
文化史や土地制度史といった、多くの受験生が苦手とする分野であったので、得点差がつきやすい大問だったといえるだろう。なかでも、土地制度史について出題された問4・問6は、歴史用語の表面的な暗記に終始している受験生にとっては難しく感じられたであろう。特に問6の時代配列問題は、やや抽象的な選択肢文となっていたので、これらの文章を各時代の土地制度史上の特徴となっている歴史用語にいかに的確に合致させ、熟慮できたかが大きなカギとなっただろう。

第3問 中世の政治・文化・社会
中世の政治・文化・社会をテーマとした問題で、鎌倉時代の政治、室町時代の外交や中世の経済・産業全般、絵画建築を問うものであった。他の大問よりも選択肢文が短く、かつ内容もオーソドックスであったため、難しさもさほど感じることはなかったはずだ。問3では地図問題が出題されたが、寧波という都市の位置をきちんと押さえていただろうか。資料集を用いた地図学習の重要さをあらためて認識させる問題であった

第4問 近世の外交・政治・社会
近世初期から後期の広範囲にわたって、政治・外交・社会・文化と多くの分野を多角的に問う問題が多かった。選択肢文は問3のように長文のものもあったが他は例年並みの長さであり、また問6以外は比較的正答を導きやすい標準的な問題であった。問6は文化史に関する正しい組合せを解答する正誤問題で、時期・人物・内容などを複合的に問うものだったので苦戦を強いられた受験生が多かったであろう。

第5問 金子堅太郎
例年第6問で出題されていた、特定の人物にスポットをあてた問題が、今年は第5問に変更となった。金子堅太郎は近代において官界・政界・産業界など多方面で活躍した人物であったので、問題も複数の分野から出題されていた。問1・問3はやや細かい知識を問うもので難度が高かった。問2は時期を、問4は時期・人物の事績をしっかり吟味できれば比較的容易に正答できる問題であった

第6問 近現代の日本の経済・社会
明治時代後期から高度経済成長の終焉までの経済史を主軸としたテーマ史であった。通史学習とともにテーマ史学習をしっかり行っていれば、高得点を期待できる典型的な問題である。問題内容は全体的に易しかったが、「インフレーション」「固定相場制」などの経済用語をしっかり理解できていなければ確実に得点することができない問題であった。また、1970年代や1980年代の出来事についての選択肢文も多かった。今後も昭和時代(戦後)の出題には注意したい

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