化学I
大問数、マーク数に変化なし。設問数が2つ減少。出題内容と形式は昨年を踏襲。
大問数 |
減少 | 変化なし | 増加 |
設問数 |
減少(-2) | 変化なし | 増加 |
マーク数 |
減少 | 変化なし | 増加 |
難易度 |
易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 |
大問数、マーク数に変化はなかったが、設問数が減少した。また、出題内容と形式に大きな変化はなく、第3問の複数選択式の設問や、第4問の有機化学分野で結合や官能基の名称を選択させる設問など、昨年度と同様の出題であった。また、計算問題は昨年に比べ減少した。一方で、2011年から選択肢数は減少傾向にあったが、2014年は最大で8択となっている。また、4択の問題が2013年は2題あったが、2014年は1題に減少している。2013年と同様、過去のセンター試験問題と似通った出題が複数問あり、過去問学習を行うことの重要性を再認識する問題であった。全体として昨年に比べて易化した。
|
大問 |
出題分野 |
設問数 |
マーク数 |
配点 |
2014 |
第1問 |
放射性同位体、周期表、イオン、濃度計算、混合気体、身のまわりの化学 |
6 |
7 |
25 |
第2問 |
生成熱、燃焼熱、中和滴定、酸化還元反応、電気分解、ダニエル電池 |
6 |
8 |
25 |
第3問 |
無機物質全般 |
7 |
7 |
25 |
第4問 |
有機化学全般 |
6 |
11 |
25 |
2013 |
第1問 |
同素体、結合に使われている電子の総数、周期表、濃度計算、1molに含まれる原子数など、酸化物の計算、身のまわりの化学 |
6 |
7 |
25 |
第2問 |
熱化学、酸化剤の判別、実験器具の取扱い、中和熱の計算、鉛蓄電池の充電、電気分解 |
7 |
7 |
25 |
第3問 |
無機物質全般 |
7 |
9 |
25 |
第4問 |
有機化学全般 |
7 |
10 |
25 |
2012 |
第1問 |
物質の構造、同位体、物質の量的関係、イオン全般、身のまわりの化学 |
6 |
7 |
25 |
第2問 |
熱化学、酸と塩基、中和滴定、酸化還元反応、電池・電気分解 |
6 |
7 |
25 |
第3問 |
無機物質全般 |
7 |
7 |
25 |
第4問 |
有機化学全般 |
7 |
7 |
25 |
2011 |
第1問 |
物質の構造、周期表、物質の量的関係、身のまわりの化学 |
6 |
7 |
25 |
第2問 |
熱化学、酸化還元、中和滴定、電池・電気分解 |
6 |
7 |
25 |
第3問 |
無機物質全般 |
7 |
7 |
25 |
第4問 |
有機化学全般 |
6 |
7 |
25 |
過去の平均点の推移
2013 |
2012 |
2011 |
2010 |
2009 |
63.67点 |
65.13点 |
56.57点 |
53.79点 |
69.54点 |
【第1問】一定質量中の分子数、陽子の数と中性子の数の比、化合物の化学式、イオン、濃度計算(モル濃度)、混合気体を完全燃焼させる際の計算、身のまわりの化学
問1は過去5年間続いている小問集合a・bスタイル。aは1gに含まれる分子数。1gの物質量が最も大きい物質、つまり、分子量が最も小さい物質を選べばよい。bは質量数14の炭素原子中の陽子数と中性子数の比を求める問題である。炭素の同位体はどれも陽子数が等しいことをおさえていれば答えられる。放射性同位体という表記に戸惑ってしまった人がいたのではないか。2009年問2の類題である。問2は化合物の化学式に関する出題である。元素を周期表から決定する点が難易度をあげている。原子番号20までの元素の周期と族を把握できていた受験者は解答し易かったと思われる。問3はイオンに関して、誤りを含むものを選択させる問題であり、2012年問5および2009年問3の類題である。塩化ナトリウムは、固体では電気を通さないことを把握していれば、すぐに解答できる。問4はモル濃度を求める問題である。計算量を少なくするための出題の工夫がみられる。希塩酸の体積が500mLであることに注意する必要がある。2013年問3及び2009年問5の類題である。問5は水素とメタンの混合気体を完全燃焼させるために必要な空気の体積を求める難しい計算である。完全燃焼の反応式を書ききることや物質量比が体積比に等しいことに気づけるかがポイントになる。混合気体ということで戸惑った人が多かったと思われる。問6は身のまわりの化学に関する問題。2008年問5や2012年問6の類題であり答えやすいものであった。
