クライアントと生活者との架け橋となって「広告」を通じてあらゆる課題解決に邁進する

株式会社電通は、その規模で世界第5位を誇る日本を代表する広告会社である。「Good Innovation.」を企業理念とする同社の事業は多岐にわたるが、それらの業務を円滑に進めるために企業(クライアント)の窓口となってビジネスの最前線に立つのが営業の仕事だ。そこで今回は、同社ビジネスプロデュース局の佐藤健一氏にご登場いただく。元東進生という佐藤氏は入社8年目。デジタルビジネス局を経て、現在は営業職として企業の課題解決のために奔走している。現在の仕事内容から、学生時代の留学先での経験、自らの提案でビジネスを成功に導いた事例などをお伺いした。

クライアントと生活者との架け橋となって「広告」を通じてあらゆる課題解決に邁進する

株式会社電通
第20ビジネスプロデュース局

佐藤 健一 (さとう けんいち)

1986年 神奈川県生まれ
2004年 神奈川県立相模原高校 卒業 2009年 慶應義塾大学 理工学部 機械工学科 卒業
2011年 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻 卒業
同年 (株)電通 入社 営業 配属
2014年 デジタルビジネス局 配属
2015年~再度 営業へ配属 現在へ至る

SNSの特性を見抜け!  デジタルと融合する「広告」の最前線とは?

株式会社電通は、国内広告市場シェアのおよそ 25 %を占める日本最大の広告会社だ。広告会社の仕事は、テレビCMやポスターなどの宣伝物を制作するだけではない。広告を軸として「企業の課題解決」のために貢献することが主な責務となる。企業(クライアント)の窓口となって入念なヒアリングを行い、プロジェクト全体を主導していくのが、広告会社の営業の仕事だ。

「具体的に言えば、クライアントの方々や社内のチームと一緒に、広告の制作や出稿するメディアのプランニングなど、広告を中心としたさまざまな業務全体の進行管理を行っています。そして、その成果がどうであったかの検証までを責任を持って行うのが私の仕事です」

そう語るのは、ビジネスプロデュース局で営業として活躍する佐藤健一だ。入社8年目となる佐藤は、慶應義塾大学大学院理工学研究科の出身。これまで営業のほかにも、ネット広告を扱うデジタルビジネス局にも所属してきた。テレビCMや印刷物などを主流としてきた広告の世界も、いまやデジタルとの融合が欠かせない。

「入社4年目に配属となったデジタルビジネス局では検索エンジンに掲載する広告の運用管理を任されていました。ネット広告の単価は毎分ごとに変わります。たくさんのクライアントからお預かりした広告費をいかに効率よくネット上で運用していくか。当時は日々考えていましたね」

ネット広告はクリック数や動画の再生回数など、数値として広告の効果を把握しやすいのが最大の特徴だ。しかしその一方で、ネットユーザーは移ろいやすく、その実態をつかみにくいという難しさもある。それぞれの特性を見抜き、いかに効果につなぐことができるかが腕の見せどころだ。

「例えば、高校生に身近なSNSを見ても、TwitterやFacebook、Instagramなどでそれぞれ違います。おもしろい!楽しい!といった一瞬の感情を表現するのは、Twitterのほうが向いています。サッカーの試合などで広告を打つときは、Twitterのほうが反応が良いんです」

実際に佐藤は、従来のテレビ広告とSNSでの広告とを同じタイミングで流し、両者を掛け合わせることで10倍以上の効果を上げたことがある。「お客さまから求められたもの以上のことを自ら考えて提案する」――それが佐藤の信条だ。

デジタルと融合する「広告」の最前線とは? 置かれた環境を楽しめ! 自主提案でイベントを成功に導く 留学で得たビジネス体験 W杯の熱狂から電通へ!

理系出身の佐藤だが、 ビジネスの基礎は学生時 代に学ぶ機会があった。「CVS」という北米留学プログラムでの経験がそれだ。CVSとは、「国際的なリー ダーを育成する」というミッションのもと、2004年に創立されたNPO法人だ。優れたリーダーには「C(キャラクター)」「V (ヴィジョン)」「S(スキル)」の3つが必要だという理念の元、日本全国から24名の学生を集めてロサンゼルスへ留学させるというもの。4人1チームで現地のさまざまな課題に対して企画を練り、解決のための施策を実施する。

「例えば、資金難の教会があったとします。そこにどうやって集客を行い、寄付を募るのか。どう楽しんでもらうかといったことを具体的に考えていくのです。住民にも参加してもらうわけですから、けっこう大がかりなイベントになります。それを自分たちで作り上げるわけです」

