住宅メーカー 編

 「建築の工業化」を企業理念とする大和ハウス工業は、1955年(昭和30年)創業の住宅総合メーカーだ。私たちもよく知る「プレハブ住宅」は、実は同社が開発した「ミゼットハウス」が原点。「住宅」といえば「請負」が一般的だが、「ミゼットハウス」はなんとデパートで展示販売されたという。同社は「住宅」を「商品」へと変貌させた工業化住宅のパイオニアなのだ。以来、住宅・分譲マンション・商業施設等の建設を多数手掛け、近年では海外の工業団地開発にも参画している。そこで今回は、同社建築事業部第六営業部の本濱遥氏と後藤嘉明氏の両名にご登場頂き、建設業界で働く醍醐味ととともに「受験に役立つ力」についてもお伺いした。

「住まい」の建築を通じてより良い「地域」づくりと「国際社会」の創成に貢献する

大和ハウス工業株式会社 東京本店 建築事業部
第六営業部 営業第一課

本濱 遥 (もとはま はるか)

1988年 沖縄県生まれ
2006年 沖縄県立那覇国際高校 卒業
2010年 早稲田大学 スポーツ科学部卒業
同年 大和ハウス工業株式会社 入社 東京本店 建築事業部 配属
現在に至る

「住まい」を中心に「街」へ「暮らし」へ 総合住宅メーカー「大和ハウス工業」の仕事とは?

 大和ハウス工業は、1955年(昭和30年)創業の住宅総合メーカーである。住宅メーカーと聞くと、馴染み深いところではマンションや戸建て住宅の建設を思い浮かべる人も多いと思うが、手掛ける事業は多岐に渡る。配送センターといった物流施設を始め、会社事務所などの法人施設、あるいは、ショッピングセンターなどの商業施設、都市開発事業や農業事業など、そのフィールドは実に幅広い。当然のことながら、商談の相手もさまざまだ。

 「当社の建築事業部は、法人向けの工場や倉庫などの建設を請け負う部署です。その中で、特に介護施設や老人ホーム、病院などの建設を請け負うのが、私の所属する第六営業部となります」そう語るのは、今年で入社5年目となる第六営業部営業第一課の本濱遥だ。

 大和ハウス工業では「超高齢社会」に向けての準備を、早い段階で進めてきた。同社のシンクタンク「シルバーエイジ研究所」が設立されたのは1989年(平成元年)。そこで蓄積されたノウハウは、数多くの医療介護施設の建設に生かされてきた。それらの実績に基づき、「超高齢社会」が現実味を帯びてきた近年では、医療介護施設の建設を“地域社会に「貢献」できる土地活用”と位置づけている。長期的な安定と社会的貢献度の高い事業プランとして、企業(あるいは土地のオーナー)に医療介護施設の建設を提案するのが本濱の仕事だ。

 「建築事業部が担当する物件の場合、ひとつの建築物が完成するまでに相当の時間がかかります。大きな施設ですと、受注をいただくまで2年。そこから完成までさらに1年ぐらいかかることもあります。関わるスタッフの数も膨大ですから、それをうまくまとめることも営業の手腕にかかっています。プレッシャーも大きいですが、それ以上に、やりがいが大きいですね」

自由な社風だからこそ責任も重い 入社2年目に体験した手痛い失敗

 若手社員にもどんどん仕事を任せる――これは大和ハウス工業の昔ながらの社風だ。本濱が入社を決めた理由も、風通しの良さを感じたから。

 「私はスポーツ科学部出身ということもあって、就活時もスポーツに関わる仕事をしたいと考えていました。とはいえ、面接を受けたのは商社や新聞社などで、スポーツに深く関わる部署もあれば、そうでない部署もある。関連のない部署に配属されても仕事ができますか、と問われると答えに窮してしまったんです」

