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トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2016年6月1日号

10年後のあなたたちを想像する

東京大学 名誉教授
政策研究大学院大学 客員教授
(元)日本学術会議 会長
国会福島原子力発電所事故調査委員会 委員長

黒川 清先生

各界の第一線で活躍するキーパーソンを講師に迎える「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は東京大学名誉教授で政策研究大学院大学客員教授の黒川清先生をお迎えして、激変する世界情勢、あるいは産業モデルの移り変わりの背景に何があるのかを「富の偏在」「デジタルテクノロジー」「テロとの攻防」といったキーワードを手掛かりに解説して頂いた。そのうえで「10 年後の社会を想像する。その中での自分を具体的に想像する」というテーマにてワークショップを開催。未来へ向けて必要な力とは何かを議論し、発表した。その模様の一部をお届けする。

講演者プロフィール

 日本の医学者(内科学・腎臓学・医療政策・科学政策)。学位は医学博士(東京大学・1967年)。専門は内科学、腎臓学、医療政策、科学政策などであり、在米14年(1969‐84)でUCLA、東京大学で医学部内科教授。国際腎臓学会理事長(アジア人で唯一)、その業績に対して腎研究会特別功労賞が授与されている。また、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会での活動に対して、アメリカ科学振興協会からアジア出身者として初めて科学の自由と責任賞を授与、Foreign Plocy誌のTop 100 Global Thinkers 2012に選出された。そのほか、東京アメリカンクラブから「Distinguished Achievement Award」を授与されている。 内閣官房健康・医療戦略室健康・医療戦略参与、東京大学名誉教授、政策研究大学院大学アカデミックフェロー、特定非営利活動法人日本医療政策機構代表理事。東海大学医学部学部長(第3代)、日本学術会議会長(第22・23代)、内閣特別顧問などを歴任した。

誰もが情報にアクセスできる社会 だからこそ富の偏在や格差が露わに

今、世界は猛烈に変化しています。

日本をはじめとする先進国の経済成長は止まり、その一方で、富の偏在や格差の問題が大きくクローズアップされています。あるデータでは、わずか62人の富豪の資産が、世界の下位50%のひとたちの資産とほぼ同額だと指摘されているほどです。

現代の特徴は、そうした諸問題が「誰にでも見える」ということです。なぜなら、インターネットやスマートフォンの普及によって、誰もが簡単に様々な情報にアクセスできるようになったからです。

例えば最近話題になった「パナマ文書」を知っていますか。お金持ちが税金の安い国や地域に資産を移していることは昔から知られてはいましたが、その証拠となる機密文書が流出して、あっという間に世界中に広まりました。リストには一国のトップの名前もありましたから、それはあまりにもフェアではない。それで、みんなが怒っているわけです。

アイデアと技術が十億ドルの企業価値を生む?! 大きく変化する産業構造

こうした中で、産業モデルも変化しています。

例えばスティーブ・ジョブズが創業したアップルは、今からおよそ30年前は売上高が20億ドル。4千人を超える従業員を雇っていました。ところが、今のようなネット主流の時代は違います。皆さん「インスタグラム」は知っていますよね。2012年、同社はフェイスブックに10億ドルで買収されます。そのときのインスタグラムの従業員数は何名だったと思いますか。わずか13名です。

デジタルテクノロジーが進めば、これまで人間がやってきた仕事をコンピュータで肩代わりできるようになります。つまり、偏差値の高い大学を出たからといって職を得られるという時代ではなくなってきたということです。EU諸国の中には、大学進学率が50%以上ある一方で、失業率が30%にも達している国もあります。

そういう世界で皆さんは、どこで何をしていくか。それが問われているわけです。

自分自身の弱点を認識する そのために外へ出よう!

グローバル世界では多様性や異質性を持ったユニークな人間であることが、大きな価値や可能性を持ちます。一方、日本の大学や社会は多様性に欠け、均質性が高く、国際性も低い。その弱点を認識する必要があります。

その為にも、皆さんにはぜひ海外へ出て行ってもらいたいと思います。日本を外から見ることによって初めて、自分と日本の良さや強さ、そして弱さを感じ取ることができるからです。さらには、より大きな枠組みで日本を見ることができます。

世界が大きく変わる時代、「肩書のない」若い時の海外体験こそが、自分の目標に気付き、あたらしい「違う」人たちと出会い、「あなた」の「ユニーク」な価値ある大事な「人脈」になるのです。

最後にお伝えしたいキーワードは「脳」「心」「ヘソの下」です。知識を蓄え、実体験を積み重ねることで心を育ててください。「ヘソの下」というのは「決める」ということです。今日のワークショップに参加したのも自分で決めたことですよね。その決断力をこれからも生かしていってください。