そのとき佐藤が取り組んだのは、テレビ番組『料理の鉄人』にヒントを得たイベントの企画だった。食材などはもちろん現地調達。2カ月の留学期間中、毎週イベントを行い、多くの集客を得た。

「自分たちで作ったコンテンツが、たくさんの人を巻き込んでどんどん大きくなっていく。その過程がとても楽しかった」と、佐藤は振り返る。

そんな佐藤が電通に興味を持ったのは大学院生のときだった。サッカーワールドカップ南アフリカ大 会に沸いた年。とりわけ日本中を熱狂させたのが、デンマーク戦での本田圭佑選手の伝説のフリーキックだ。小学生のころからサッカー少年だった佐藤はこの日、渋谷のパブリックビューイングで試合を観戦していた。

「本田選手がゴールを決めた瞬間、それまで見ず知らずの人たちが一緒になって盛り上がって、お互い言葉を掛け合ったりしていました。その雰囲気がすごく印象的で良かった。こんな人と人とのつながりが気軽に生まれるようになれば、もっと楽しい世の中になるのではないかと思えたのです」

ワールドカップのような大きなイベントを作ることのできる場所はどこだろうか。そんな思いで辿りついたのが電通だった。こうして佐藤は電通の門を叩く。入社してすぐの配属先は、さまざまな広告を企画提案する営業。そこでおもちゃメーカーを担当し、大ヒットアニメの立ち上げに携わった。

置かれた環境を楽しめ!自主提案でイベントを成功に導く

入社して4年後、佐藤はネット広告を扱うデジタルビジネス局へと異動 する。しかし、デジタル分野はまったくの未経験。しかも一年間という期限付きの異動であったため、佐藤の頭の中には「大きな仕事を与えられないのではないか?」という不安がよぎった。

「そこで心がけたのは、2つのことです。1つはデジタルの知識をしっかりと身につけること。2つ目はクライアントに対して自分から積極的にアプローチしていこうということです」

営業をしていた頃は、自身が担当している会社との接点しか生まれなかった。しかしデジタルビジネス局では営業担当者に声をかければ、自分も営業チームに混ぜてもらえる。佐藤はそう考えたのだ。しかも自分の好きな分野の会社にアタックすることが可能だ。

「ですからこの機会を生かして、自分の大好きなゲーム会社へ新規営業をかけてみることにしたのです。調べてみたら電通とのお取引もありません。そこでさっそく同期の社員を誘って、営業に向かいました。ところがまったくの門前払い。その日は2人でとぼとぼと帰って来ざるをえませんでした」

しかしその1週間後、事態が一変する。ゲーム会社から連絡が入り、「3カ月後に発売するゲームの販売戦略を考えてほしい」という依頼が来たのだ。しかし広告を出すほどの予算はないという。そのうえで佐藤に課せられたのは「ネット上でバズを起こす」という、極めて難しいミッションだった。「どうやったらこのゲームが話題になって、より売上につながるのか」佐藤は必死に考えた。そうして提案したのが、ゲームの世界観を体験できるイベントの開催だ。スマートフォンとGPSを活用し、敵の手を逃れながら隠された宝をゲットするというこのイベントは、多くのメディアに取り上げられ、ネット上でも話題となった。「結果的にこのイベントは、著名な広告賞を受賞することもできました。異動の不安をうまく切り替えて、仲間たちと一緒に取り組んだおかげだと思います。置かれた環境に不平不満を言うのではなく、どう楽しむかということを学んだ出来事でした」

営業の鍵は人を巻き込みハートに訴えること

デジタルビジネス局を経て、再び営業へと戻ってきた佐藤。これまでの経験を振り返りながら、この仕事に求められるのは「人を巻き込む力」だと強調する。先のゲーム会社のPRも、実は同期を含めて7名を巻き込んで実現したものだ。もちろん単に声をかけるだけでは欲しい人材は集まらない。

「この仕事がいかにおもしろいかをプレゼンして説得するんです。上司や先輩からは厳しい意見をもらうときもあります。そこをどうやって納得してもらい、気持ちよく仕事をしてもらえるか。その点は常日頃から考えています」

では具体的にどうやって人を説得していくのか。それは「とにかくハートに訴えること」だと佐藤は笑う。

「新人の頃は、具体的な数字を提示することだと思っていました。けれども今振り返ってみると、先輩たちが手を貸してくれたのは、私のがむしゃらな姿を見てくれていたからなのだと思います。一生懸命にやっていると、つい面倒を見たくなりますよね」

