東進ハイスクール 東進ハイスクール
東進ドットコム > スゴイ大先輩に学ぼう > トップリーダーに学ぶワークショップ >
TOP東進タイムズ 2019年1月1日号

金メダルを取る
アスリートの育て方

競泳日本代表ヘッドコーチ
日本水泳連盟競泳委員長
東洋大学水泳部監督
イトマンスイミングスクール特別コーチ

平井 伯昌先生

研究やビジネスの最前線を走る“現代の偉人”を講師に迎える「トップリーダーと学ぶワークショップ」。今回は、水泳指導の第一人者、競泳日本代表ヘッドコーチで東洋大学教授の平井伯昌先生をお招きし、トップアスリートの指導法をテーマに講演いただいた。北島康介選手や萩野公介選手をはじめ、「チーム平井」の門下生の多くが、オリンピックでメダリストとなっている。なぜ彼らはメダルを獲得できたのか。その指導法には、どのような秘密があったのか。多くの高校生が興味深く話を聞いた当日の模様をお伝えする。

金メダリスト北島康介選手を
中学生時代から指導

「チョー気持ちいい」「何も言えねぇ」といえば、北島康介選手の有名なセリフです。その北島選手を中学生の頃から指導してきました。オリンピックを意識したのはかなり早い時期で、彼が全国中学大会で優勝したとき、一緒に目指そうと話したのです。その結果、高校3年生でシドニーオリンピックに出場して4位、次のアテネと北京では2つずつ金メダルを取りました。高校生の頃はガリガリにやせていて、スタートの飛び込みも決してうまくなかったけれど、見事に金メダルを取る選手に育ってくれたのです。

メダリストではほかに荻野公介選手たちもみてきました。萩野君はとても冷静な選手です。リオデジャネイロでは決勝で勝つために、予選からの戦い方について緻密な戦略を組み立て、寸分違わずに実行してくれました。もちろん作戦を立てて、その通りにやれば必ず結果が出るというわけではありません。もちろん選手によって作戦の考え方を変える必要もあります。

今回の講義では、一人ひとり個性が異なる選手たちに結果を出してもらうため、私が行ってきた指導法を紹介したいと思います。

技術指導のみだと“伸び悩む記録”
水泳を通じて人間指導を重視

私の指導方針は、大きく6つに分けられます。そのうちの2つは精神面の指導です。

第1は「技術指導から人間指導へ」という考え方です。ジュニア選手のコーチを始めた頃は、選手の記録を伸ばすことを最重視していました。ところが、なぜかみんな揃って高校2年ぐらいで記録が止まってしまうのです。

そこで指導法を変えなければと模索するなかで、改めて考えたのがコーチの役割でした。コーチは単に水泳の技術だけを教えるのではなく、水泳を通じて人間育成を図ることが大切ではないかと気づいたのです。すると自然と選手自身が自己責任について考えさせるようになり、その結果選手も失敗を人のせいにしたり、言い訳をしたりしないようになります。自分の行動に責任を負う姿勢は受験勉強にも通じる考え方ですね。

これが第2の方針「精神力の強化」につながります。苦しいときでも本来の力を出すためには、精神力が必要です。この精神力は自分に言い訳をしないように心がける習慣で育まれるのです。心技体の中で最も崩れやすい心を最初に鍛えれば、たとえ体の調子の万全ではなくとも、その時点での100%の技を出せるようになります。よく「いつもどおりの力を出せばいい」といいますが、そのための土台として強い精神力が欠かせません。

“できるかどうか”ではなく
”どうすればできるのか”に集中する

第3は「明確な目標設定」です。誰をコーチするときでも最初に考えるのが、その選手の最大限の可能性であり、客観的に達成可能な最大目標を設定します。目標設定の段階でコーチが妥協してしまうと、選手が秘めている可能性を100%引き出すのが難しくなります。

最大目標が明確になれば、そこに到達するための課題もはっきりします。課題を克服するための具体的な方法を検討し、期日を区切って練習計画を立てるのです。

計画は、必ず逆算方式で考えることがポイントです。最終目標を設定し、それを達成するために必要なステップを細かく分けるのです。計画段階では、できるかどうかではなく、どうすればできるのかに集中します。その際にコーチとして心がけるべきは、まず長所を伸ばして小さくてもいいから成功体験を積み重ねること。これで選手のやる気に火がつきます。