皆さんにはぜひ、国境を越えたリーダーとして活躍してほしいと期待しています。

ワークショップ 【探る・話す】

テーマは「10 年後の社会を想像する。その中での自分を具体的に想像する」

今回のテーマは「10年後の社会を想像する。その中での自分を具体的に想像する」。チーム内での議論を円滑に進めるために、まずは各自で考えたこと、言いたいことを予備シートに3 分間でまとめることからスタート。

ワークショップ 【練る】

チームの結束が試される瞬間

リーダー、発表者、書記などの役割分担を決めて議論に臨む。「10年後のスマホがどうなっているのか?」とテーマを絞り込むチーム、「現在の問題点から逆算して考えていこう」とするチームなど、議論の進め方も千差万別。限られた時間で、いかにチームの特色を出していくかがポイントだ。

ワークショップ 【発表する】

予選に挑む

6つのグループに分かれての予選会。「機械化が進み仕事が減少する」「能率重視の社会に」「ロボットの責任問題」など、黒川先生の講義中のキーワードを手掛かりに自分たちの考えを述べる。大きな声で発表、フローチャートやイラストを多用するといった工夫にも各チームの特色が現れる。

ワークショップ 【決勝】

予選を勝ち抜いて、いよいよ決勝。

決勝進出した6チームが壇上にて発表。長そうで短い持ち時間5分の中で、いかに聴衆の心に響くプレゼンを行えるかが勝利の鍵。黒川先生からは「まだ日本の中という環境から思考が飛び出していないのでは?」といった指摘も。

ワークショップ 【結果】

表彰式

全チームの発表後「自分たちのユニークさを武器に何ができるかを考えていってほしい」と改めて強調する黒川先生。優勝は「情熱」と「元気」が評価されたチームに決定。賞状と副賞の黒川先生の著書が贈呈された。

参加した高校生の

長野県立 須高高校 3年
村田 千華さん

今まで将来のことは漠然と思い描くだけでしたが、黒川先生の講義やワークショップを通じて「自分は何でもできる!」という可能性に目覚めたように思います。グローバルに活躍している先生のお話にはとても説得力があって「私も世界で活躍したい!」と強く思わせてくれます。新しく知ったことがあまりに多くて、ノートにびっしりと書き写してしまいました。今日経験したことを友人たちともシェアしつつ、私自身さらに知識を深めていきたいと思います。

長野県立 長野高校 3年
諏訪戸 亜衣さん

「外に出て、自分の強み弱みを知る」という黒川先生のメッセージがとても印象に残りました。以前、英語の宮崎尊先生も同じことをおっしゃられていて、とても大事なことなんだと改めて実感しました。ワークショップでは発表者を務めたのですが、チームのみんながしっかりフォローしてくれたので心強かったです。同年代にこんなにすごい人がいるんだという驚きとともに、自分の未熟さを痛感したことも事実で、もっと上手にプレゼンができるようになりたいと強く思いました。

東京都 私立 駒場東邦高校 3年
中澤 龍ノ佑くん

普段は自分から挙手することはないのですが、今日は勇気を出して黒川先生に質問をぶつけてみました。結果的に、僕にとってのパラダイムシフトをこのセミナーで体験・実行でき、それが大きな糧となりました。これで満足することなく、これからは講義で教えて頂いた「レジリエンス」という言葉を肝に命じて、失敗を恐れずに新しい一歩をどんどん踏み出していきたいと思います。

東京都 私立 立教池袋高校 2年
中村 郷くん

情報化・グローバル化が進む世の中では、黒川先生がおっしゃったように「すぐに調べる」という姿勢が大切であることを改めて思いました。発表者を務めたワークショップでは「世界の通貨がドルに統一されるのではないか?」というアイデアを提案しました。けれども、自分とはまったく意見の異なる人もいて、多様な考えを聞くことができて、とてもいい刺激になりました。将来は黒川先生と同じく医師になりたいと考えています。

東京都立 西高校 3年
上杉 卓幹くん

日本の組織の硬直性といった、日本人が直視したがらない点にズバッと斬り込んでいく黒川先生の語り口がとても印象的でした。先生のおっしゃる「外から見る」ことの大切さは、音楽評論の道へ進みたいと思っている僕にとって、とても参考になります。ワークショップでは、機械化が進む世界にあっては「日常に華を添える」行為が大切になっていくのではないかというアイデアを提案し、そのイメージが自分の将来のやりたいことにつながったという実感を得ることができました。