中高一貫 ハイステージ英語3

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 現場で高校生の授業を担当していると、生徒から当然その時期には備わっているべき語彙と文法の基礎力が身についていないことを嘆く声が聞かれることがある。実際、かなり高度な読解力を有する生徒であっても、その読解力には見合わないレベルの知識の欠如によって、思わぬ読み違いをしていることがある。そうした生徒が直面しているのは、高度な知識を持っている一方で基礎的なことが抜けている、といった知識のむら、あるいは知識のアンバランスとでも呼ぶべき現象である。
 中高一貫の6年間という期間における理想的な英語の勉強とは、基礎的な(=簡単なという意味ではない)語彙と文法の知識を中学校時代のうちにしっかりと定着させ、その後はその知識を前提とした読解、作文、口頭でのやり取りといった英語の実際的な使用に速やかに移行することであろう。それこそが生徒の堅実な英語力の養成につながるのだと考える。こうした考えから、将来的にずっと生徒を力強く支える基礎的な英語の語彙と文法の知識を無理なく、そしてアンバランスが生じぬよう中学生に身につけさせることができ、さらに高校生、大学生、社会人になって知識を再確認するために読み返しても見劣りしない、そういう書籍があれば、とずっと感じてきた。本書はそうした現場で感じる思いを形にした参考書と問題集のセットである。
 既刊で述べたことの繰り返しになるが、「中高一貫の英語」という英語は何か特別な英語を指すものではない。現実に存在するのはただの「英語」である。6年間という長い時間の中で、定期試験や受験といった細分化された近視眼的な目的にとらわれずに、1つの外国語として英語に立ち向かわんとする姿勢、そうした姿勢で取り組まれる無色透明の「英語」を「中高一貫の英語」と考え、3冊目も執筆した。


4つの特徴
 執筆にあたっては既刊同様、次の4つのことを大切にした。
1つ目は、外国語を学ぶうえで幹となる単語力、文法力の両方の習得である。単語ノートでまず必要な単語や表現を覚え、それがその後読み進めていく文法の説明や問題集の問題の中に必ず出てくるようにした。そうして外国語の勉強で大切な「繰り返して学ぶ」機会を本書の中で経験してもらうようにした。
 2つ目は、練習問題の充実である。単語力も文法力も良質な問題による演習が絶対に必要である。別冊の問題集は初級から上級へレベル別に問題を作成し、学んだことが無理なく確認できるようにした。十分に活用して、知識を堅固なものにしてもらいたい。
 3つ目は、英語の実際の用例の充実である。各課には、その課で学ぶ文法事項を含んだ例文が複数挙げられている。これらを覚えるためにCDと例文集を付けた。覚えた英文が何も見なくても口をついて出てくるようになるまで訓練してほしい。さらに例文だけでなく、文法事項を反映することわざや会話表現も音声つきで盛り込んだ。覚えている例文や表現が多いほど強いものはない。頭に叩き込んでほしい。
 4つ目は、本質重視である。3冊目となる本書には完了形、分詞、関係詞、仮定法といったかなり高度な、しかし上級の英語の勉強を進めるうえで欠かすことのできない重要な文法事項も多く含まれる。そうした文法事項の学習で大事なことは、訳し方の暗記といった表面的なことではなく、根本から仕組みを理解することである。そのために一貫して私なりにできる限りかみ砕いた説明を心がけた。

 最後に、1冊目、2冊目に続いてここに3冊目が完成したのは、さまざまな方々の献身的なお力添えによって成し遂げられたものである。特に既刊に引き続いて丁寧に校閲してくださった有吉侑佳様、同僚のチャールズ・ヴァーコウ先生には多大なるご協力を賜った。この場を借りてすべての皆様方に心からお礼の言葉を申し上げたい。

 本書が、高い志を持って英語学習に取り組まんとする生徒諸君の、堅実な英語力の養成に役立つことができれば幸いである。

2011年春
青柳良太

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