大学受験|世界史
共通テスト対策
東進 共通テスト実戦問題集 世界史B
◆本番と同レベル・同形式へのこだわり
「要領よく学び,効率よく得点する」ことが,果たして良いことかどうかはわからない。ただ,本書を手にしてくれた諸君は,少なくとも共通テスト「世界史B」で効率よく高得点を取ろうという思いで一致しているはずだ。そのためには,本番と同レベル・同形式の模擬テストや過去問で現時点の自分の実力を客観的に知り,それに応じて今後の学習方針を立てていくのが効果的である。また,共通テストに特徴的な資料問題については,良質な問題に何度も接して実力を養っていくのが理想的である。
しかし,残念ながら共通テストの過去問はわずかで,世間に出回っている本番レベルの問題集も数えるほどしかない。全国の受験生が同条件とはいえ,やはりどう対策したらよいのか焦るのも無理はない。
そこで,この問題集を執筆するにあたり,不安を抱く受験生の救世主となれるよう,本番と同レベル・同形式・同分量のテストを4回分そろえることにこだわり抜いた。そして,たかが4回分かもしれないが,その4回分のテストにじっくり取り組み,解説をしっかり理解すれば,高い成果が期待できる仕掛けを随所に凝らした。
◆一切妥協のない完全オリジナル問題
私自身,共通テストの本質は完璧に把握できていると自負するが,実際にそれを忠実に再現しようと作題を始めてみると,かつてのセンター試験と比べて,1問作成するだけでも桁違いの労力とセンスが必要だと痛感させられる。もちろん本番のテストと同じクオリティを追求するなら1回のテストの中で出題内容の重複があってはならないことは言うまでもないが,本書では4回のテストによって共通テスト「世界史B」の全範囲を網羅的に出題しようと構想したため,各回相互の内容のバッティングも極力避けることを意識した。ただでさえセンター試験以上に使える用語が限られる中,資料によって出題内容も制約される――あちらを立てればこちらが立たず――地下鉄網が複雑に張りめぐらされた東京の地下空間で,わずかな隙間を見つけながら新たな地下鉄を通していくような境地に幾度立たされたことか。
挫けそうになることも多々あったが,受験生諸君が最高の問題集を待ち望んでいるはずだという思いが前に進む原動力となった。そして,完成を目の前に足踏みしてしまったときには,東進ブックスの優秀なスタッフの皆さんが,資料の原典からの翻訳や解説の注釈の執筆などをサポートしてくださった。心より感謝申し上げたい。こうして時間はかかったが,おかげで一切妥協のない渾身の一冊を完成させることができたのである。
◆もう何も不安はない
以上のような苦労話を長々とお聞かせしたのは,何も諸君にねぎらいを求めたいからではない。出題者側の手の内を見せることで,共通テストというものが,出題方法(問題の見せ方)は無限にあれど,着地する解答は物理的にかなり限定される性格の試験だと再認識してほしかったのだ。実際にこの問題集を解き進めるうちに,具体的に何をどこまでどのように学べばよいのか自ずと明らかになり,諸君の不安が払拭されていくことは間違いない。
共通テストでは,問題文や資料文を緻密に読み込まなければならないが,そのことにより出題者が歴史学習を通じて伝えたいメッセージを受験生が直接受け取るという効果を生んでいる。当然,本書もそうした点を強く意図し,「歴史をどうとらえるか」「歴史を学ぶとはどういうことか」という問題意識で貫かれている。世界史学習の楽しさや資料を読む面白さから出発して,何のための歴史学習なのかということにまで思いを馳せてもらえれば,著者として光栄極まりない。
諸君の健闘を祈る。
2022年10月
清水 裕子