
「受験英語? ああ、あれは使えないんだ。将来の役には立たないよ」。お子様の前で、こんな発言をなさったことはないでしょうか。メディアの世界でも、「役に立たない受験英語が日本をダメにしている」と、受験英語を批判する著名なコメンテーターをしばしば見かけます。 これは大きな誤解です。私やご父母の皆さまが受験生だった当時と比較して、今の受験英語は、大きく進化しました。今日は、皆様にそのことをしっかりお伝えしたいと思います。 昔の英語学習法は、ひたすら「和訳」ではなかったでしょうか。予習の段階でまずノートに英文を写し、その隣に日本語の訳を書いたものです。授業中は、先生が言う日本語の訳文を必死で書き写すか、予習ノートに赤ペンで自己添削をしたりしました。つまり、英語の授業中なのに、日本語を聞き、日本語で考え、日本語を書き写すばかりだったわけで、あれでは、英語が話せるようになるはずはありません。 その状況が、2000年を過ぎる頃から、すっかり変化してしまったのです。
「聞く力」……2006年度からセンター試験にリスニングが導入されたのが、近年における大きな進化、決定的な進化だったと言っていいと思います。リスニングの得点は250点満点中の50点、全体の5分の1ですから、相当な比重を占めています。今のところ、センター試験のリスニングはごく易しい問題で、英語がある程度得意な生徒なら、特に心配する必要はありません。しかし、東京大学・早稲田大学などの難関大学で出題されるリスニングとなると、これはもう、「超難問」としか言いようがありません。
ここで、07年に早稲田大学・国際教養学部の入試問題で出題されたリスニング問題をご紹介いたします。英文のスピードは、ほぼネイティブスピーカーのノーマルスピード。内容は、ボルネオ島の自然破壊について、島の上空を飛ぶヘリコプターからキャスターが実況中継しているという想定。このスピードで、4〜5分ぶっつづけで英語がシャワーのように降ってきます。どうでしょう、そのレベルの高さがわかっていただけると思います。 「読む力」……読解問題も変わりました。こちらも早稲田大学・国際教養学部の入試問題を例に挙げますと、時間内に読みこなさなければならない文章量が非常に多いことがわかります。長文問題2問で本文だけでもA4用紙6枚。この小さな活字で埋め尽くされた英文を読みこなし、設問合計20問を解くのに与えられた時間は約50分。分量もさることながら、内容も深く「現代国語」並に難しい。「和訳すること」は、すでに目的でもなんでもなく、むしろスピーディーな読解にとっては障害になります。スピーディーに英文を読みこなし、大意をできるだけ正確に把握する力が求められているのです。 「スピーチする力」……「英作文」の問題も、変わりました。昔は「日本語の文章を英文に直しなさい」という出題で、まあ「ゆっくり通訳する」力があればそれでOKでした。しかし現在、英作文の主流は「自由英作文」です。日本語を英語に変えるんじゃなくて、英語でスピーチするように、英語で自由に書かせる問題です。例えば、「小学校から英語を必修科目にすることについて、あなたの考えを英語で書きなさい」「裁判員制度導入について、賛成ですか、反対ですか。それは何故ですか?」「女性専用車両について、賛成ですか、反対ですか。その理由は何ですか?」といった出題の仕方ですね。与えられる時間は約15分、書かなければならない分量は100語程度。レポート用紙で10行ぐらいビッシリになります。「ちょっとした英語スピーチならできる」というふうでないと、こういう問題に対処できそうにありません。 リスニング力 スピーディーな読解能力 スピーチ力など多岐にわたる英語力は、国際社会でも通用するもの。昔の「役に立たない」ものとは決定的に違います。
東進ではこの時期、高2生はすでに受験勉強をスタートさせ、高3生になる前にみっちり基礎を固めることを一つの目標にしています。
「ゴボウになったつもりで、ひたすら根っこを育て、しっかり根っこを伸ばしなさい」私は授業の中で、こう口を酸っぱくして繰り返しています。具体的には、とにかく音読することと、手を動かして書いて勉強すること。
数年前、不安そうな顔で一人の女子生徒がアドバイスを求めてやってきました。高2の4月の時点で偏差値が43。志望は私立最難関校。それでも、簡単にあきらめさせたくないと考えた私は「音読しまくれ」「書いて書いて書きまくれ」とアドバイスしました。「単語集でも熟語集でも、例文は声が枯れてしまうほど音読しなさい」「半年でボールペン30本をカラにするぐらいに徹底的に手を動かして勉強しなさい。そうしたら、半年後には合格の希望も出てくるかもしれないね」と言ったわけです。半年後、カラにしたボールペン32本を持参して意気揚々と私の前に現れた彼女の偏差値は、なんと68。今でも私の授業では「1日1.5センチ、ボールペンのインクを減らそう」が合言葉です。
基礎固めの間は、テクニックも裏ワザも必要ありません。英単語、英熟語は書き、音読して体で覚えるしかないのです。努力は必ず形になります。どんどん根っこを伸ばし、ゴボウから大木に育ってもらいましょう。
質疑応答

子どもは現在高1ですが、高1の間にやっておくべきことを教えてください。

まず、英単語に手をつけるところから始めるとよいでしょう。東進では早い時期から英単語・英熟語に取り組むことを勧めています。単語集にはたいてい、単語の隣に短い例文が書かれています。その例文を5回音読して、5回書き写すことを繰り返します。1日10ページやれば300ページの単語集は1カ月でやり終えられます。続いて英熟語に取り組みましょう。

中学受験、高校受験に失敗したことを気にしているのですが……。

これまでの私の経験上、中学、高校受験が不本意な結果に終わった経験をした生徒ほど、目の前の課題に対して積極的に取り組むことができる傾向にあります。それは恐らく、「どれだけ基礎が大事であるか」ということを、骨身にしみてわかっているからなのではないでしょうか。そうでない場合でも、周囲の大人やご家庭で「何が大事であるか」を伝えてあげることで子どもはまっすぐに伸びていきます。