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東進タイムズ2008年7月1日号

憧れの職業を追え!

公認会計士編

新日本監査法人
会計士補
富田 将道(とみた まさみち)氏


医師や弁護士とともに国内の三大国家資格の一つとして知られる公認会計士。その名が示すとおり「会計」のプロフェッショナルであり、社会経済において重要な任務を担っている。特に、企業情報の信頼性が強く求められている近年は、注目度がさらに高まっている。そこで今回は、業界トップレベルの新日本監査法人に所属する富田将道氏にご登場いただき、最新事情を含めた仕事内容ややりがいなどについてお話を伺った。

企業の信頼性を証明し、
経済市場の透明性を守る会計のエキスパートを目指す

企業の会計監査業務は公認会計士のみに許された仕事

皆さんの中で、「公認会計士」と聞いてその仕事内容にピンとくる人が何人いるでしょうか。公認会計士は、一般的に高校生が日常で接する機会がほとんどないので、名前は知っていても仕事内容をイメージできる人は多くはないでしょう。

公認会計士の仕事はいくつかに分類できますが、中でも「会計監査業務」は会計士だけに認められた責任のある業務であり 、仕事の中心を占めています。企業は、社会的信頼性を維持するために、経営成績や財政状況を財務諸表″という書類にまとめ、株主や一般投資家に向けて公表します。財務諸表″は、企業の利害に関係する人や株主が会社の経営状態を把握するための大変重要な資料であり、その内容が適正かどうか公平に判断を下すことが、会計士の仕事です。

私が所属している新日本監査法人では、クライアントの規模によっても大きく異なりますが、実務処理全般を行うスタッフのまとめ役となる主査1〜2名と、重要ポイントの判断業務を中心に担う業務執行社員2〜3名で5〜10名のチームを組み、年間延べ数カ月間、企業の一室を借りきって監査業務を行います。

定められた会計ルールと照らし合わせながら、帳簿や証憑(領収書や請求書)、重要書類を細かくチェックし、監査証拠を積み上げていく。チェックすべき書類は膨大な量に上り、決算監査期間は連日睡眠3〜4時間というときもあります。

デスクワークだけでなく、書類に書かれていることが本当かどうか、企業の担当者にヒアリングしたり、企業の保有する商品の棚卸しの現場に足を運び、資産チェックを行う「立会い作業」を行ったりもします。

私の場合、会計士の仕事を始めて丸2年が過ぎたところですが、補助業務などを含め、関わった企業の数は60社以上。売上や利益を得る仕組み、資産の管理方法は業界や企業ごとに異なるので、そのたびに頭を切り替えて臨まなくてはなりません。一回一回が新しい体験であり、貴重な学びの連続です。

棚卸し・・・帳簿に記載された在庫の数量と実際の在庫の数量が一致しているか、在庫の数量を定期的に確認すること

公正な目で企業を見つめるために、常に求められるチームワーク

会計監査業務は、デスクの上で書類を黙々とチェックするだけではありません。どんな監査業務に入る前にも必ず、経営者の方に企業の目的や現況、今後のビジョンなどについて詳しくお伺いします。会計士としての経験年数にかかわらず、じかに経 営者の方のお話を伺う機会に恵まれているのは、この仕事の大きな魅力の一つですね。

私がこれまでお会いした経営者の方は皆さん、揺るぎない信念のもと将来のビジョンをやり遂げる気迫に溢れている方ばかりでした。人間ですから、迷いや不安を感じるときもあると思うのですが、それを微塵も見せない意志の強さや仕事への誇りは、ひとりの人間の生き方として得るものが多くあります。

また、日々自分が成長している手応えを得られることも大きなやりがいですね。知識として頭に入っていても、監査の現場でそのまま通用するとは限りません。例えば、A社がB社の株式を資産として所有している場合。かなり大雑把な説明ですが、会計ルールによると、B社の純資産(企業が持っている資産から負債を差し引いたもの)が株式の取得価額の半分以下になれば、資産として計上できる金額は純資産の金額だけとなります。ただし、今後確実に業績がよくなるなどの事情がある場合には、資産として計上できる金額は取得したときの金額となります。ここまでは知識として頭に入っていることです。しかし監査の現場では、今後業績がよくなるという会社の判断が、客観的で合理的なものであるかの検討を行わなければなりません。このような判断を積み重ねていくことにより新しい考え方が身についていくのだと思います。

