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2008オープンキャンパス情報





新 実力講師波乱万丈記

東進タイムズ2008年6月1日号

試合
〜ラグビー早明戦〜
第3回今井 宏先生(英語)
大手予備校トップ歴任の超大物講師。ズバリ的を射たフシギなほどわかる授業、心地よいスピード感と豊富な話題、あふれる知識で、受講生を魅了する。「何でこんなによく理解できるの?」という驚きでいっぱい。生徒の充実感は200%。広告代理店国内最大手「電通」勤務を経て、満を持して予備校界に進出。専攻は国際関係論。成績アップはもちろん、英語にとどまらない話題豊富な授業内容に、君の見識が広がること間違いナシ。著書多数。

敵味方の垣根を越え 健闘を称え合う紳士的な文化
それがラグビー

何でもとことん、広く深くはまる私の趣味

自分で言うのも何ですが、私は極めて多趣味なので「心が揺さぶられたもの」をなかなか一つに絞れないんですよね。

英語の講師であるのに意外だと思われるかもしれませんが、まずは文楽、歌舞伎、能などの日本の伝統芸能です。文楽については19歳のときから東京で公演された舞台は一つも見逃していません。人間国宝の竹本越路大夫、竹本津大夫が元気に活躍していた頃の姿を今でもよく覚えています。

そうかと思えばオペラも観ます。パリ、ミラノ、そしてウィーンへ出向いて、3大テノールと握手してきたこともあります。また、映画や音楽、演劇も大好きです。映画はDVDで年間300本くらい見ますし、音楽も一日にCDを3〜4枚聴いているので、年間で延べ1000枚くらいになりますね。

演劇については、大学生の頃から30歳くらいまで渋谷の小劇場に常連のように通い、入り浸っていましたね。広く深く、趣味に浸る性格のようです(笑)。そんな私が、あえて一つ挙げたい趣味がラグビー観戦なんです。

将来進路決定出会将来の進路を決定づけたラグビーとの出会い

ラグビー。これは、単なる「スポーツ」というより一つの「文化」です。

ラグビーのルールはとても紳士的です。まず、応援団は相手チームに対して罵声を浴びせてはいけません。たとえ敵が反則をしたとしても野次ったりしないのです。それどころか、相手の好プレーに対しては、立ち上がって拍手をします。

そして選手たちは、敵の反則にもかかわらず、自分たちに不利な位置まで下がって、試合を再開します。「敵が反則をしたのは、自分たちが追い詰めすぎたせいであり、やむを得なかった。だから自分たちがいったん下がらなければいけない」という発想なのです。

私がラグビーに魅せられたのは、13歳のときに関東大学対抗戦の早稲田大学対明治大学の試合を観たことがきっかけです。その試合で、早稲田の14番の藤原選手と15番の植山選手のプレーを見て感銘を受けました。両選手とも、相手からどんなに押されていても決して引き下がらない。それどころか、取り返しにいくんですよ。その強靭な粘りというか精神性に感動してから、現在に至るまでずっとラグビーを見続けています。あのとき早明戦を見ていなかったら、私は早稲田に入学していなかったと思うくらいです。

ところで、試合を観続ければ観続けるほど、一人ひとりの選手についていろいろなことがわかってきます。ある選手は、浪人してまで早稲田に入り、レギュラーになれなくても頑張り続け、4年生の最後の試合にやっと出ることができた。そういう選手の背景を噛みしめて、心から声援を送る。考え方が、義理人情を重んじる浪花節みたいですけれど、そこに惹かれるんです。

1990年の早明戦で起こった奇跡

今まで観た試合の中で、特に感動的だったものがあります。1990年、関東大学対抗戦の優勝をかけた早稲田と明治の一戦です。この年は両チームともキャプテンが日本代表選手で、素晴らしい選手が揃っていました。当然、世紀の決戦を観るべく国立競技場は満員の6万人で埋め尽くされました。大学のスポーツで5万人を超える観客を集められるのは、ラグビーの早明戦だけだと言われています。当時は、両大学の力が拮抗していて毎年5点差以内の接戦が続いていました。

この年は、早稲田が全くふるわず、終了2分前まで24対12のダブルスコアで完全に負けていました。この状況からトライ、ゴールキックが決まって6点差。残り時間1分でワントライ、ワンゴールが必要です。ここで見事にトライが決まり、ロスタイムに入ります。この時点で残り2点差なので、ゴールキックを決めないと負けてしまう。しかし、このギリギリの状況から、早稲田が何と同点ゴールを決めたのです!

最後の2分でダブルスコアになっていても、サブキャプテンの今泉選手は「まず1本!」とほかの選手を励ましました。うなだれていた選手たちはそれを聞いて「そうだ、まず1本だ!」と奮い立ち、同点に追いついたのです。どんなに逆転する見込みが低くても、まず1本決めるという気持ちが得点につながったんですよね。人間同士が自らを鼓舞して築き上げたこの精神は、どんな文化よりも文化らしいと思っています。

※当時は1トライ4得点

高尚な精神性精神性を秘めたラグビーが私に教えてくれたこと

「同点の場合は双方を優勝にする」というのがラグビーの良いところです。“ノーサイド”と呼ばれる終了のホイッスルが鳴った瞬間に敵味方の壁がなくなり、健闘を称え合います。

また、試合後には6万人の観衆が、国立競技場のある神宮から渋谷までそれぞれの校歌を歌いながら入り乱れて歩きました。競技場の中では敵同士の関係だったのに、早稲田と明治の学生が険悪な雰囲気になることはありません。お互いを称え合う精神は、選手だけでなく観客にも浸透しているのです。

相手を罵らず、健闘を称える。お互いに全力を尽くす。こういったラグビーの精神を、現代の大人社会も学ぶべきだと思います。

先ほどの早明戦の試合の最後に、アナウンサーが「早稲田、奇跡の同点!」と叫ぶのですが、私は、奇跡の起こし方には二つあると思います。一つは、「まず1本」を取りに行く姿勢。もう一つは、「品性」を持って、その1本を取りにいけるかどうか。ここで言う品性とは、相手の反則をアピールしたり、審判の判定に抗議したりしないことです。

受験の世界でも同じことが言えると思います。本番まで残り2カ月、残り2日になったときにどう過ごすか。残り2カ月でも、ひたすら単語を「まず1個」と覚えていけるかどうかですよね。そうすれば最後には、ゴールを勝ち取る、シチュエーションがきっと訪れるはずです。