大学受験|世界史

名人の授業


名人の授業シリーズ 荒巻の新世界史の見取り図 中

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『見取り図』を“バイブル”と思うことなかれ

 『上巻』の「まえがき」にも書いたことですが,本シリーズは大学受験で必要な用語を網羅することを最初から放棄しています。だからといって,なるべく掲載する用語の数を増やさないようにしているわけではなくて,無理をして載せてはいないだけなのですが。もちろん,用語を盛りだくさんにすることは可能です。
 では,それをしないのはなぜか?

 【答】本が分厚くなるから
 
 違います。別にページ数が増えることをさけているわけではありません。それに用語を増やすだけなら,ページはさほど増えません。

 【答】想定する読者全員が大学受験をするわけではないから

 これも違います。ぼくは,受験勉強をわりといいものだと捉えています。大学に合格するためだけの勉強はくだらない。でも,受験勉強は大事であるという立場です。
 ぼくのことを「とても歴史のことをよく知っている!」という人がたまにいます。もし,それが正しいとすれば,ぼく自身が受験勉強を突き詰めていったからです。持っている知識は,たかだか大学の入試問題を解くことができる程のレベルでしかないのだから。

 生徒から次のような質問を受けることが,たまにあります。
 
 「先生,読んだらいい本を紹介してください!」

 まぁ,勉強しようと思っているのだろうから,「何に興味あるの?」「それについての基礎知識は?」「こういう人,知ってる?」などと聞いたりします。
 生徒から受ける質問でイヤだなと思うのは,こんな質問です。

 「先生,何を読んだら全部のことが載っていますか?」

 実際,こんなようなことも聞かれました。

 「先生は何を読んだらあんなにいろんなことが分かるんですか? 何か1冊,いい本を紹介してください」

 質問してくれた受験生は,知識を得るということをまるでドラえもんの四次元ポケットのように困ったら何でも出てくる(載っている)ものがどこかにあって,それを見つけた者勝ちのように思っているようでした。
 多くの大学生は,大学生活を終えるにあたって卒業論文を書くことになるでしょう。大学の先生たちにしてみれば,20歳を超えたばかりの“ ひよっ子” にたいしたものが書けるわけがないことくらい分かっています。卒業論文を書くにあたって,「この学生は何冊くらい本を読んだのかね」という痕跡を確認する程度でしょう。
 オリジナリティとは,徹底してまねること。ただし,本1冊をまねるのではなく,より多くのことからまねる。そして,より多くのものをまねていく中から,整合性の取れないものを自分なりにつなぎ合わせ,活用していく努力と工夫こそが,自分自身のオリジナリティになるのです。
 ── 分かってもらえたでしょうか? 『見取り図』において多くの用語を網羅することを放棄した理由が。「この参考書を1冊読めば大学受験はオッケ~!」みたいな“ おバカさん”を排除したいのです。学校の先生が配布してくれるプリントも教科書も『見取り図』も含めて,とにかくたくさん読んでください。
 ほかの学習参考書と比べたら,載っていない用語があるのは確かですが,どんな学習参考書にも載っていないことが書いてあるのも『見取り図』です。
 ということで,問いの「答え」は冒頭の大見出しに書いてありますよ。
 では,『中巻』に入りましょう。『上巻』以上に,大学受験に関係の無いことが盛りだくさんです。でも,「学問の基本だよ」とぼくが思っていることがちりばめられています。
 『中巻』は,大きく「ヨーロッパ」と「アジア」に分かれます。好きな方から,興味や関心のある方から読んでいただいて結構です。
 これまで本シリーズで学習した内容には,参照ページを示してあります。面倒くさがらず,忘れていることがあれば丹念に読み直してみてください。ぼくの趣味であるバイクになぞらえれば,「ブレーキをしっかりかけることができるから,アクセルを開けられる」── ゆっくり進むことが,実はもっとも早いのです。噛み締めながら読み進めてくださいね。

荒巻 豊志

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