監査は企業の信用を左右する大変重要な仕事であり、一つひとつのケースを丹念に調べて正しい判断を下さなければなりません。思うように仕事が進まなかったこともありましたが、それらを乗り越えられたのは、同じチームで業務を行う上司や先輩会計士のサポートのおかげです。過去の類似ケースをどう処理してきたか、こういうときはどのように考えればいいか、壁にぶつかるたびに質問し、的確なアドバイスをいただくことができました。

公認会計士はプロフェッショナルとして独立した存在ですが、仕事は常にチームワークです。業務全体の流れを把握し、そのなかで自分の役割をきちんと果たすことが大切だと思います。

厳しい試験を突破した原動力は、「もっと知りたい」という知的好気心

高校時代の私は、公認会計士がどんな仕事かも知らず、ましてや自分がその道に進むとは想像すらしていませんでした。大学も経済学部や法学部ではなく、教育人間科学部に進学。それが大きく方向転換することになったのは、学生時代のレストランチェーン店でのアルバイトがきっかけです。店長が本社の社員と店舗経営の話をしているのを耳にし、その内容を自分も理解したいという些細な好奇心がきっかけでした。耳慣れない経営用語や、経理の簡単な仕組みをわかるようになりたいと簿記2級の勉強を始めたらそのおもしろさにはまり、さらに1級を目指す過程で公認会計士の仕事を知り、この職業を意識するようになったんです。

受験勉強はアルバイトと両立しながらでしたので肉体的にはハードでしたが、それをつらいと思ったことはありませんでした。それよりも、自分の知識が増えていくことのほうがうれしかったですね。もともと数学が好きで、数字が武器となる仕事が合っていたこともあったのだと思います。

試験科目の中では、原価計算など経営の基礎に関わる「管理会計論」というのが特に好きで、アルバイト先のレストランのことを思い浮かべながら勉強していました。売り上げ目標はいくらで利益がいくらだとか、光熱費は○円までに抑えなければならないといった数値が、どのような考え方に基づいているのかが理解できるようになり、より広い視野で物事を考えられるようになりました。

簿記2級は独学で取得しましたが、1級および公認会計士試験は専門のスクールに通いました。一人で勉強していたら多くの時間を費やしてしまっていたかもしれませんが、ポイントを的確に押さえた講義で、効率よく勉強できたのがよかったと思います。そうして公認会計士試験に合格を果たすことができたのは、簿記の勉強を始めてから約2年3カ月後のことでした。

さまざまな能力を総合した「人間力」こそが会計士に求められる一番の資質

資格は実際の仕事で活かされてこそ価値があります。監査の現場で求められるのは会計の知識を含めた「総合力」です。聞きたい情報を引き出すヒアリング能力、自分の言いたいことを伝えるコミュニケーション能力、長時間の監査をやり抜く集中力、それを支える健康な肉体などさまざまな能力を総結集して臨まなければなりません。そのためには出来るだけ多くの経験を積むことです。高校生の皆さんは勉強だけでなく、部活や友達との付き合いなど自分のしたいことにどんどん挑戦してください!

現代は、企業の社会的責任の一環として情報開示が強く求められる時代です。それに伴い、会計士のニーズは年々増加し、活躍のフィールドも広がっています。私たち公認会計士の使命は、経済社会の透明性を維持し、日本社会全体の発展に貢献することです。その精神を忘れずに誇りを持って仕事に取り組んでいきたいと思います。

富田 将道(とみた まさみち)
新日本監査法人 監査第五部
会計士補
1980年 埼玉県生まれ
1998年 東京都立 小石川高校卒業
1999年 横浜国立大学 教育人間科学部
マルチメディア文化課程入学
2002年 日商簿記検定2級取得
2003年 日商簿記検定1級取得
2004年 公認会計士試験合格
2005年 新日本監査法人入所、
現在に至る
富田氏に聞く!「私の学生時代」
高校時代の得意科目は?
数学で、特に微分が好きでしたね。
高校時代になりたかった職業は?
イタリア料理のシェフです。レストランのアルバイトをしていて、簡単な料理は調理を経験するうちに「おもしろいな」と思うようになりました。今は時間がないのでほとんど料理はしませんが、パスタ料理にはかなり自信があります。
高校時代に熱中していたことは?
音楽系のクラブ活動です。パンクメタルのバンドを友達と結成し、ブルーハーツやハロウィンの曲をコピーして楽しんでいました。担当はドラムです。
大学時代に熱中していたことは?
大学でも音楽サークルに入り、ジャズサークルの活動に夢中になりました。ロックとはまた違う音楽の魅力がありましたね。
担当ライターよりひとこと!

