大学受験|日本史

名人の授業


「なぜ」と「流れ」でおぼえる日本史年代暗記

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年代は暗記するものではありません。
年代は時代を掴つかんで日本史を理解するための羅針盤となるものです。

鎌倉時代の歴史書『愚管抄』(慈円)が著された年,わかりますか?
多くの受験生は知らない年代です。
でもこの年代は簡単に覚えられるのです。
だからといって,この年代を「丸暗記」してはいけません。
なぜ慈円が『愚管抄』を著したのかが理解できていれば,
年代は自動的に頭に入るからです。

1219年,源実朝が鶴岡八幡宮で暗殺されました。
源氏の正統が滅んでしまいます。
これで鎌倉幕府も終わりかと思うと,そうではありません。
2代執権北条義時は,摂関家出身の藤原頼経を将軍に招き,
鎌倉幕府を存続させようとしたのです。
これに反発したのが,幕府と対立していた後鳥羽上皇です。
後鳥羽上皇は,武士を集めて北条義時追討の兵を上げようとします。

一方,慈円は,後鳥羽上皇に思いとどまってほしいと考えます。
武士が台頭し,もう時代は変わってしまった。
戦いを起こせば,朝廷にとってかえって不利になる。
そう考えた慈円は,後鳥羽上皇による鎌倉幕府討伐の計画は,
歴史の必然や道理に背くものだと非難する内容を『愚管抄』に記します。
そんな慈円の思いもよそに,1221年,後鳥羽上皇は承久の乱を起こします。
そして,幕府軍に惨敗し,隠岐に流されてしまいました。

『愚管抄』が著された年は,1220年です。
これは,源氏が滅んだ1219年の翌年,承久の乱(1221年)の前年です。
前後の出来事の年代がわかっていれば,自然とついてきますよね。
このように,歴史上の出来事は,前後の出来事とつながっています。

その出来事はなぜ起こったのか。
なぜ翌年に起こったのか。
なぜ2年後に起こったのか。
なぜ前の年なのか。
そこにはすべて因果関係──「なぜ」と「流れ」があるのです。
それぞれの出来事のつながりを理解すれば,自然と年代もつながります。
年代を出発点にして,どんどん歴史事項を頭に入れることもできます。
つまり,年代を通じて「なぜ」と「流れ」を学ぶことによって,
因果関係を捉えながら極めて正確に歴史が理解できるわけです。

それなのに,多くの受験生は,この「なぜ」と「流れ」を無視して,
年代の数字だけを史実を無視したゴロ合わせで「丸暗記」しています。
これは,不毛な暗記どころではありません。
年代を手がかりにせっかく因果関係が理解できるのに,
その因果関係を理解することまで無視してしまう,
単なる数字の記憶になってしまうわけです。

私は30年間,「年代暗記の本は書かない」ことをポリシーとしてきました。
しかし,受験生は,あまりにも不毛な年代暗記に陥っています。
この受験生の窮状をいつまでも無視することはできません。
また,近年の入試では「なぜ」と「流れ」の理解が一層重視されています。
そこで,全く新しい年代暗記の本を作ることを決断しました。
本書は「年代暗記本の決定版」ともいえます。
みなさん,これで不毛な年代暗記に終止符を打ってください。
年代を軸にして,「なぜ」と「流れ」を理解し,
歴史事項を関連づけながら頭に入れていけば,
日本史はスラスラと頭に入ります。
なぜならば,私もそうやってすべて頭に入っているからです。

2022年11月
金谷 俊一郎

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