中高一貫ハイステージ英語1

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はじめに

 「中高一貫の英語」とはどんな英語であろうか。それは何か「特別な英語」を指すのだろうか。私はむしろ、「特別ではない英語」を思い浮かべる。この「特別ではない英語」を学ぶ姿勢、それが外国語を学ぶうえで、特にそのはじめの段階で大事なのである。本書はそうした思いを大事にしながら書いた本である。
 英語を学ぶ目的はどうしても「試験や受験で点数を取るため」という類のものになりがちである。しかし「試験のための英語」、「受験のための英語」という英語は存在しない。現実に存在するのは、ただの「英語」である。
 同じように考えれば、「中高一貫の英語」という英語も実体を持たない。しかし、やや逆接的ではあるが、6年間という長い時間の中で、定期試験とか受験といった細分化された近視眼的な目的にとらわれずに、ただ厳然と1つの外国語として英語に立ち向かわんとする姿勢、そうした姿勢で取り組まれる無色透明の「英語」を「中高一貫の英語」と考えてはどうだろうか。
 本書はそういう意識を持って英語を学ぼうとする者のための参考書と問題集のセットである。試験や受験に出るか出ないか、というようなことは外国語の勉強の本質ではない。本書で学ぶ諸君には、いわゆるテストでは点が取れるが、自分で実際に英語を使おうとするとちょっと、というような中途半端な状況に陥ってほしくない。書きたいことが書け、言いたいことが言え、聞きたいことが聞け、読みたいものが読める、そうした骨太の英語力を身につけてもらいたい。そのためには栄養価の高い教材を用いて、正攻法で着実な歩みを続けなければならない。

■4つの特徴
 執筆にあたっては次の4つのことを大切にした。
 1つは本書1冊で単語力、文法力の両方を身につけられるようにすること。単語力、文法力は外国語を学ぶうえで幹となる知識である。それらを別々に学ぶのは非効率的である。本書では「単語ノート」でまず必要な単語や表現を覚え、そこで覚えたものがその後読み進めていく文法の説明や問題集の問題の中に必ず出てくるようにした。「単語ノート」の単語を本書にちりばめることで、外国語の勉強で大切な「繰り返して学ぶ」機会を本書の中で経験してもらうようにした。そうして単語力をつけながら文法を学ぶ。そういうからくりにこだわった。
 2つ目は、練習問題の充実である。単語力も文法力も良質な問題による演習が絶対に必要である。どれだけ演習したか、そこで差が出る。別冊の問題集は初級から上級へレベル別に問題を作成し、学んだことが無理なく確認できるようにした。十分に活用して、文法の知識を堅固なものにしてもらいたい。
 3つ目は、英語の実際の用例をできるだけ多く覚えられるようにしたことである。各課には、その課で学ぶ文法事項を含んだ例文が複数挙げられている。これらを覚えるためにCDと例文集がある。CDには単に英文の朗読のみならず、本文の訳も吹き込んだ。本文の訳が読み上げられてから英文の朗読が始まるまでのポーズに、覚えた英文が何も見なくても口をついて出てくるようになるまで反復学習をしてほしい。また視覚的にも例文の暗記を助けられるようにと例文集もつけた。さらに例文だけでなく、文法事項を反復することわざや会話表現も音声つきで盛り込んだ。覚えている例文や表現が多いほど強いことはない。頭にたたき込んでほしい。
 4つ目は、本質重視である。昔からの文法書の記述を参考にしながらも、あくまでも私自身が教室で授業をしているときの実情を最大限に考慮しながら、一言一言、言葉を選んで書いた。試験に出る出ない、という視点で考えたら重んじられない項目も、英語を学ぶうえで必要とあれば、臆することなく紙幅を割いた。
 本書が、高い志を持って英語学習に取り組まんとする生徒諸君の、堅実な英語力の養成に役立つことができれば幸いである。 

2008年夏
青柳良太

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