 そんな中、大和ハウス工業の面接官だけが「自分がやろうと思えば、できないことはないよ」と言ってくれた。それが大きな励みになった。

 「入社してみると、社員がものすごく前向きでノリがいい。今はまだ会社としての実績はありませんが、スタジアムの建設もいつかはできるかもしれない。そんなふうに思わせてくれる雰囲気がありますね」

 それは逆にいえば、若手でも大きな責任を負うということだ。新人時代の本濱も、責任の重さに耐えきれずに失敗したことがある。入社2年目の頃。事業部長から直々に仕事を任されたのはいいが、一人ですべて抱え込んでしまった。とはいえ、自分一人の力では顧客の要望に応えることができない。まさに追いつめられた状態だった。そんな様子に気づいた上司からの言葉が、本濱に自分の過ちを気づかせた。

 「まずは“チームを集めろ”と言われたんです。そうして“チーム全体で問題を共有しろ”とアドバイスをもらいました。そのときは自分一人でやらなければいけないという思い込みが強かったんです。けれども仕事というのは、周りの人にいかに動いてもらうかということも大事なんだと、このとき学びましたね」

 問題を共有してアドバイスをもらう、それは「受験にも必要な力」だと本濱は言う。

 「先生や友達などいろんな人の声を聞きながら、自分のやり方を決めていくというのは、とても大事なことではないでしょうか」

インドネシアの 工業団地開発プロジェクトに抜擢!得意の英語力を生かして事業の成功に邁進する

 そんな本濱は今、もう一つ大きな仕事を任されている。インドネシアでの海外工業団地開発プロジェクトのメンバーに抜擢されたのだ。きっかけとなったのは「英語力」。沖縄生まれの本濱は、幼いころから英語に慣れ親しんで育ったこともあり、英語学習にも積極的に取り組んできた。ただし「就活」のためというわけでもない。とにかく「英語が好き」だったのだ。

 その「好き」が仕事に結びつくようになったのが3年ほど前。本格的な海外進出を契機に、社員全員がTOEICを受験することとなったときのことだ。そこで本濱は高得点をたたき出す。

 「周りからはすごく驚かれました。なんで今まで言わなかったんだって(笑)」

 今では帰国子女の社員も多くなったが、当時は英語を話せる社員はほとんどいなかった。営業で培った本濱のコミュニケーション能力と英語力は、プロジェクトにとって貴重な財産だ。

 「現地での仕事は大きく二つあります。インドネシア進出を考えていらっしゃる邦人企業の案内役。そしてもう一つは現地のパートナー企業との打ち合わせです。前者は日本語、後者は英語でのやり取りになります。両者をうまくつなげて円滑に事業を進めていくことが、私の役割です」

 介護施設の営業と大規模工業団地の開発。ずいぶんと畑違いに思えるが、これもやる気のある人間にどんどん仕事を任せていくという、同社の社風があったからこそ。「まだ立ち上げたばかり」ということで試行錯誤も多い中、本濱は持ち前のバイタリティで、新たなプロジェクトに邁進している。

 「頑張ることができるチャンスって、人生にそんなにたくさんあるわけではありません。とりわけ大学受験は、自分がどれだけ頑張ったかが目に見えるいいチャンスなのではないでしょうか」東進OGでもある本濱は、最後にそうエールを送ってくれた。

一度決めたことは最後まで!やりきることが自信につながる!

大和ハウス工業株式会社 東京本店 建築事業部
第六営業部次長 営業第一課課長

後藤 嘉明 (ごとう よしあき)

1966年 岐阜県生まれ
1985年 岐阜県立関高校 卒業
1989年 大阪府立大学 総合科学部 卒業
同年 大和ハウス工業株式会社 入社
現在に至る

自分の価値観と信念を持て!

