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トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2016年9月1日号

「創造と挑戦」
〜未来を切り拓く鍵〜

東京工業大学名誉教授 元東京工業大学学長
国立研究開発法人科学技術振興機構顧問

相澤 益男先生

各界の最前線で活躍するキーパーソンを講師に招く人財育成講座「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は生命工学、バイオエレクトロニクス研究の第一人者である相澤益男先生をお迎えして「未来を切り拓く鍵」とは何かを、講演とワークショップを通じて考察した。人類と科学の歩みをたどることで見えてくる、未来を創造するために必要な力とは? ダイナミックかつエキサイティングな熱気に包まれた当日のエッセンスをお届けする。

講演者プロフィール

湘南高校、横浜国立大学卒業、1971年東京工業大学大学院博士課程修了(工学博士)後、東京工業大学、米国リーハイ大学、筑波大学を経て、1986年東京工業大学教授。生命理工学部長、副学長を歴任後、2001~2007年東京工業大学学長、2007~2013年内閣府総合科学技術会議議員(常勤)、2013年国立研究開発法人科学技術振興機構顧問。大学設置・学校法人審議会会長、中央教育審議会委員・大学分科会会長、国立大学協会会長等の要職を歴任。
専門は、生命工学、生物電気化学、バイオエレクトロニクス。電気化学会会長、日本化学会副会長、国際生物発光・化学発光会長、日本学術会議会員等を歴任。現在、日本学術会議連携会員。日本化学会賞、電気化学会賞等を受賞。2005年紫綬褒章を受章。

18世紀の実験を入り口に
最先端科学の世界へ

今日は「創造」と「挑戦」が、未来を切り拓く鍵であるというお話をさせていただきます。まず、私がバイオエレクトロニクス(生物電気化学)という未踏の分野へ進むうえで、大きな影響を受けた人物を紹介します。

ガルバーニという18世紀イタリアの生理学者です。彼はあるとき、蛙を引き裂いて真鍮の鉤に吊るし、鉄格子にかけておいたのです。すると、死んでいるはずの蛙の肢が、鉄格子に触れるとけいれんすることに気づきます。そこで、蛙自身が「生物電気」を持っているという説を唱えました。これは、電池の発明で有名なボルタとの論争へと発展しますが、ガルバーニは生物の中に、生命を支えている電気現象があることを突き止めました。

それが脳波や心電図などの測定で用いられる神経系の電気信号です。学生時代に電気化学を学んでいた私は、このガルバーニの実験を思い出し、生命と電気との関係に興味を持ちました。そこから生命系と人工系との「はざま」を研究するようになったのです。

5大革命が世界の成長をけん引した!

ガルバーニの研究やボルタの発明した電池は、現代まで脈々と受け継がれています。人類の歴史は未来を創造し、挑戦を繰り返してきました。そこで時間を人類誕生まで巻き戻し、かつ宇宙の果てにまで想像力を広げてみましょう。

人類が飛躍的に進化してきた過程には、大きく5つの革命があったとされます。とくに重要なのが「人類革命」と「科学革命」です。

アフリカを起源とする現生人類は、火と言葉を使うことで創造力を培い、「自然と共生する技術」を生み出しました。そして17世紀から始まった科学革命では、コペルニクスやガリレオのように、観察し、データを集め、事実を基にして立証していくという科学の基本的な姿勢が登場します。さらに18世紀の産業革命を経て、19世紀になると「物質の本質は何か?」という問題に科学は迫っていきます。「本質を捉える」という姿勢こそが、新たな解決策や考えを生み出す源泉です。

実際にこの時代から、分子や原子が発見されて「化学」が確立されていきます。人類がアンモニアやナイロンを合成して創りだす「人工の時代」が幕を開けるのです。

本質を捉えて
「持続可能な未来」を創造しよう

20世紀に入ると、アインシュタインやボーアに代表される「知の爆発」が起こり、従来の物理学は根底から覆されます。ワトソンとクリックによるDNA二重らせん構造の発見、人工知能の可能性を探ったチューリングなど、「生命」「情報」「物質・エネルギー」の分野で新たなフロンティアが切り拓かれました。技術革新によって社会を変革し、人類全体をさらに成長させる駆動力となりました。

ここで考えてほしいことは「地球には限界がある」ということです。

科学技術の発展は、人口を飛躍的に増加させてきました。今後、エネルギーや食糧は足りるのでしょうか。また、温暖化問題を始め、地球環境を損なってきましたが、これからは「持続可能な未来」を創造していかなくてはなりません。と同時に、現代はグローバル化と多様性の時代を迎えています。

