センター試験地理Aでは、教科書や学習指導要領の内容に沿って、生活・文化や地球的課題などの重要事項や、地理的な技能(地図や写真、統計の読み取りなど)の習熟度を、多角的に幅広く問う出題がなされています。地理Bの出題と内容面で比較した場合、地理Aでは「地理的技能と調査」「世界の生活文化と環境」「近隣諸国の生活と文化」「地球的課題と国際協力」といった単元が重視されていることに注意しましょう。地域としては、地理Bと同様に身近な地域を含みつつ、日本の諸都市をはじめとして世界各地の問題がバランス良く配置されています。また、細かい知識を問うような設問よりも、地図や写真、統計など各種資料の読み取りと関連づけた出題が多くなっています。つまり、基礎的な知識をベースとした情報処理、思考、判断の能力を試す出題が中心となっているといえます。
◆日ごろから世界の動きに関心をもつこと
このような出題傾向に対し、断片的な知識の丸暗記では対応できません。知識と知識のつながりを意識した学習の積み重ねが必要です。特に、貿易や人的交流などの国家間の結合に関する「統計」の理解は重要です。数値を覚えるのではなく、統計の背後にある意味を考える習慣を身につけましょう。また、衣食住など世界各地の民族や文化に関する広い素養をつくっていきましょう。そのためには、テレビのクイズ番組やニュース、新聞記事などへの日ごろからの関心も求められます。
◆写真・地図資料にも注意しよう
地図や図表などの資料、特に写真を使った出題の割合が高いのはセンター地理Aの典型的な特徴です。毎年、図、写真、表をあわせて30点近くが用いられています。写真利用問題については、資料集に掲載されている世界各地の景観、民族衣装、家屋などの写真を普段から意識して見るようにすることが有効です。自分が知らない地名が出てきた際には、必ず地図帳を開き、その位置を確認する学習を徹底するようにしましょう。
◆独特な出題形式に慣れることが大事
統計問題・地形図の読図問題や組合せ式の6択問題など、独特な出題形式への慣れも欠かせません。問題の質や量と試験時間を見比べると、本番ではけっして時間的なゆとりはありません。10年分程度の過去問演習はもちろんですが、東進のセンター試験本番レベル模試(地理Bの受験によって十分に地理Aの対策になる)を定期的に受験して、(1)頻出項目のマスターと最新傾向の把握、(2)出題形式への順応、(3)時間配分のトレーニング、といった点を強化することをおすすめします。
新課程に対応した大問構成の変化がみられたが、問題のレベルは同程度であった。
大問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
設問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
マーク数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
難易度 | 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 |
分量については、大問数は例年通り5題である。設問数とマーク数はいずれも34である。設問数は増加(+1)であるが、1つの設問で複数マークする形式の問題がなくなったため、マーク数は前年と同じであった。
形式については、組合せ式の設問は前年(8問)から大きく増加して15問であった。また、5個以上の選択肢から2つを選ぶ正誤判定問題が姿を消した。図表・写真は前年(29点)とほぼ同じ28点、そのうち写真を利用した問題は前年と同じ4問であった。
内容については、新課程を反映して大問構成に大きな変化があった。
(1)例年「国境を越えた様々な結びつき」と題された第2問は「日本の自然環境と防災」に変更され、身近な生活圏におけるテーマの下で、さまざまな地図を活用した地理的技能の習得をねらった新課程に対応した出題となった。
(2)世界地誌からの出題が姿を消し、代わって第3問には「世界の生活・文化」がおかれた。地誌を重視する地理Bとの違いを明確化した新課程に対応した変更と思われる。なお、例年通り第5問の地域調査に関する問題は、地理B(第6問)との共通問題であった。
いずれも高校地理に関する標準的な知識や図表を読み取る力を要求する問題であり、総合的な学力が求められる。一部には難問もみられるが、全体的には標準レベルの設問が多く、難易度としては昨年並みと思われる。
年度 |
大問 |
出題分野 |
設問数 |
マーク数 |
配点 |
2016
|
第1問 |
地理の基礎的事項 |
8 |
8 |
22 |
第2問 |
日本の自然環境と防災 |
5 |
5 |
15 |
|
第3問 |
世界の生活・文化 |
7 |
7 |
21 |
|
第4問 |
地球的課題と世界の結びつき |
8 |
8 |
24 |
|
第5問 |
地域調査(岩手県北上市) |
6 |
6 |
18 |
|
2015
|
第1問 |
地理の基礎的事項 |
8 |
8 |
24 |
第2問 |
国境を越えた様々な結びつき |
7 |
7 |
21 |
|
第3問 |
東アジア地誌 |
7 |
7 |
21 |
|
第4問 |
地球的課題と国際協力 |
5 |
6 |
16 |
|
第5問 |
地域調査(北海道富良野市) |
6 |
6 |
18 |
|
2014
|
第1問 |
地理の基礎的事項 |
8 |
8 |
23 |
第2問 |
国境を越えた様々な結びつき |
7 |
8 |
22 |
|
第3問 |
アフリカ地誌 |
7 |
8 |
22 |
|
第4問 |
地球環境問題と国際協力 |
5 |
6 |
16 |
|
第5問 |
地域調査(愛知県知多半島) |
6 |
6 |
17 |
|
2013
|
第1問 |
地理の基礎的事項 |
8 |
8 |
24 |
第2問 |
国境を越えた様々な結びつき |
7 |
7 |
21 |
|
第3問 |
南アジアにおける自然環境と人々の生活 |
7 |
7 |
22 |
|
第4問 |
地球的課題と国際協力 |
5 |
5 |
15 |
|
第5問 |
地域調査(徳島県鳴門市) |
6 |
6 |
18 |
過去の平均点の推移
2015 | 2014 | 2013 | 2012 | 2011 |
---|---|---|---|---|
51.40点 | 51.76点 | 50.09点 | 47.42点 | 52.58点 |