第5回 早慶 世界史編
このコーナーでは、2008年度入試問題を徹底分析し、各大学の入試問題に潜んだ出題意図を読み解き、大学がどのような力を持った学生を求めているのかについて探っていく。
第5回の今回は、早慶の世界史の問題について、東進の実力講師、斎藤 整先生に
お話を伺った。
Q1早稲田大学と慶應義塾大学の世界史の出題傾向の特徴を教えてください。
A1
早慶ともに、学部によって出題形式や問題量が異なります。例えば早稲田の政治経済学部は60分で大問6題(マーク式と記述式)であるのに対し、法学部は60分で大問5題(マーク式と論述式)です。一方、慶應の経済学部は80分で大問4題(マーク式と記述・論述式)、法学部は60分で大問4題(すべてマーク式)です。
ただし、出題傾向に関しては早慶にはっきりとした違いが表れます。早稲田は学部ごとの個性が非常にはっきりしていますが、慶應は学部間に共通性がありますね。例えば、慶應の文・法・商学部では共通して文化史や思想、宗教などのテーマ史が例年出題され、この傾向は過去20年以上変わっていません。
一方の早稲田の場合も傾向は30年以上変わらず、政治経済・法・社会科学部の正誤問題に難問が多く、特に社会科学部の年代の整序問題には注意が必要です。年代の整序問題といえば、年号別に並べ替えさせる問題はよく目にしますが、社会科学部の場合は選択肢すべてが同じ年号なので、月日の違いから解答を出さなくてはいけません。単純に年号を暗記した知識量ではなく、歴史的事実に対する思考力が求められているといえるでしょう。
Q2入試ではどのような力が試されているのですか。
A2 早慶ともに、世界史の入試問題から垣間見える“求める人材”は同じなんです。
以前、慶應の問題で、『シャーロックホームズ』の主人公の相棒・ワトソンが出兵して負傷した際の戦争名が問われました。もちろん時代を指し示す
ヒントもありましたが、ワトソンは実存の人物ではありませんし、教科書をなぞっているだけでは太刀打ちできない問題です。また、早稲田では「ラーメンを食べる習慣が始まったのはいつ頃か」という問題が出題されたこともありました。慶應の『シャーロックホームズ』、早稲田の「ラーメンを食べる習慣」に象徴されるように、両大学とも共通して単純に教科書を暗記しただけの知識量を問うのではなく、柔軟な発想と史実について自分の頭で考えて答えを導き出す思考力が必要とされているといえるでしょう。
また、両大学の得意とする研究内容からも次のことがいえます。早稲田は中国や北アジア、中央アジアについて、慶應はイスラーム史や西アジアについての研究に伝統があります。現在でこそ中国は世界から注目され、イスラームはこれから世界の鍵を握る三大ネットワークの一つとされる宗教です。これらについて早くから着目し、研究を重ねる両大学は、世界史を通して過去から未来を見据えた考え方のできる学生を求めているといえるでしょう。
Q3今からどのような学習をしておくべきでしょうか。
A3
前述したように、早稲田の場合は学部ごとに出題形式・傾向がまったく異なりますので、志望学部に沿った対策を少しでも早く始めることをおススメします。「どうしても早稲田に行きたいから」と、学部ごとの対策も万全でないまま複数の学部を受験しても、簡単に太刀打ちできません。受験生はぜひこの夏に、また高2生や高1生でも早すぎることはないので過去問に目を通しておきましょう。そうすることで、入試本番でどのようなことが、どのような形で問われるかが理解でき、対策が立てやすくなるでしょう。
また、皆さんの認識を新たにしてもらいたいことは、現在この社会で起こっていることの根底の原因は、すべて過去にあるということです。例えば、北京オリンピックの開催に際し、フランスが中国の人権問題の対応について強硬に抗議しました。いったい、なぜフランスがと思うかもしれません。その理由はフランスの人権問題をめぐる深い歴史にあります。1789年の人権宣言に至る100年間に何度も革命を起こし、痛みを伴うつらい経験を乗り越え、ようやく人権を確立することができたんです。その人権確立の象徴として古代のオリンピックを復活させたという歴史背景があり、彼らにとってオリンピックはいわば人権のシンボルなんです。
一方の中国は植民地時代が長く続き、その克服に多くの時間を費やし、現在も人権問題についての問題を抱えたままです。両国におけるお互いの歴
史認識不足も、問題が大きくなってしまったことの一因ではないでしょうか。
歴史の勉強とは、「何年にナポレオンが○○をした」ということを学ぶことが目的ではありません。過去の事実から未来を見据えるためにあります。未来について考えるための知恵が必要であり、そのために知識を身につけるのです。生きていくためには、楯と剣が必要です。楯は夢や精神的な強さ、そして知恵は剣となります。その大切な知恵を養うために、世界史を学んでいってほしいと思います。
斎藤 整(さいとう ひとし)先生(世界史)

東大を含む上位クラスからベーシッククラスまで、幅広い層の信頼を集めるスーパー講師。論述対策まで視野に入れた先生の授業は、世界史を単なる受験科目としてだけでなく、生徒の知的好奇心を呼び起こす“奥の深さ”を感じさせてくれる
ことだろう。
斎藤先生の主な担当講座(抜粋)
[夏期講習講座]
●文化史を集中カバー! 難関大合格をめざす受験生の必聴講座
難関大への世界史(文化史の攻略)
●主要国家をタテに整理。夏は「各国史」をまとめます。
斎藤整のタテから見る世界史ゼミ
[通期講座]
●世界史のつながりを立体的に把握して合格圏へ
ハイレベル世界史B
●ヨコの流れを古代から現代まで整理します
斎藤整のヨコから見る世界史ゼミ
2008年度の早稲田大学・慶應義塾大学の入試問題および解答は、東進ドットコムの「
入試問題過去問データベース」に掲載されています。ぜひ、チャレンジしてみよう!