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トップリーダーと学ぶワークショップ
TOP東進タイムズ 2017年7月1日号

世界経済の構造変化と日本

慶應義塾大学 名誉教授
東洋大学 教授

竹中 平蔵先生

日本をけん引する経済人や研究者を講師に迎えてお送りする「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回ご登壇いただくのは、日本を代表する経済学者であり、小泉純一郎内閣のもとで経済財政政策担当大臣、金融担当大臣などを歴任してきた竹中平蔵先生。日本を導く国務大臣として、その最前線に立ってきた竹中先生が考えるリーダー像とは。また現在、世界で起きている劇的な構造変化とはなにか。200名あまりが参加した講義とワークショップのエッセンスをお届けする。

講演者プロフィール

1951年和歌山県和歌山市出身。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行。その後ハーバード大学客員准教授を経て、現在は慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授。小泉純一郎内閣のもと経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣など内閣の参謀として国務大臣を歴任。有名企業の取締役会長や社外取締役を務めるほか、国家戦略特別区域諮問会議、未来投資会議など国の政策会議のメンバーにも多数選出。日本を代表する経済学者である。また、早稲田塾の人財育成プログラム「世界塾」でも教鞭をとり、日本の最先端リーダーの育成にも力を入れている。

時代や状況によって求められる
リーダー像は変化する?!

まず、皆さんに質問です。リーダーとはどのような人でしょう。実はリーダーには、いろいろなタイプがあります。時代や国、組織の状況などによって求められるリーダーは違うからです。例えば日本では、昔から稲作が行われていました。農耕社会でのリーダーの重要な役割は、水田に引く水をみんなでどのように分け合うかを決めることです。みんなが納得できるように合意形成するわけですね。

一方、オアシスを求めて移動を繰り返す遊牧民族のリーダーには、情報を総合的に判断して決断し、みんなを従える力が必要です。さあ、今の日本の社会には、どのようなリーダーが求められるでしょうか?

私は約6年間、小泉総理という日本の政治史に残るリーダーの側で、さまざまな意思決定や行動を拝見する機会に恵まれました。そうした経験を踏まえたうえで、リーダーに必要な力は3つあると私は考えます。自分の頭で将来を見通す「洞察力」、相手を説得するための「語る力」、そして「組織を動かす力」です。

グローバル化とデジタル革命が
生んだ新たな世界とは?

世界は大きく変わったとされます。その要因のひとつは「グローバル化」です。それまで地球は、東側の社会主義国と西側の資本主義国に分かれていました。しかし、1989年にベルリンの壁が崩壊したのを機に、ロシアや中国が市場経済に進出します。これによって市場経済の人口は27億人から60億人へと急増しました。市場が広がることは企業にとって大きなチャンスですが、同時に地球規模のダイナミックな競争が起きるようになります。

そしてこのグローバル化とともに「デジタル革命」も進みます。インターネットを使えば、国際電話なども安く済むようになります。例えばアメリカの保険会社のコールセンターは今、ほとんどがコストの安いインドにあります。そうすると、アメリカのオペレーターの賃金が下がって、インドのオペレーターの賃金は上がることになります。つまり世界が「フラット化」していくわけです。先進工業国に暮らしている私たちは、昨日と同じことをしていたらどんどん貧しくなるのです。

Yes, I can! の精神で
挑戦していこう!

対照的に、世界は今「スパイキー(でこぼこ)」になってきているとする学者もいます。トロント大学のR・フロリダ教授は、夜間に人工衛星から見た地球が20から30の灯りの塊でできていることに気づきます。これは大都市圏の灯りなのですが、そこでイノベーションの8割が生み出されているというのです。灯りの塊の中を見てみると、けっしてフラットではなく、創造性に満ちたクリエイティブな人たちがたくさん住んでいます。実は世界で一番大きな灯りの塊は、東京を中心とした地域なのです。

フラットな世界で取り残されて、だんだんと沈んでいくのを待つか。とても大変だけれどもスパイキーな世界に挑戦していくか。その人生の選択は皆さんにあります。

社会の問題には、受験勉強のように絶対的な正解などありません。偏差値だけにとらわれずに、自分がどのようなリーダーになりたいのかということをよく考えてください。その心構えとして大切なのは自分をエンカレッジ(鼓舞)することです。You can do it!(キミならできる!) Yes, I can!(やってやるぞ!)の精神で挑戦していこうではありませんか。

ワークショップ【探る・話す】

テーマは「日本経済をよくする処方箋」

ワークショップテーマは「日本経済をよくする処方箋」を考える。「何が問題なのか?」「どんな解決策がbestか?」「副作用はあるか?」「どのように実現するのか?」――これら4つのポイントを押さえて取り組んでください、と竹中先生。議論を進める参加者たちにも笑顔で声をかける。

ワークショップ【練る】

「日本経済」について考える

残り時間15分。チームの意見を一つにまとめてワークシートに記入していく。日本経済という大きなテーマに対して、どのような切り口でアピールできるかが勝負の分かれ目。図表やイラストも書き込むなど、わかりやすく伝えるための工夫も必要だ。リハーサルも入念に行って、いざ予選会へ!

