化学
大問数は5題、マーク数は29。第5、6問のうち、いずれか1問を選択させる形式。高分子化合物が選択問題であった。
大問数は5題であり、第5、6問のうち、いずれか1問を選択させる形式であった。選択問題では、教科書の後半で取り扱う高分子化合物が出題されていた。学習進度に応じて選択できるため、選択した問題による難易度の差はそれほど大きくなかったと思われる。なお、出題形式などは前教育課程を踏襲している。また、過去のセンター試験問題と似通った出題が複数問あり、過去問学習を行うことの重要性を再認識する問題であった。
なお、第1問問5や第2問問3など、素早い計算が必要な問題があった。合計でマーク数が29であり、時間内に全てを解き切るには相応のスピードが求められる内容で、全体としてやや難しかった。
年度 |
大問 |
出題分野 |
設問数 |
マーク数 |
配点 |
2015
|
第1問 |
物質の状態 |
6 |
6 |
23 |
第2問 |
物質の変化と平衡 |
5 |
6 |
23 |
第3問 |
無機物質 |
6 |
7 |
23 |
第4問 |
有機化合物 |
6 |
7 |
22 |
第5問 |
選択 |
合成高分子化合物 |
3 |
3 |
9 |
第6問 |
天然高分子化合物 |
3 |
3 |
9 |
合計 |
26 |
29 |
100 |
【第1問】物質の構造
問1 原子の構造に関する正誤問題。基本的な問題である。
問2 質量%濃度からモル濃度を表す式を求める問題。最近では、2009年度、2013年度に計算問題として出題されている。
問3 面心立方格子の単位格子中の原子の数を求める問題。結晶構造に関する出題は2004年度以来であるが、基本的な問題である。
問4 コロイドに関する出題。問3同様、新課程になり出題されたものだが、解答しやすい問題だった。答えであるゾル・ゲルについては1993年度の選択肢に使われている。新課程対策として過去問対策をしていた受験生は有利だったのではないか。
問5 気体に関する計算問題。気体の計算も新課程だが、1999年度の類題でボイルの法則で解けるものである。
問6 水素化合物の沸点に関する問題。水の分子間に作用する水素結合を考えればすぐに対応出来る問題である。また、最後の選択肢がヒントにもなっている。
【第2問】物質の変化と平衡
問1 結合エネルギーの計算である。生成熱がその成分元素の単体からなる際のエネルギーであることに着目して、正しい熱化学方程式を作ることができるかがポイント。
問2 平衡移動に関する問題。ルシャトリエの原理について平衡移動の方向を判定する練習をしていれば対応出来る。平衡移動に関しては1996年度、1994年度に出題されている。
問3 難溶塩である塩化銀(I)に関する問題。溶解度積が出題されたのは目新しい。
問4 電気分解に関する問題。銅の析出量から流れた電気量を求め、ファラデーの法則にあてはめれば対応出来る。電解槽Iは2009年に、電解槽IIは1997年度に類題が出題されている。銅電極を用いた場合と白金電極を用いた場合の両極での酸化還元反応をしっかり押さえているかがポイントであった。
問5 過去のセンター試験で頻出の過マンガン酸カリウムと過酸化水素の酸化還元反応である。e-を含むイオン反応式も示されていたので対応しやすかったと思われる。
【第3問】無機物質
問1 身のまわりの物質に関する正誤問題。黒鉛がアルミニウムの精錬の際の電極に用いられること(黒鉛というと鉄の精錬と考えてしまう)と水に溶けるのは二酸化窒素であることを混同した受験者もいたのではないか。
問2 硫黄の化合物に関する問題。二酸化硫黄は通常還元剤として作用するが、硫化水素のような強い還元剤と反応する場合は酸化剤として働くということがポイントであった。
問3 銅に関する問題。銅の合金について正しく覚えていたかがポイントとなる問題であった。
問4 元素の性質に関する問題。アルカリ金属とアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶性の違いを確認するものであった。選択肢の化合物の色について迷った受験生がいたと思われる。
問5 発生した気体の体積から銅とアルミニウムの混合比を求める問題。それぞれの存在量をxモル、yモルとして読み取り易いグラフの質量2ヵ所選択し、連立方程式で解けば対応出来るものである。化学反応式は与えられているが、グラフの読み取りも重なり解きにくい問題であったと思われる。
問6 電池、イオン化傾向、酸化還元反応に関する応用問題。1994年に類題が出題されており、このときは正答率が低かった。今回は過去問よりも難易度が高い。
【第4問】有機化合物
問1 異性体に関する正誤問題。難しい内容を含む選択肢もあるが、構造式さえわかれば正しい選択肢が比較的見つけやすい。
問2 条件にあう化合物を選ぶ問題。塩化鉄(III)による呈色反応を知っている受験生は多いが、バイルシュタイン試験を知っている受験生は少ないのでないか。選択肢を見ながら、消去法で解くことができれば解答できる。
問3 アルデヒドに関する正誤問題。メタノールとアセトアルデヒドの構造式を覚えていれば、炭素数が異なるために誤りであると気づく。
問4 アセトンの合成実験を選ぶ問題。それほどは有名な実験ではないため、迷った受験生が比較的多かったと思われる。アセトンが水に溶けることさえ知っていれば、なんとか解答にたどりつける。
問5 芳香族化合物の分離に関する問題。今までのセンターにはない問い方であった。フェノールと安息香酸が、NaOH水溶液で中和されることに気づくことができれば解答できる。
問6 エステルの加水分解を利用した計算問題。与えられた示性式を読み飛ばし、ケアレスミスをした人がいると思われる。
【第5問】合成高分子化合物(選択問題)
問1 合成高分子に関する正誤問題。フェノール樹脂が熱硬化性樹脂であることを知っている受験生は比較的多く、解きやすかったと思われる。
問2 ナイロン66の構造式を選択する問題。2009年にポリエチレンテレフタラートの構造式を選択させる問題が出題されており、この問題を参考に作られたと思われる。
問3 ビニロンに関する計算問題。この問題を難しく感じ、第6問を選択した受験生がかなりいたのではないかと思われる。
【第6問】天然高分子化合物(選択問題)
問1 天然有機化合物に関する正誤問題。アミロース、アミロペクチンのおおよその構造を把握していないと判定できない。グリコーゲンの構造を知っている受験生は、多くないと思われる。
問2 不斉炭素原子を持つ中性アミノ酸を答える問題。比較的解きやすい問題である。
問3 シクロデキストリンに関する計算問題。第5問のビニロンに関する計算よりは易しく感じた受験生が多かったと思われる。第6問の問1の正誤判定さえできれば、第6問を解答した方がやや解きやすかった。