【第2問】熱化学、中和滴定、酸化還元、電気分解、ダニエル電池
問1は反応熱を求める問題。出題頻度が高い「生成熱を利用する」パターンでなく、「燃焼熱を利用する」パターンであった(ただし、2013年には「燃焼熱を利用する」パターンが出題されている)。また、数値ではなく、文字式を求める出題であった。問2は混合気体の燃焼熱から、混合気体の物質量比を求める計算である。2012年の問2の類題である。問3はa・bの設問を持つスタイルの中和滴定に関する出題で、aはグラフから酸と塩基の組合せを選ぶ2009年問3および2012年問4の類題である。グラフの形は2009年問3と全く同じである。bは指示薬についてであるが、選択肢中に解答がある比較的簡単なものである。問4は還元されている原子を選ぶものである。化学反応式中のある原子を特定してそれについて考えるスタイルは、2011年問4、2012年問5、2013年問3と全く同様である。過去問では酸化剤、還元剤という表現で出題されているが、今年は還元されているというダイレクトな表現であるため易しかったと思われる。問5は解答を2つ選ぶ第2問では新しいスタイルのものである。電気分解で流れた電子の物質量と発生した気体の物質量から、溶質を求めるものである。各選択肢を溶質とした水溶液を電気分解した際に、両極でどのような反応が生じているかを把握していないと解答できず、かなり難しいものであった。中学生時代に学習した水の電気分解を思い出せると解答できる。問6はダニエル電池での電極の質量変化を求めさせる計算問題である。ダニエル電池の原理を把握していれば対応出来る。
【第3問】無機物質全般
問1は身のまわりの金属に関する出題で、電気伝導性が最も高い金属単体は銀である。銅は電線や調理用具に利用されているため、誤りを見つけ出すのに苦労したと思われる。実は、2010年第3問の問3に「銀は、銅よりも高い電気伝導性をもつ。」という選択肢があり、過去問を丁寧に解いていれば解答できる。問2は過マンガン酸カリウムと過酸化水素の酸化還元反応についての出題である。例年ならば第2問に出題されるものである。2010年の問3で、この反応が出題されている。過酸化水素の酸素の酸化数が−1であることさえ知っていれば解答できる。問3は窒素に関する出題で、芳香族アゾ化合物の構造を含んでいる点が目新しいものである。アンモニアの実験室での製法を把握していればすぐに対応できる。問4は亜鉛及びアルミニウムに関する出題である。どちらか一方のみという点が難易度を上げているが、選択肢が4つであることで救われた。また、沈殿の知識が正確についていれば対応できる。問5は濃硫酸の作用に関する出題である。「不揮発性」に迷った生徒がいたと考えられる。選択肢を見ながら、消去法で対応できるかがポイントになる。
問6は硫酸銅(II)の結晶水を求める計算問題。硫酸バリウムの物質量から硫酸銅(II)の物質量を求めることができれば対応出来る。問7は金属イオンの分離に関する出題で、操作I〜IIIとも、比較的ポピュラーなものである。問題文中に金属イオンが与えられておらず、選択肢を見ながら決める点が新しい。
【第4問】有機化学全般
問1は2013年と同様、結合や官能基の名称を答える問題。aは環状構造の化合物であり、戸惑った人もいると考えられる。問2はジクロロメタンが正四面体形であることを知っているかがポイントになる。2007年にほぼ同じ内容の出題がある。問3aは炭酸水素ナトリウムを加えると二酸化炭素が発生したという記述で、選択肢を2つに絞り込める。過去のセンター試験ではほとんど見ない出題内容であり、とまどった人もいたと考えられる。問3bはシクロヘキセンの構造式を覚えているかがポイントになる。うっかりシクロヘキサンを選んでしまった人もいたと思われる。問4はフェノールを出発物質としてサリチル酸メチルの合成経路。出題パターンとしては、過去によく出題されているパターンの問題(2011年など)。問5aはエチレンの合成実験に関する問題。温度計の球部の位置であわてた人がいたかもしれない。ベンゼンはアセチレンの3分子重合により合成できることを正確に覚えていれば解答できる。問5bは130〜140℃でジエチルエーテルが得られることや縮合という化学用語をおさえているかがポイントになる。問6はアセチル化に関する計算問題。分子量を求めるまでに時間がかかるので、時間ギリギリで解く場合はミスがでやすい。