ワークショップ【発表する】

予選に挑む

総勢32チームが6つのグループに分かれて予選会を競う。チーム代表者が自分たちの考える「日本経済の処方箋」を述べ、最も支持されたチームが決勝へと駒を進める。「教育格差」「貧困問題」「過疎化」など、チームによってテーマはさまざま。持ち時間2分の中で「絶対的な正解のない問題」にどれだけ迫れるかが勝負の鍵となる。

ワークショップ【決勝】

予選を勝ち抜いて、いよいよ決勝。

予選を勝ち抜いた6チームによる決勝戦。代表者が壇上に上がって5分間でプレゼンを行う。「教育改革」「少子高齢化」「財政赤字」と多岐にわたるテーマに対して、一つひとつ丁寧に講評を加えていく竹中先生。自分たちの意見を理路整然と述べるチーム、大きな身振り手振りで壇上をところ狭しと駆け回りながら聴衆を引きつけるチームなどアピール方法もさまざまだ。

ワークショップ【結果】

表彰式

「どのチームも特徴のあるいいプレゼンでした」と竹中先生。その中から「客観的な数字や証拠」を示しながら「教育制度の改革」の必要性を説いたチームが優勝に輝いた。「日本経済の処方箋という自由度の高いテーマとしたのは、自由があることの良さと難しさを感じてほしかったからです」と竹中先生。最後に表彰式と記念撮影が行われ、盛況を呈したワークショップは閉幕した。

参加した高校生の

東京都 私立 麻布高校 3年

西村 航くん

今日は竹中先生の講演を通じて、客観的な視野を持って世界を見ることの大切さを学ぶことができました。欧米諸国と渡り合うには、自分の意見を積極的に発信していかなくてはならない。普段は積極的に話す方ではないのですが、そうした問題意識を持って臨んだおかげで、ディスカッションでは自分の意見をしっかりと言うことができました。もっと早くからこのワークショップに参加していればよかったと少し後悔しています。経済や流通に興味があるので、大学進学後はそれらの学問分野を深めていきたいです。

埼玉県 私立 浦和明の星女子高校 2年

友近 萌奈美さん

最初はとても緊張していたのですが、同じチームの方が気さくに話しかけてくれたおかげで、とてもリラックスして参加することができました。ですが、経済に関して発言できるほどの知識を持っていなかったので、日頃からニュースを見ておくべきだったと痛感しています。将来は英語を生かせるような仕事に就きたいと考えています。語彙力やコミュニケーション力をもっと磨いて、竹中先生のように海外の人たちと関われるような人間になりたいと思います。

茨城県立 水戸第一高校 3年

沼田 敦矢くん

初めての参加でしたが、これだけの大人数のなかに驚くような意見を持った人たちがたくさんいてとても刺激を受けました。竹中先生の講演で印象に残ったのは、偏差値を上げるための勉強ではなくて、自分の頭で考えることの重要性を説いていらっしゃったことです。ワークショップではチームのまとめ役を務めましたが、とてもレベルの高い議論ができたと感じています。これからもこのようなワークショップや学校行事に積極的に参加してきながら将来の夢を明確にしていきたいと思います。

神奈川県 私立 鶴見大学附属高校 3年

小野 友貴哉くん

今日は経済だけではなく、僕が興味を持っている教育についてのお話もたくさんしていただけたので、とても参考になりました。とりわけ、日本の大学が世界的に見るとまだまだ上位ではないという事実には驚きました。また、経済の中で教育がどのような役割をしていて、これからの教育のあり方がどうあるべきかというお話を聞くことで、経済への興味も湧いてきました。将来は、勉強を教えるだけでなく、学力低下やいじめの問題などを解決できるような小学校の先生になりたいです。

東京都立 文京高校 2年

木村 梨華さん

初対面の人たちとの討論はとても刺激的で、自分ももっと頑張ろうという気持ちになりました。先生のお話で印象深かったのは「Yes, I can!」。私は消極的なところがあるので、自分の気持ちをエンカレッジするときにはこの言葉を思い出したいです。ワークショップでは高3生の先輩たちに助けられてばかり。でもこれからは自分が助ける側に立てるよう心がけたいです。海外で活躍する人たちに憧れているので、大学は外国語を勉強できる学部に進学しようと考えています。