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 少子化や学力低下など、現在の大学入試を取りまく状況は確実に変化してきています。では、何がどのように変わってきているのでしょうか。これから、大学は、学生は、入試は一体どうなるのでしょうか。  

今回は大学入試に詳しい亀井信明氏に、現在の大学入試事情を伺いました。

 

Profile

亀井信明(かめい・のぶあき)

1950年、広島県生まれ。大手予備校「河合塾」において主に大学情報と教務関係の仕事にたずさわり、教務本部長や東京GA本部長を歴任。97年に独立して、教育コンサルティング会社「VEGA」を設立、代表取締役を務める。「週刊朝日」「論座」などで大学問題についての執筆・コメント多数。
著書『親と子の大学入試』(中央公論社共著)。

 

大学の門戸が広がり、大学全入時代へ

今、大学に入学できない受験生は随分減ってきています。最も入試が過酷だったのは1990年で、合格率は62.1%でした。つまり、3人に1人は大学に入れませんでした。  

10年たった2000年の入試はどうだったかというと、志願者は約89万人。10年間で27万人も志願者が減ったことになります。一方で、大学入学者数には変化がなく、競争率が最も高かった年よりもむしろ定員が増えている状況です。  

2005年以降は大学に入れない生徒はおそらく6万人から8万人位しか出なくなり、ほとんど現役で入ってしまう(難関大学入学志願者はいつの時代にもいるわけですが)という状況になることが予測されます。計算上ではありますが、大学に全員が入学できる時代に移行してきています。

⇒DATA 「大学・短大志願者数と入学率の関係」

 

国公立・理系人気の理由

入試全体としては「大学に入りやすくなった」ということができますが、国公立大学ではその人気の高まりが顕著で、むしろ入るのが難しくなっています。

その原因の1つは、日本社会の経済的な不況という問題です。学費そのものも問題ですが、地元から通えるというメリットを重視する傾向が非常に強くなっています。特に理工系の学生は大学院への進学率が非常に高くなっていますから、6年間自宅から通える経済的メリットは大きく、志望者がどんどん国立の方に流れています。  

もう1点は、不況に伴う就職難。国立大学は、定員枠が少ないということもあって、こまめな就職指導をしています。そうしたきめこまかい指導という面でも人気が高まっています。

⇒DATA 「国公立大 日程別志願状況」

 

私立大学の二極分化

このように、人口減少の問題と国立大学人気という双方のあおりを受けた私立大学の入試は大きな問題を抱えるようになっています。  

その問題とは、私立大学入試自体が二極分化し始めているということ。例えばこの間の入試の状況を見ると、一番上の難関大学のグループの志願者はほとんど変化していないということがいえます。実質倍率は6.37→6.61。私立大学は入りやすくなっているといわれていますが、難関大学に関しては決して易しくはなっていません。去年と今年を比べると、むしろ若干ながら難化しているという状況があります。

例えば早稲田大学の場合、92年とか90年代の前半は、全学部で16万人の受験生がいましたが、これがどんどん減って、10万人まで減りました。志願者は10万人を切るだろうと言われていましたが、10万人を維持しながらこの3年くらい続いています。  

このように難関大学の志望者は下げ止まったということができ、むしろ学部によっては志願者が増えているという状況があります。

⇒DATA 「2000年度私立大学一般入試結果」

 

「Fランク」大学・学部の登場

ところが、この数字を入試の難易グループ別で見ていくと、志願者が下へ行けば行くほど減少していることがわかります。こういう状況の中で、ついにFランクの大学が登場する事になりました。Fランクとは、どの学力の生徒が受けても合格者の方が圧倒的に不合格者を上回っているという状況を指します。つまり、ボーダーラインがどこにも引けないという大学がだんだん出てきたのです。  

私立大学の難易度は、上位大学では下げ止まり、下の方ではますます易しくなっています。いわゆる二極化です。この傾向はおそらくどんどん強くなってくると思いますが、私の予測では上位の15%位の大学の難易度は、ほとんど現状維持だと思います。それに対して、Fランクの学部を一つでも抱える大学は現在20%弱にまで増えてきていますが、ここ数年でその率は50%近くになると思います。  

Fランクが登場すると「難易度」という尺度で志望校を決定することができません。従来はランキング表があり、それに基づいた進路指導が可能でした。大学の価値は入試の難易度に集約されていたのです。1つでも上のランクの大学や学部、学科の方が値打ちがありましたし、そうした考えが浸透していました。しかし今後は、難しさという尺度以外で、大学をどう評価して選ぶかということが大問題となってくるのです。

 

「知の時代」を切り拓くための教育を

今、「学力低下」について議論が盛んですが、こんなデータがあります。DATA 「学力低下の現状」

これは、現行の教育課程の最初の年度の生徒を、それ以前の旧教育課程の生徒と同じ学力分析試験を使って比較したものです。教育課程の変更で学習内容を削減したことにより、学力トップ層よりも、それより下のグループに15〜20%もの低下が見られ、明らかなしわ寄せがでていることがわかります。また、全体的にみて理数系の科目で低下が目立ちます。

こんなデータ−もあります。中国のトップレベル大学の学生と、日本の難関国立大学の学生に同じ学力試験を課したところ、満点をとった学生が中国では9割いたのに対し、日本の東大や京大の学生は、3割しか満点をとれませんでした。マスコミがあおってきた「受験悪玉論」の名残りでしょうか、いまだに日本人は自分達自身を「学力的には世界トップレベル」だと思っているかもしれませんが、これが日本の現状なのです。

21世紀は、独自の発想や想像力が求められる時代です。少子化が深刻な問題となり、天然資源も人口も乏しい日本。日本が国際競争が激化してくる時代で生き残るために必要なことは何でしょうか。私は、やはり高い技術力や知識・知恵から生まれる知的生産力を高めることだと考えます。若い人たちには「ただ勉強する」のではなく、日本には「知の必要性」があり、その一翼を担うのはきみたちであるということを知った上でしっかりと勉強してほしいと思っています。

 
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