TEL

0120-104-219

受付時間 10:00-18:00 (日・祝除く)

噂、日本にも届く

1970年代はまだインターネットもなく、アメリカのテレビ事情がすぐに日本に入ってくるわけではありませんでした。にも関わらず、「セサミストリート」という一風変わった名前の子ども番組が人気を博していることは、じわじわとテレビ関係者の間に広まってきました。そしてその斬新な構成に衝撃を受けた人々によって、日本での放送が検討され始めました。

英語、それとも日本語?

日本でセサミストリートを放送するにあたって、何語で放送するのかが問題でした。日本の子どもたちに理解してもらう、という点では吹き替えがいいのですが、アドリブ中心の放送を翻訳するのは難しかったのです。また、「子どもたちの教育」を重視するCTW(現:セサミワークショップ)は当時、字幕スーパーでの放送を許可しませんでした。そこをNHKが交渉して、最低限のナレーションや字幕スーパーを入れて放送するということになったのです。

わずか1年8カ月後にテスト放送が始まる

そして日本のNHK教育テレビでのテスト放送が始まったのは、アメリカの放送開始から1年8カ月後の1971年7月21日のことです。これはカナダやドイツに並ぶ早さです。放送時間も、アメリカと同じ月曜日から金曜日、1日2回(朝9時と午後1時)という贅沢なものでした。事前にアメリカでの盛況や教育効果を伝える新聞報道などがあり、前評判も上々。実際に放送が始まると視聴者からはたくさんの手紙や電話があり、番組が成功を収めたことは言うまでもありません。

いよいよ本放送開始!

テスト放送が好評のうちに終了し、翌年1972年4月9日の日曜日、夜7時から定時放送が開始しました。裏番組には「ミラーマン」や「シルバー仮面」といった、子ども向け番組にとっては強力なライバルがいました。 別日・時間では「帰ってきたウルトラマン」「仮面ライダー(初代)」が放送中。ヒーローブームのさなかでの登場でした。ちなみに「笑点」や「サザエさん」もすでに日曜夜に放送を開始していました。

ライバルはヒーロー?それとも…。

こうして日曜夜というゴールデンタイムに始まった放送ですが、視聴率は実験放送時と比べて当初、伸び悩んだそうです。ライバルは前述の子ども向けヒーローだけではありませんでした。夜の7時と言えばニュース番組が当時の定番。まだテレビは1家に1台が主流。セサミストリートを観たくても観られない子どもたちもいたことでしょう。また、英語でそのまま放送したため、「子どもが理解できない」「子どもに内容を聞かれても、分からないから困ってしまう」という声もありました。

そんなこともあって、放送開始から半年後の1972年10月から、週2回(土曜午後4時と日曜夜7時)の放送になりました。これは夜7時のニュース番組と競合しない時間での放送を求める要望に応えてのものでした。まだビデオテープも普及していない時代。どんな番組もリアルタイムで観るほかなかったのですから、放送時間は非常に重要だったわけです。

生の英語学習教材として

しかし、セサミストリートは着実に日本でも人気を根強いものにしていました。放送開始から6年後の1978年にNHKがとったアンケートによると、とりわけ女子中高生の視聴者が多いことがわかりました。日本でのセサミストリートは、語学教育番組として受け入れられたのです。当時は、特に生の英語を聞く機会が少なかったため、ヒアリング教材として貴重な存在だったようです。

6年間の休止期間

1982年4月4日、日曜日の放送をもってセサミストリートは打ち切りとなります。理由は、「10年前の放送開始当時とは環境が変わり、衛星中継などで生の英語が茶の間に飛びこんでくるから」だとか。たしかに衛星方法以外でもテレビでの二か国語放送は普及し、洋画や学習教材をビデオテープで観ることも可能になっていました。またセサミストリートに影響を受けて、日本でも幼児向け知育番組が増えてきていました。「子どもの教育」「英語学習」という意味では、セサミストリート以外でも学べる選択肢が増えていたのです。

放送再開を願う国民の声

しかし、そんなこんなで最終回を迎えたセサミストリートには、「どうして終わってしまうのか?」と番組終了を惜しむ問い合わせが殺到しました。在日外国人妻の会による署名や、他にもたくさんの人が放送再開のために活動しました。それが功を奏してか、1988年4月から地上波で放送再開。時間変更などもありながら2004年3月まで放送されました。すでに日本でも、セサミストリートは単なるひとつの子ども向け教育番組ではなくなっていたのです。

日本ならではの「セサミ」もあった!

アメリカと同じオリジナル版がNHKで放送されていた以外に、日本の子供たちが置かれた環境や問題を取り上げた共同製作版もあったことをご存知ですか? 2004年10月から2007年9月まで、テレビ東京系で放映されていました。

いまでも人気は根強く

このテレビ東京版も終了して9年近く。日本で地上波のテレビ放送としては、セサミストリートは放送されていません。でもエルモをはじめとしたキャラクターたちは日本の子どもたちを魅了し続けています。小さな子どもたちのことを考えて作られたセサミストリートの世界だからこそ、今も多くの子どもたちに愛され続けるのでしょう。