 建築事業部第六営業部次長として辣腕をふるう後藤嘉明が、常々部下に伝えていることがある。それは「自分の価値観や信念を必ず持って仕事をしてほしい」ということだ。「若いうちは、とかく指示待ちになりがちです。けれども仕事を進めるうえで、もし違和感を持ったときは、積極的に“違う”と言いなさいと指導しています。そうしたコミュニケーションを通じて、自分なりのモノの見方が育まれてくるのです」

 「自分の価値観を持つ」ことは重要だが、一朝一夕に身につくものではないように思える。ところがそんな疑問に対して後藤は「完成度の高い目線を要求しているわけではない」という。

 「新入社員に10年目の社員の仕事ができるかというと、それは無理。ですが1年目には1年生の目線、3年目には3年生の目線があります。例えば5年目の社員であれば、これまで以上にマーケットを意識して、自分が今やっている仕事から次の仕事へつなげるきっかけをどこからかつかんできてほしい。そこを見極められるような目を養ってほしい。つまり部下の目線がどこまで育まれているかというところを見る。それが私の責務ということになります」

 「事業を通じて人を育てる」ことは同社の理念であり、大きなやりがいでもある。「部下がレベルアップしていく姿を見るのは嬉しいものです」と、後藤は目を細める。

建築とは数十年後も残る仕事 だからこそ誇りが持てる

 大和ハウス工業の建築事業では、基本的に他社と競合する案件は手掛けない。建設業界では、一つの案件を受注する際に、競合他社とコンペで競う方式が取られることが多い。しかしそれでは「企画力」ではなく「価格」で勝敗が決してしまう場合がある。

 「それでは営業の力で建てたという実感を持てません。ひいては“目”も養うことができない。当社では自分で企画書を作るところから始まって、完成まで見届けます。完成した建物は数十年間残ります。だから、やりきったという実感が持てる。建築とは本来、そうした仕事なのです」

 ときには、新入社員時代に手掛けた建物と「再会」することもあるという。そのときの「感動」は、言葉では言い表せないほどだ。

 また、「やりきる」ことは仕事に限らず「受験勉強にとっても大切なこと」だと後藤は説く。「やりきったことというのは、結果は別としても、必ず自信につながります。社会人になると、自分の好きなことだけをできるわけではありません。嫌なことにも一緒に取り組みながら、最後までやり通していくのです。途中で投げ出してしまう癖がついてしまうと、10年、20年経ってもその癖が抜けません。一度決めたことは、結果が出るまでやり抜く。その力は、社会人になってからも必ず役に立つと思いますよ」

Q&A

仕事をするうえで手放せない「三種の神器」を教えてください。

「大和ハウスの手帳」「iPad」「パンフレット」です。当社の手帳の巻末には、建設業界特有の単位や税金に関わる用語・法律などの解説が記載されているんです。こうしたことは商談中にふっと聞かれることが多いので、すぐに答えられるように心掛けています。iPadは、写真などで視覚的に説明できるので重宝していますね。パンフレットも同様です。いつ質問があっても返答できるように常に持ち歩いています。

宅建の資格は必須でしょうか?

営業職においては必須です。弊社では宅建取得が課長昇進の必要条件になっています。但し、宅建を取ること自体が目的ではなく、宅建を使いより大きな仕事に携わるのが目的であり、宅建はその為の手段です。目的と手段を間違えないことを強く意識しています。

受験勉強のコツを教えてください。

やらなければならないことが10個あるとしたら、まずは1個だけでもやってみる。例えば英語が苦手ということであれば、とりあえず参考書を一冊買ってみるとか。私は数学が苦手だったのですが、それでも東進へ行って授業を受けてみるということをしていました。借りたDVDは返さないといけませんから、一度は再生してみるものです(注)。そうするといくぶんは気が楽になる。とりあえず、一歩を踏み出してみることが大切だと思います。 ※注 現在の東進の授業は全てオンライン化されています。それ以前はDVDの貸借がされていました。

やるべきことが多くて何から手をつけていいのかわかりません。

優先順位をつけるのは難しいですよね。私の場合は、自分で解決できそうにもないことから先に着手するようにしています。人に聞かないとわからないことから始める。とりあえず、周りの人に質問をする。自分で解決できる作業は、夜中でもできますから後回しにしても対処できます。仕事でも受験勉強でも、それは同じではないでしょうか。