第9回 医学部 数学編
このコーナーでは、2007年度入試問題を徹底分析し、各大学の入試問題に潜んだ出題意図を読み解き、大学がどのような力を持った学生を求めているのかについて探っていく。
第9回の今回は、医学部の数学の入試問題について、東進の実力講師、鹿野 俊之先生にお話を伺った。
Q1医学部の数学の傾向を教えてください。
A1
基本的に医学部だからこの分野が出るといった特別な傾向は無く、もちろん医学に関する知識が出題されることはありません。強いていえば、多くの医学部では数学III・Cが重視されているのが特徴ですね。
一般的に、国立大学医学部の数学の試験は、ほかの理系学部の数学と同じ問題が出題されます。それに対し、国立の単科医科大学や私立大学は、各大学特有の傾向がありますので、それぞれ分けて説明しましょう。
まず国立大学の場合、旧帝大は数学 I ・A、II・B、III・Cからまんべんなく出題されます。そして、旧帝大に限らずほとんどの国立大では、標準レベルの問題が6割、やや難しいレベルが1〜2割出題されます。また東大では今年、過去10年ほど出題されなかった数学Cの「行列」の問題が出題されました。東大に限らず他大学の医学部にも言えることですが、昨年から今年にかけて一次変換を中心に「行列」分野からの出題が増えているので油断せずしっかり勉強しておく必要があるでしょう。
一方、東京医科歯科大学など国立の単科医科大学は、大学によって出題傾向が異なります。そのため、過去問対策をしっかり行うことで出題傾向を把握することができます。横浜市立大学や群馬大学など、単科大学でなくても医学部が他学部と別の問題を出す大学も同様のことがいえます。例外もありますが、数学III・Cを中心に出題する大学が多いので、徹底的にIII・C分野の対策を行う必要があります。
私立大学の場合、ほとんどがマーク方式です。極端な難問が出題されることは少なく、幅広く、かつ標準的な知識を身につけているかどうかを問う問題が多いので、 I ・A、II・B、III・Cの全範囲で弱点をなくしていきましょう。特に注意しなければいけないのは、数学Cの確率を出題する大学があるということです。理工学部や薬学部では、数学Cの確率を試験範囲としている大学はほとんどありません。そのせいか、学校でも数学Cの確率は扱いが軽いと思いますが、私大医学部を目指す人は疎かにはできません。
Q2入試ではどのような力が試されているのですか。
A2
国立大学は、標準的な問題を確実に解ける力が必要とされています。そのうえで高得点を狙えなければ、合格ラインには達しません。例えば、他の学部と同じ問題を出題する大学の場合、だいたい、合格最低ラインが理学部では5割であるのに対し、医学部では6〜7割です。標準的な問題を確実に得点し、かつ高得点を取れるかどうかが試されています。
また単科医科大学の出題する問題の中には、教科書レベルの内容にとどまらない問題が含まれることもあります。「この大学の志望者なら、これくらいの興味や知識を持っていてほしい」という出題者のメッセージが込められているのでしょう。そのため、自分で問題集などに取り組んで力をつけることはもちろん、確率や微積分、行列の分野はより深く勉強した方がいいでしょう。自ら興味を持った分野は大学1・2年生が読むようなものを読んでもいいんじゃないですか。今は岩波科学ライブラリーをはじめシュプリンガー・フェアラーク東京などがいろいろと出しています。それらを通して数学的なものの見方を心がけ、知識を増やすことが大事です。
一方、私立大学では極端な難問を解く能力よりも、短時間に大量の問題を正確に処理する能力が試されます。慶應義塾大学など多くの私立大学では8割が穴埋め問題ですが問題数が非常に多く、過去問演習は時間を計りながら行うと効果的です。合否を分けるポイントの一つである数学Cは、入学後に線形代数や統計の講義を必修にする大学にとっては、基礎力をもっている受験生に来てほしいという大学側の意向であるとも考えられます。
Q3今からどのような学習をしておくべきでしょうか。
A3
受験生は時間の許す限り、志望校の過去問演習に取り組んでください。過去問から出題傾向を調べ、演習を重ねることで自分の弱点が見えてくると思います。その分野を標準的なレベルの問題からやり直してみることです。問題処理能力を高め、出題者の意図を読み取る力を養い、得点力をアップさせましょう。
高2生・高1生は今のうちから I ・A、II・Bの基本をマスターしておくことが大切です。前述したように医学部数学で重視されるIII・Cは、 I ・A、II・Bの知識があってこそ成り立つものです。この分野で弱点があれば、土台が大きく崩れてしまうことになります。また数学Cの「確率」など後回しになりがちな頻出分野もありますので、早めにスタートさせましょう。
最後に、発想力が要求される東大、京大、そして旧帝大の問題を除けば、医学部数学の入試問題は標準的な問題から構成されています。つまり、地道に努力すれば高得点を取れる問題なのです。実際の医療現場は不眠不休の体力勝負。今から「高得点を取るなんて難しい……」とめげているようでは、将来とても頑張りきれません。高い志を持って取り組んでほしいと思います。
鹿野 俊之(しかの としゆき)先生(数学)

成績上位者を中心に、生徒を徹底的に鍛え上げる熱い講義で抜群の支持を得ているトップ講師が東進に新登場。常に真剣勝負の凛とした空気は生徒の集中力を高める。駿台で数学科の大黒柱として活躍中。医学部、東大を目指す生徒からはもちろんその父兄からの信頼も極めて高い。
鹿野 俊之先生の主な担当講座(抜粋)
[通年講座]
●国公立・難関私大 医学部受験者は必須!
医系数学
●数学の基礎となる数と式の扱いを習得しよう!
難関大合格のための中高一貫数学 I 式と関数の基礎
2007年度の東京医科歯科大学・慶應義塾大学の入試問題および解答は、東進ドットコムの「
入試問題過去問データベース」に掲載されています。ぜひ、チャレンジしてみよう!