大学受験|物理

一問一答

高速マスターシリーズ


物理一問一答【完全版】

message.gif

 本書は,入試問題が解けるようになるための橋渡しとして,「わかる」を「できる」に結びつけるシンプルな問題集です。物理法則自体の成り立ちを説明する原理的な立場に偏り過ぎないように注意しながら,その物理法則が一体何に使えるのかという実用的な立場で書きました。

 物理法則は覚えているだけではいけません。それを用いて何を求めうるのかを知らなければ,法則を知っているとは決して言えません。使い方を知るためには問題演習が必要です。しかしながら,多くの入試問題はテーマが絞られておらず,そのままでは学習に適しているとは言えません。入試問題は選抜のための問題ですから,多くの要素を問いたいわけであり,テーマが絞られないのは実に自然なことです。また,試験の得点が,学習水準を段階的に表すにあたって適切な目安となるように作られるのが理想ですから,単に暗記した公式を適用するだけの悲しい小問もときどき見かけます。入試問題は選抜のための道具であり,学習のための道具ではないのです。

どんな難問も基本的でシンプルな問題の組み合わせで出来ています。私は解法の取っ掛かりである「問題文から式を立てる」能力を養うことに重きを置き,効果的な演習ができるよう,以下の3点を意識して本書の執筆にあたりました。


1.入試問題を目的直結型のシンプルな構図に分解し,1問1テーマに絞る。
2.表現を統一しつつ,現象を想像するために必要な最小限の文章に差し替え。
3.計算が煩雑なだけの「これ物理じゃなくて数学じゃないかな」という問題は扱わない。


物理は単純な暗記では全くできるようになりませんが,核になる典型的な現象と立式のパターンならあります。ここに一問一答として用意したのはそのような現象の記述の様式として最小限,頭に入れておくべきものばかりです。網羅性も重視しているため,決して易しい問題だけというわけではありませんが,その意味で「物理の始まりの書」であるわけです。式が立てられなければ何も始まらない。まずはここからはじめましょう。

 物理は考え方を用意しておく学問です。試験会場にて思いつきで解答するものではありません。問題を解くための考え方が自然に出てくるようになるまで赤シートを重ねて外す,を繰り返して下さい。これは場所を選ばず,電車の中でもできることです。勿論,理系には手を動かして身体で体得するべき計算トレーニングも必要です。本書の中で【計算】と印のついた部分は,机に向かってちゃんと手を動かして追って下さい。
 すでにある程度の物理の見識を持っている方においても,未習分野の効率的速習に効果を発揮することと思います。物理は全体を一通り学ぶと見渡しが良くなり,さらに世界が鮮やかになるという特徴があります。力学,熱,波動,電磁気学,原子と,異なる分野では支配法則も異なりますが,一通りを学習すると,物理の世界で変わらぬもの~分野をまたいだ一貫性~が見えてくるはずです。

 本書にはねこのデザインが多く用いられています。古典力学を生み出した人類史上最高の頭脳,孤高の天才アイザック・ニュートンは生涯にわたり女性を愛することはなく,彼の愛情はねこだけに注がれたと聞きます。また,世界的に有名な量子力学の例え話に「シュレーディンガーのねこ」という話があります。物理とねこには親和性があるに違いありません。しかし,そんなことはどうでもいいのです。本書のデザインにねこが重用される理由,それは,私が無類のねこ好きだからです。あなたがこれを読んでいる今日もどこかで,私は道端を歩いているねこに声をかけているのではないかと思います。

2018年9月 三宅唯

閉じる