入社8年目を迎えた佐藤も、現在は後輩を指導する立場にある。それだけに、当時の上司や先輩たちのありがたさがなおさらわかるようになってきた。

「たくさんの人を巻き込むサッカーワールドカップのような大きな大会に関わりたい」――初心の夢を持ち続けながらも、佐藤は今、中堅社員として広告業界全体の未来を見据えている。

「例えばテレビCMや車内広告などは、昔は広告効果が測定しにくいとされていました。しかし今はデジタル社会の到来に伴って、YouTubeやネットのバナー広告のように数字で正確に測れるようになってきています。そうなると、一つのサービスに対してユーザーがどれぐらいのお金をかけたかといった細かい分析も可能です。デジタルの特性を生かしつつ、より効率的にユーザーにアプローチできる方策を模索していきたいですね」

最後に、高校生へのメッセージを問うと「好きなこと、興味を持ったことを深堀りしてみること」という答えが返ってきた。

「興味を持ったことに対して、それがどうやって成り立っているのか。あるいは、自分だったらどうやってもっとおもしろくできるのか。そんなことを考えながら学生生活を過ごしていくと、やがて自分の 行くべき未来が見えてくると思います」人を巻き込み、置かれた環境を楽しむことで自らの仕事の幅を広げてきた佐藤の言葉は、説得力を持って響いた。

(文中敬称略)

上司の方に伺いました! 佐藤氏の仕事ぶりは?

とても積極的で、私たちが何も言わなくても自発的に動いてくれますね。広告会社の使命は、お客さまのさまざまな課題を解決することです。そのためにはどんな方法を使って、どんな媒体を使うといいのか。あらゆる手段を駆使して目標を達成しなければいけません。そうした課題に対して、佐藤は自分の頭で考えて提案ができていると思います。年長の経営者に対してもけっして物怖じしない。若いですからまだまだ至らない部分はあります。お客さまに温かい目で見てもらいながら、育てていただいているというところです。

東進出身で大学生のときは担任助手を経験したと言いますから、持ち味の積極性は、そのころから培われたものなのでしょう。まさに「独立自尊の社会・世界に貢献する人財を育成する」という東進の教育目標を体現しているのではないでしょうか。彼は東進時代の経験から、東進が伸びていくことが世の中にとっていいことである、という信念を持っています。そんなご縁もあって、現在、東進の仕事を任せています。

今後期待する点としては、デジタルビジネス局で得た経験をもっと生かしてほしいですね。今は高校生に限らず誰もがSNSなどを使いこなして、自分でどんどん発信する時代です。そうした時代に合った提案をぜひ考えてほしいと思います。

Q&A

仕事をするうえで手放せない「三種の神器」を教えてください。

「ノートパソコン」「ス マホ」「時計」です。クライアントや社内スタッフと出来るだけタイムリーにやりとりをするために、メールなどでの連絡やスケジュール管理ができるツールは常に持ち歩くようにしています。スケジュールはスマホとノートPCに全部入れてあり、15分前に通知が来るようになっています。時計も実は「スマートウォッチ」です。こちらもスマホと連動させています。通知が来ると腕が震えるので、見逃すことがありません。

大学ではどんな研究をしていたのでしょうか?

機械工学科から大学院へ進学したわけですが、マイクロマシンというナノメートルサイズの小さな機械の研究をやっていました。スマホやゲーム機などにすでに使われている技術ですが、この設計に関わるシミュレーターの開発に携わっていました。研究はトライ&エラーの連続ですから、当時の研究は実社会でも役立っていますね。

印象に残っている東進のCMは?

「伸びない人は、いない。」というキャッチコピーのCMです。僕自身、高校生のときは偏差値が低く、東進に入ってから成績が伸びたのですごく共感できました。もう一つはサカナクションの音楽を使った「全国統一高校生テスト」のCM。全国の高校生が学年に関係なく同じ問題を解く。体育館での高校生たちの姿がとても印象に残っています。

リフレッシュ方法は?

映画鑑賞でしょうか。 一週間に一回は必ず観ていますね。最近だと『グレイテスト・ショーマン』という作品にとても感動しました。監督はもともと広告業界のクリエイターだった人で、自分も興味を持ってものごとに没頭すれば、このような素晴らしい仕事ができるかもしれないと思いました。とても大きな刺激を受けましたね。