大学受験|公共

名人の授業


清水の公共をはじめからていねいに

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この本を読むにあたって

●「公共」という科目について
「公共」は、2022 年度から高校での学習が始まりました。18 歳への選挙権や成年年齢の引き下げなどを受け、これからの社会を他者とともに主体的に担っていくために、現代社会の様々な課題を知り、考え、主権者として自ら選択・判断する「思考方法」や「観点」を養う科目です。
 
共通テストでは、2025 年度から科目が再編され、新たな選択科目の中に①「地理総合,歴史総合,公共」、②「公共,倫理」、③「公共,政治・経済」が含まれます。「公共」は、①では大問4つで、配点は50 点(2科目を選択)、②と③では大問2つで、配点は25点です。

「公共」は、主に①現代社会分野( 文化と文明、現代社会の特質など)、②倫理分野(哲学・思想、青年期の課題など)、③政治・経済分野(民主政治、人権、選挙と政党、国際政治、金融・財政・市場経済、日本経済、国際経済など)から構成されている融合科目です。特に、共通テストでは、社会で起きている出来事の背景や本質的な理解が問われます。制度・仕組みの「定義」「理由」「問題点」「対策」の4つのポイントとともに、実際の社会の問題がどのような切り口で出題されるのかを知ることが大切です。

本書では、問われるであろう「公共」的な課題をどう考えるかということを念頭に、テーマ別に概説し、例題演習とそのポイント解説で理解を深めていきます。

さらに、<清水の講義:「公共」の視点>では、「公共」という科目の意義・目的を踏まえた“紙上講義” を行います。これが本書の最大の特長です。

●統計データと時事対策
特に、「問題点」や「対策」を考える際には、統計データの裏づけが重要です。統計データの読み取り問題はもちろんのこと、データそのものが現在の問題点の原因や対策を考えるための重要な情報になります。例えば、

「国に借金(債務)がたくさんあると財政危機といわれる。なぜ“危機”なのか?」

について、考えてみましょう。

国の借金( 債務)なんて、あまりに大きい金額なので、なかなかイメージしにくいと思います。そこで、例えば現在の国の収入(税収など)や経済力(GDP など)に占める割合から、借金を返していけるか、借金に耐えられるかという観点で考えると、“危機” の程度がわかります。また、同じ“ものさし”から他の国との比較もできますね。結果、「どのくらい危機的なのか?」が見えてくるのです。

出来事を単に覚えるのではなく、いくつかの統計データを見て、そのときに何が起きたかを理解しておくことが大切です。例えば、1997~98 年にアジア通貨危機が、2008 年9 月にはアメリカに端を発したリーマン= ショックが起こりました。当時の主要国の「経済成長率の推移」に関する統計データを見れば、そのときの経済( 景気)の好不調を実際に見て取ることができますね。

このように、時事的な事柄を正確に捉えるうえで、統計データは大変重要です。知識として丸暗記するのではなく、それに関する統計データをしっかりと見ておくようにしましょう。

●本書の特長
入試本番での実戦力と得点力が効率的にアップする本書の特長は、以下の通りです。

(1) 基本事項と時事問題・テーマの融合
各節で取り上げているテーマは、基本事項や重要なポイントです。過去問などをもとに共通テストで求められる力を想定しています。「新たな出題傾向や時事的なテーマには対応できないのでは」という不安は無用です。

(2) 時代の流れの中で思索のテーマを理解し、比較する
源流思想、中世・近代・現代と時代ごとに思索のテーマがあり、その解決を目指す哲学や思想が生まれています。まず、歴史的な流れに即した理解を図ります。
 加えて、「自由」「幸福」「責任」「義務」「正義」「公正」などについて、時代を、洋の東西を超えて横断的に比較することが大切です。共通テストでは、類似点や相違点を比較する問題が得点差を生みます。

(3) 統計・資料データ問題にも対応
 共通テストでは、統計・資料問題が大きな得点源になります。本書では、入試で狙われるそれらの例題も掲載しています。複雑でわかりにくい内容は、図表やフローチャートとして自然に理解できるように工夫しました。
 統計・資料問題を苦手とする受験生は多いです。数字を覚えることが重要ではありません。制度・仕組みを理解した上で、「現実にはどうなっているだろう」と考えるときに必要となるのが統計・資料です。経済成長率や完全失業率の推移、貿易収支が黒字か赤字かなどのデータをチェックして現状を理解するのです。

(4) 理由・問題点・対策など背景や流れを重視
 本書は、制度・仕組みがなぜ作られ、対策がどのように行われているのかといった背景や流れにこだわって内容をまとめました。それらの把握が攻略のカギとなるという筆者の考えが込められています。

(5) 清水の講義:「公共」の視点
 各テーマで学んできたことをまとめながら、「公共」の意義・目的を踏まえた“紙上講義”を行っています。学習した知識を実際の生活や社会・世界につなげることを意識して語り下ろしました。新課程入試で最も重視されるポイントになります。ぜひ熟読してください。

 「公共」の学習は、興味を持つことが第一です。ニュースで社会の大きな動きを知ったら、「何でこんなことが起こっているんだろう」「背景にある思想はなんだろう」と考えてみましょう。例えば、少子高齢化の問題はなぜ起きているのか、どうすれば解決できるのか。現実に起きていることの原因を探究する面白さを知り、その能力を高めてほしいと思います。

本書刊行によせて
清水 雅博

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