Q.家族や友だちと離れるのが辛い、地元を離れたくない
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筑波大学第一学群卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科で学ぶ。社会学者、博士(人間科学)。社会病理学・逸脱行動論・犯罪社会学などを専門としている。現代の若者が抱える生きづらさの内実と、その社会的な背景について、青少年犯罪などの病理の視点から考察する。
今の環境のままでいることや、地元の友達と一緒にいることはとても心地がよく、ずっとこのままでいたいと思うかもしれません。一方で、現代の社会は変化がとても激しい。そんな社会の変化についてゆくためには、あなた自身も変化しなければなりません。
もちろん、地元の人間関係を否定するわけではありません。自分の係留点を確保するという点から見ても、それは非常に大切なものです。また、地方の過疎化が問題とされる今日において、地元に残って活躍したいと願ってくれる若者がいることは頼もしいことです。しかし将来、その地元で活躍していただくためにも、いまの人間関係だけに埋没しないように心がけていただきたいと思います。
もしも、あなたが地元の友達との閉じたコミュニティの中にずっといて、その環境に適応しきってしまったら、今後の社会の変化についていけなくなってしまう可能性があります。あなたは社会から取り残されてしまうのです。また、同じコミュニティーにずっといると、新しい情報が入ってきにくいというデメリットもあります。それは結局、あなたの地元にとっても有益なこととは言えません。
現状に満足し、今ある環境の中にずっと留まってこの心地よい状態がこのまま続いていくと考えるのは楽観し過ぎでしょう。地元に残っても、あるいは残らなくても、社会の変化が激しいからこそ、新しい環境、友人を自ら探し、自分の世界を広げる努力をすることや、そうした動きがあることを知ることが大切です。常にアンテナを張って新しい情報を手に入れ、変化していく社会に柔軟に対応できるようにしましょう。
新たな環境は新たな自分を知ることができる場
新しい環境に飛び込むことのメリットとして、新しい自分の可能性を見つけられるということがあげられます。
あなたは、自分の顔を自分の目で直接見ることはできませんよね。自分の顔を知るためには鏡を通して見なければなりません。それと同じで、私たちは自分という存在の実像を自分で直接知ることはできないのです。では、何を通して自分を知ることができるのかというと、他人の反応です。私たちは、自分に対して他人がどのような評価を下すのか、という鏡を通して、自分がどのような人物なのかを知るのです。
いつも同じような人といると、その人たちから返ってくる自分に対しての反応はほぼ変わらないでしょう。ですが、今まで関わったことがないような人からは意外な反応が返ってきます。そうすると、新たな自分を知ることができます。自分の秘めた能力を発見できる可能性があるのです。
地元を離れることをネガティブに捉えず、多くの人との出会いを経験できる、むしろ新たな自分を見つけるチャンスとして、前向きに考えてみてはいかがでしょうか。そして、地元に残るにせよ、地元を離れるにせよ、変化する社会で柔軟に対応できる人になってほしいですね。