 今回の取材で一番印象的だったのは、富田氏が会計士を目指した背景です。ちょっとした好奇心をきっかけに、簿記の勉強からスタートし、難関国家試験である公認会計士試験に合格するまでの過程は「我慢」や「プレッシャー」などとはかけ離れたものでした。「何よりも興味のあることに関する知識が増えていくことがうれしかった!」と語ってくれた富田氏。一語一語言葉を選びながら丁寧に質問に答えてくださる姿に、仕事への誠実な姿勢を垣間見たような気持ちがしました。


公認会計士への道公正な目で企業経営を見守る
公認会計士とは

公認会計士は会計に関する高度な知識を持ち、企業・各種法人の経営が会計面において円滑かつ健全に実施されるようチェックする「会計の専門家」だ。

具体的には、企業の財務諸表が適正であるかどうかを調査し、意見を表明する「監査業務」、会計に関する調査や指導・助言を行う「会計業務」、企業の経営戦略立案などの「経営コンサルティング業務」を担う。

また、公認会計士は登録すれば税理士の資格を得ることができ、税務書類の作成や税務相談を行うことも可能だ。

全国の公認会計士の登録数は1万7264人(平成19年度)。平成18年度に試験制度が改正され、昨年は公認会計士試験合格者が倍増した。ちなみに世界では約120カ国250万人の公認会計士が活躍している。

近年では地方自治体への法定監査が義務づけられたり、企業の積極的な情報開示を求める株主も増えている。公認会計士に対する期待はますます高まっており、活躍のフィールドも広がっている。

公認会計士になるには

公認会計士は国家資格であり、まずは国家試験に合格しなければならない。試験は短答式試験と論文式試験で構成され、会計学、監査論、企業法等から幅広く出題される。試験内容を考慮すると経済・商学・法学系出身者が有利だ。

試験合格と並行して、2年以上の実務経験(業務補助又は実務従事)と実務補習の単位が必要。これらの条件を満たせば「公認会計士」として仕事をすることが可能である。

働く場は監査法人・公認会計事務所等で、経験を積んでから独立し、個人の事務所を持つ人も多い。


公認会計士のお仕事に関する
仕事をするうえで手放せない「三種の神器」を教えてください
【富田氏】一つ目は「ノートパソコン」です。情報を保護するため、クライアントごとに使い分け、重要情報はすぐ会社の共有サーバーに移し、厳重に管理しています。二つ目は「監査小六法」です。内容は毎年改定され、新しいものが出るとすぐに改正箇所を確認します。三つ目は「電卓」です。手に馴染んで使いやすいので、試験勉強をしていた頃と同じ型のものを使っています。このほか、番外編として個人的に欠かせないのが「音楽」です。仕事にメリハリをつけるために、移動時間は好きな音楽を聴いて、気分転換を図っています。

公認会計士と税理士はどう違うのですか?
【富田氏】公認会計士の「会計業務」とは、税務業務以外の経理一般業務、財務や会計に関するアドバイス・助言などです。これに対し、税理士は税務業務、書類の作成や税務に関する相談に応じます。税務業務は税理士固有の仕事ですが、公認会計士は税理士の資格を有しているので、登録すれば税理士として税務業務を行うこともできます。
女性もバリバリ活躍できますか?
【富田氏】新日本監査法人の場合、全体の約2割は女性です。それぞれが独立したプロフェッショナルとして活躍していますので、当然男女で待遇に差はありません。やる気と努力次第で、もちろん活躍できますよ。
平成18年度から公認会計士の試験制度が変わり、大幅に合格者が増えましたが……
【富田氏】平成20年4月より開始する事業年度から、主に上場企業に対し、財務報告の間違いを防ぐための仕組みの有効性について、経営者が報告を行う「内部統制報告制度」が新たに義務づけられました。会計士はこの経営者の報告が適正であるか否かについて監査意見を表明することが求められています。このように会計士の仕事量や需要は急速に増えているのですが、会計士の絶対的数はまだまだ不足しています。一人でも多くの仕事仲間が増えることは、個人的には大歓迎です!