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2015年11月01日号 9面
  • 東進タイムズ 2015年11月01日号 9面
 
東進ではこれまで、世界を牽引する「日本の若き頭脳」を支援する取り組みである「フロンティアサロン」を応援し、各分野で最先端の研究を行う若手研究者へ「永瀬賞」を贈り、受賞された先生方にご講演いただいてきた。今回は2015年度の「永瀬賞 最優秀賞」を受賞された東京大学の柴田直哉先生に、研究が社会にどのような変化をもたらしていくのかについて、高校生に向けた特別講義を行っていただいた。
見えない世界に挑戦する柴田先生の研究とともに、チャレンジすることの大切さを、この講義から学びとってほしい。
同じ炭素から鉛筆と
ダイヤモンドができるワケ
皆さんの日常はさまざまな材料の部品から成立し、その部品を細かく見ていくと最後は原子に至ります。周期表をご存知だと思いますが、ここで大切なのはモノの性質は必ずしも原子の種類では決まらないということです。

鉛筆に使われる黒鉛とダイヤモンドは同じ炭素原子からできています。しかし結晶構造を詳しく見るとダイヤモンドは原子が立体的に繋がって強固な構造である一方、黒鉛は平面的な結合は強くても一枚ずつの結合が弱いという性質があります。つまりモノの性質は原子そのものではなく、原子が作る構造によって決まるのです。こうしたナノメートルの空間で起きる現象を見るための最も単純な方法、それが電子顕微鏡による観察です。
見えるはずのない
小さな世界を覗いてみよう
見えないモノをなんでも電子顕微鏡で見てやろう。これが私のモットーです。
まずご紹介したいのは、すべての元素の原子を見ようという試みです。この研究ではSTEMと呼ばれる走査透過電子顕微鏡を使い、原子が非常に明るく見えるHAADF法という方法を採りました。しかしこの方法では、今後の材料開発で重要となる水素やリチウム、酸素などの軽い元素は原理的によく見えません。そこで試行錯誤の末たどりついたのがABF法でした。

この方法でチタン酸ストロンチウムの結晶を観察すると、今まで見えなかった酸素がチタンとチタンとの間に見えたのです。初めて酸素が可視化された瞬間です。
原子が教えてくれる
日常生活との共通点
HAADF法とABF法によって今やすべての原子を見ることができます。しかしこれでミクロの世界を知り尽くしたわけではありません。

実はこれらの方法で見ているのは原子の真ん中にある原子核の位置であり、本当に知りたいのは、原子核の周りにいる電子がどのように原子同士を結びつけ、モノの性質を決めているか、なのです。つまり電子のふるまいそのものをミクロに見ることがこれからのターゲットです。その一歩として、原子が並び、電子が動いてできる構造をここでは電磁場と呼びたいと思いますが、これを原子レベルで見ることが現在の私たちの挑戦です。

“モノの見方”というのはおもしろいもので、原子を原子核として見るか、原子核のまわりの電場として見るかによって見え方はまったく変わってきます。顕微鏡から得られる信号からどの情報を選び出すかということは、顕微鏡における観察のミソであり、見方によっては今までまったく見えなかったモノが見えてきます。たくさんの中から選び出した情報の見方を変えると新たな発見がある。原子の世界は私たちの日常生活における“モノの見方”の大切さをも示唆しています。
ミクロの宇宙に広がる
可能性を求めて
今後の私たちの目標は、磁性構造を磁場と原子分解能で見ることにあります。しかし電子顕微鏡の磁界レンズがこの観察の大きな障壁になっています。磁界レンズは磁場によってレンズ作用をもたせますが、実は原子分解能の観察では、電子線を細く絞るために非常に強い磁場のなかに試料を入れる必要があり、強い磁場によって試料の磁性構造が壊れてしまうのです。

そこで今、プロジェクトとして進めているのが、まったく新しいタイプのレンズによって、試料の周辺を完全に磁場がない状態にしながら、電子線を原子レベルまで絞れる電子顕微鏡の開発です。皆さんのなかには、広大な宇宙に興味のある方もいるでしょう。しかし原子という“ミクロの宇宙”にも多くの謎が残されており、そこには科学的な大発見がきっと隠されています。ナノテクノロジーによって新たな物質を作り出すことで、社会に新たな材料を提供できるかもしれません。ミクロの宇宙には無限の可能性が広がっているのです。

今日皆さんには、ミクロの宇宙が持つ魅力に触れていただきましたが、私はこれまで何かに打ち込み、いろんな人に出会う中でミクロの世界に道を見出しました。皆さんも大学でたくさんの人に出会い、さまざまな経験をしてください。今は自分の将来に漠然としたイメージしかないかもしれませんが、折に触れて自分が将来どうなりたいのか、自分の理想像とは何なのか、人は如何に生きるべきか、を考えながら勉強に取り組んでほしいと思います。その先に必ず皆さん自身の輝かしい道が開けるものと確信しています。

最新ニュース

東京大学は、令和2年度の推薦入試出願状況をウェブページに発表した。募集人員100名程度のところ173名が出願した(11月6日時点の受取通数)。第1次選考結果は、12月2日(月)にウェブページに掲載される。12月14日(土)・15日(日)には面接が実施され、令和2年1月18日(土)・19日(日)のセンター試験を経て、2月12日(水)に最終合格者が発表される。出願状況       学部・学科    募集人員    出願者数(受取通数)        法学部    10人程度    14     経済学部    10人程度    6      文学部    10人程度    11       教育学部    5人程度    15       教養学部    5人程度    19        工学部    30人程度    51       理学部    10人程度    37       農学部    10人程度    11       薬学部    5人程度    4       医学部医学科    3人程度    4       医学部健康総合学科    2人程度    1       計    100人程度    173  東京大学 令和2年度東京大学推薦入試出願状況に関する詳細は、同大学のウェブページから。〔2019/11/13 東進タイムズ〕
  • 2019/11/13

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  • 2019/11/11

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