大学受験|志望理由書・面接


一目でわかるハンドブックシリーズ 一目でわかる面接ハンドブック



~「守りの面接」から「攻めの面接」へ

 本書は、おそらく書店に並んでいる他の面接対策本とは根本的に考え方が異なっています。それは、いわゆる「面接対策」にありがちな「清潔感のある服装、正しい敬語、想定問答の暗記」といった安全策をあまり重視しないという点にあります。
 もちろん、面接に際して好感の持てる装いをし、きちんとした言葉遣いをすることは大切なことです。しかし、このような「大人に気に入られるように外面を整える」という発想は、すでに前時代のもので、現代の大学受験、あるいはそもそも人への評価という点ではあまり効果がないと考えているからです。
 一つの例を考えてみましょう。次の問題は、ある大学の小論文(というよりも表現力試験といった方がよいでしょう)で実際に出題されたものです。

問 Tシャツ・ミュージアム、すなわち、その歴史や文化を紹介する専門
美術館・博物館を、自由な発想に基づいて計画して下さい。建築物や展示
方法の特徴を具体的に記したプランでも構いませんし、たとえば「映画作
品に登場するTシャツ」といったような、そのミュージアムで開催する展
覧会の企画を行っても結構です。また、近年、単に作品や所蔵品を陳列す
るだけでなく、観客自身に作品制作などを体験してもらうことで展示物の
持つ意義を直感的に理解させる、いわゆるワークショップを実施するミュ
ージアムも増えてきました。そうした観客向けの催しを企画することも可
能です。
なお、資金や技術の制約を配慮する必要はありません。時間的ないし空
間的制限も設けません。         <東京工芸大学―推薦入試>

 ここで考えたいのは、この問題の解答ではありません。ポイントは、このような問題を出す出題者(大学の教員)のマインドです。ここに見られるのは、受験生の自由な発想、個性を問いたいという強い意欲に他なりません。

 さて振り返って、このような問題を出す出題者が並ぶ面接会場に足を運ぶ際に、「身なりを清潔にし、敬語をきちんと使い、志望理由を暗記していく」ということを念頭におき、実際にそれを実行したとして、どんな意味や価値があるでしょう。おそらくは、ただ単に印象の薄い受験生の1人として、面接官の記憶の彼方に消えていくだけです。
 結局、私たちが普通にイメージする保守的な面接対策は、高校入試レベルのものに過ぎません。数年後の就職活動と連なる大学入試の面接試験において、このような「守りの面接」が通用するのは、絶対に落ちないといわれる指定校推薦入試の面接や倍率1.0倍以下の試験だけだと断言できます。
 
 大人に気に入られるように自分の心を繕うのはもう止めましょう。本書が提案するのは、「語るべき実質」を持った「心」の養成――「攻めの面接」に他なりません。ぜひ本書の内容をよく味わって読み、一つの生き方の指針を作り上げる醍醐味を体感してもらいたいと思います。

河本敏浩

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