お互いが考えをぶつけ合いながら多様な知をつなぎ、人類の叡智を生み出していかなければなりません。そのためにも、ものごとの本質を捉えて、失敗を恐れることなく「創造力」と「挑戦力」を全開にしてほしいと思います。

ワークショップ テーマ 【探る・話す】

テーマは「あなたにとって“未来の創造”とは?」

テーマは「あなたにとって“未来の創造”とは?」。自分の意見をチーム6名で共有したのち、論点を絞り込んでいく。進行役、書記、発表者の役割分担も明確に。各自がチームにどのように貢献できるのかを常に念頭に置いておくことが重要だ。

ワークショップ 【創る】

チームの結束力が問われる瞬間

チームの意見をまとめてワークシートに記入。テーマを「ヒトの意識」「現代社会システム」「環境」の3つに分類するチーム、「多様性」「挑戦」などの相澤先生の講演キーワードを大きく書くチームなど、ワークシートの見せ方にも工夫を凝らす。チームの結束力が問われる瞬間だ。

ワークショップ 【練る】

予選に向けて、入念な練習。

5グループに分かれて予選に挑む。チームの発表時間はわずかに1分。短時間で聴衆の心に響くプレゼンができるかが鍵となる。大きな文字、図表、インパクトの強い言葉を駆使しつつ、声の調子や論理的かつ親しみやすい話し方にも気を配る。

ワークショップ 【発表する】

予選を勝ち抜いて、いよいよ決勝。

予選を勝ち抜いた5チームの代表者が壇上にて、自分たちの考える“未来の創造”を発表する。アインシュタインやGoogle創業者ラリー・ペイジの言葉を巧みに引用したり、未来の創造は「現状を見つめることから始まる」と力強いメッセージを発信するチームも。相澤先生も熱心に耳を傾けて、一つひとつ丁寧に講評を加える。

ワークショップ 【結果】

表彰式と記念撮影

優勝に輝いたのは「時代を超えたコミュニケーション」と「教育改革」の重要性を説いたAチーム。「まさに今日の講演テーマです」と、相澤先生から高い評価を得た。「世界の人たちと積極的にコラボレートしていってください」という全体講評ののち、優勝チームは相澤先生との記念撮影を行った。

参加した高校生の

ワークショップへの参加は前回に続き2度目です。参加前に相澤先生のご功績を調べました。文系の僕にもわかりやすく科学史をひも解いていただき、有意義な経験となりました。過去と現在、未来をつなげて考えるという発想は、これまでの自分にはなかった視点です。過去の人たちが築き上げた歴史の中に自分は生きている。そのことを今日は本質的に理解できました。この点は、チームメンバーからも学ぶところが多かったです。その結果が、チーム一丸となってのワークショップでの優勝につながったのだと思います。

相澤先生の講演では「創造力」「挑戦」「本質を捉える」といった言葉が印象に残っています。とくに「多様性」がぶつかり合うことで、思いつかなったような意見や考えをもたらしてくれるというお話には深い感銘を受けました。初めて参加したワークショップでは、みんな同年代とは思えないぐらいにしっかりとした意見を持っていて驚きました。負けていられないと強く思ったので、僕もいろんな物事に関心を持って、どんどん吸収していきます。

人と話すのが苦手なタイプなので、コミュニケーション能力を鍛えるという目的意識を持っていつも参加しています。日常では同世代のひとたちとディスカッションをする機会はあまりないので、このワークショップはとても貴重な場所です。3度目となる今回は、テーマが「未来」という広大なものだっただけに、どこに焦点を絞るか最後まで頭を悩ませました。将来は、自分が触れ合うことで誰かを助けたり、自分の言葉で人の行動や考えを変えられるような人間に成長していけたらと思っています。

将来は法律関連の仕事に就きたいと考えているのですが、法律というものは、過去の事例を踏まえて目の前のできごとに対応します。「どう未来を切り拓いていけばいいのか」をテーマとした今日の講演では、過去と現在だけではなく、未来へ目を向けることの大切さを学びました。ワークショップでは発表者を務めましたが、社会の仕組みづくりを優先した私の意見とチーム全体の考えには若干の違いがありました。そのギャップを調整しつつ発表することは難しかったですが、良い経験となりました。

遺伝子や脳神経の研究分野に興味があったので今回のワークショップに参加しました。とくに印象に残ったのは「人生を歩いていくうちにいろいろな人や本に出会い、さらにさまざまな機会に恵まれて、その都度チャレンジしてきた」という相澤先生の言葉です。現在の自分の姿を「想定外」としながらも、その生き方を「一度も後悔したことがない」と先生は仰います。明確な目標をまだ持っていない私は、先生の言葉一つひとつにとても励まされました。