第4は「チーム制強化」です。コーチ一人では達成が難しい課題、例えばオリンピックでの金メダル獲得などは、何人かの専門家がチームを組んで選手をサポートします。これは教科ごとに専門の先生がおられる予備校も同じシステムですね。

目標と目的を混同しない
水泳や勉強を通じて、何を成し遂げたいのか

第5は「プロセス重視」、要は途中段階での結果には一喜一憂しないことです。そうではなく、常に最終目標を見すえた上で、今やるべきことに集中する。大切なのは、成功したプロセスでの要因分析です。なぜうまく行ったのかを確認しておけば、逆に思うように行かないときに、どこが悪いのかがわかります。調子には必ず波があるので、良いときに悪いときの備えをしておくのです。

第6が「目標と目的」です。よくこの2つを取り違える人がいますが、目標とはあくまでも目的を達成するための目印です。アスリートにとっても金メダルを取るのは目標であり、決して目的ではありません。例えばハンマー投げの室伏広治さんは、ロンドンオリンピックに臨むときの目的を「東日本大震災の被災地の皆さんに勇気と希望を届けること」とし、目標を「復活のメダルを獲得すること」としていました。皆さんが大学受験で合格を目指すのも一つの目標であり、それが最終目的ではないでしょう。大学に合格してから何を学ぶのか、どのように生きていくのかが大切なはずです。

では、目的とは一体何なのか。これは人それぞれで一概にはいえないし、簡単に定まるものでもありません。自分は何を成し遂げようとしているのか、その行為の目指すところが目的です。大学に入り、学問を身につけ、長い人生で何か成し遂げる。一人ひとりに人生の目的があり、それは一人ひとり違うものです。常に自分の目的を考え続ける姿勢を大切にしてください。

ワークショップ【探る】

テーマは「自分が世界一になる(または誰かを世界一にする)ためにはどうすれば良いでしょうか」

ワークショップテーマは「自分が世界一になる(または誰かを世界一にする)ためにはどうすれば良いでしょうか」。役割分担を行い、時間配分にも気を付けながら議論を進めていく。自分の経験や実際に世界一になった人物を取りあげ、そこからトップに到達するために必要な事柄を見つけ出し、予選会へ臨む。

ワークショップ【話す・発表する】

予選会

入念なリハーサルを済ませてからいざ予選会。聞き手の興味を引くためにプレゼンの出だしを工夫する。また、自分たちの意見をしっかりと伝えるために口調や声の大きさ、目線、身振り手振りにも気を配る。さらに、第一印象で聞き手を惹きつけるワークシートの構成にもこだわりが必要だ。

ワークショップ【本選】

決勝プレゼン

決勝戦。予選を勝ち進んだ6チームが壇上でプレゼンを競う。具体的で親しみやすい例を挙げ、「当たり前のレベルを上げる」「好きという気持ちが大切」「成功体験を積み重ねる」「メンタルの強化」「自己分析・目標設定・振り返りの循環作り」など、様々な意見が出そろう。高校生の提案に感心する平井先生。

ワークショップ【結果】

優勝チーム集合写真

いよいよ優勝チームの発表。平井先生が選んだのは、身体・精神・環境の3つの観点からトップに必要な要素を分析したチーム。ワークシートのデザインや内容の具体性が高く評価された。表彰式と記念撮影のあと、「高校生ながらとても良い内容ばかりで、とても勉強になった」と平井先生から講評を頂戴し、ワークショップは締めくくられた。

参加した高校生の

東京都 私立 穎明館高校2年

山銅 心朗くん

平井先生のお話ではメンタル強化に必要なこととしておっしゃっていた「言い訳しない、させない」という言葉が印象的でいつも言い訳ばかりの自分に気づきました。将来は僕も平井先生のような指導者になりたいと思いました。

神奈川県立 海老名高校2年

神谷 茉莉さん

「体のコンディションは上がらなくても心のコンディションはいつも100%でなければいけない」「目標設定を細かく持って大きな目標に近づけていくことが大事」だという平井先生のお話が心に響きました。グループ・ディスカッションでもいろんな意見を聞くことができて楽しかったです。

東京都 私立 駒澤大学高校3年

井坂 友香さん

将来は保健体育教諭になって陸上競技の指導者になりたいので、コーチング学やトレーニング学に興味があり参加しました。日々の挨拶や勉強をしっかりする、感謝の気持ちを持つといった「当たり前の徹底」が個人競技でもチーム競技でも大事なことだと改めて感じました。