日本史
世界史
地理
文系数学
理系数学
物理
化学
生物
東大英語はかなり特殊です。その特徴はなんといっても量です。120 分間であの量を解き切るのは初学者には相当厳しく、解き切るには英語力だけでなくそれ相当の「戦略」が必要となります。その「戦略」についてまとめたのがこの章です。英語は得意だけど点数があまり伸びない、単語は覚えて文法もやったけどなかなか模試や過去問で点が取れない、そういった人のための戦略をまとめました。
章立てとしては、1. 英語学習にあたってのポイント 2. 東大英語の大問別戦略 3. 東大英語の概略的戦略、となっています。英語の学習があまり進んでおらずセンターレベルが危ういという方は初めの「英語学習にあたってのポイント」を参考にして、まずは英語力を上げることに専念しましょう。
※ 2015 年度より英語の試験にマークシートが導入され、1B やリスニングなど記号問題はすべてマークするようになり、それに伴ってマークミスの確認などの時間が発生します。普段から演習の際にマークシートを用いるなどして本番で慌てないように対策をしましょう。
英語I・II、リーディングから出題。ただし、試験の一部分にリスニングを含む。
1979年以降、一貫して大問5題構成をとっている。
東大英語は特殊とはいえやはり英語であることには変わりありません。当然英語力が必要となり、その必要となる水準もかなり高いです。そこでまずは基礎学力をつけるにあたってのポイントを7つほど挙げたいと思います。
英語力にかかわらず、東大を目指すのであれば必ず過去問を一度でよいので見てください。本格的に受験勉強を始めるときにまず過去問を見てみましょう。繰り返しになりますが東大英語はかなり特殊です。最終的に要求されているものを必ず確認しましょう。最初は30点も取れないという人もいるでしょうが問題はありません。自分はまだ英語力が低いからといって東大の問題から逃げていると、勉強の方向性を間違うことになりかねません。
時間がないからといって文章を読み飛ばしてしまう人がいますが、それは絶対にしてはいけません。東大入試の長文問題は、ご存知の通りかなりの分量があります。そのような長い文章を読み飛ばしていては、絶対にどこかで本文の流れがわからなくなり読み直す羽目になるので、結果的に大きな時間のロスになってしまいます。
こうした読み飛ばし癖はまずはつけないことがとても大切ですが、既にその癖がついてしまっている人もいるかもしれません。そういう人は、普段の学習からじっくり文章を読むように心がけて、その癖を直すようにしてください。一つの文を完全に理解してから、次の文に進むくらいのペースでもよいかもしれません。
また、勉強の初期段階で長文を読み切るのにかなり長い時間がかかってしまう人も、スピードについて心配する必要はありません。演習量をこなしていけば、内容を理解するスピードは自然と上がってきます。そして気づいたときには、読むスピードは格段に上がっていることでしょう。
文法の勉強がおろそかになっている人がたまに見受けられます。ここで言う「文法」というのは、第4問Aで問われるようなモノのことではなく、記述模試の文法問題やセンターの問題で問われるようなモノのことです。特に進学校の人には、こういった暗記的な部分を苦手としている人が多いです。
しかし、文法に穴があるままで本番を迎えてしまうと、本番でどんどん点数を落としてしまいます。きちんとした文法が身についてない状態では、しっかりした文章を書くことも難しいですし、構文把握力が問われる第四問の和訳、さらには長文読解、特に第五問の勉強で苦戦します。英語の全ての部分に響いてくるわけです。
文章の難易度がそれほど高くないからといって、東大は文法を軽視しているわけではありません。むしろ極めて重視していると思ってよいでしょう。思うに、世間の英語教育が文法を軽視する傾向にある現在、それに対して疑問を投げかけるという意味もあるのでしょう。事実、東大の英語教授はあるインタビューにおいて、文法と読解中心の英語学習への再評価という点を強調していました。
では、具体的にどう対策すればよいのでしょうか。まずは学校の英文法の授業を大事にしましょう。それで不足を感じるなら文法の参考書で一通り文法をおさらいする時間をとってもよいです。参考書はそれほど詳しいものでなくても十分です。時期としては、できるだけ早いほうがよいので、高2中に完成させておきたいところです。遅くとも高3の夏休みまでには完成させましょう。それに加えて、問題を解くことも忘れてはいけません。学校で文法の問題集が配られるなら、それで十分でしょう。正直、参考書間でそこまで差があるものではありません。一度、1冊しっかりとやることが大切なのです。もしそういったものがない場合、文法の問題集は市販されているので、それを使って演習しましょう。最後の仕上げとしてセンター試験の文法問題で習熟度を確認するのもよいかもしれません。
こうした勉強を一度経験しておくことは、二次試験だけではなくセンター試験にもつながります。騙されたと思ってやってみてください。
発信型の英語という言葉がよく言われます。単に読めるだけではなく、書いたり話したりして自分の考えを表現する能力が重要視されるようになってきているのです。英語で話す能力は大学入試で問うのは難しいですが、書く能力は答案に実際に書かせるという形で比較的容易に測ることができます。だから、ほぼ全ての大学入試で英作文が出題されるのです。特に近年の東大入試では、英作文の問題は全て自由英作文となっているので、書くべき内容は自分で考えなければなりません。その点、他の大学よりも発信する能力を重視していると言えるかもしれません。
ところで受験生の中には、自分で英文を書くのを面倒くさがって、答えをすぐに見てしまう人がいます。これは絶対にしてはいけません。
英語をよく理解するには、自分で使ってみるのが一番効果的です。その「使う」というのは、英語を実際に書いてみるということです。受動的に読むよりも、書いてみたほうが文法や語のニュアンスについてわかるところも多いでしょう。
英作文の勉強の際は必ず自分で書くようにしましょう。
これもかなり大切なことです。したがって、和訳の問題を解くときには意識してもらいたいのですが、構文をきちんと把握しないまま雰囲気で訳してしまう人がいます。構文を把握できていないのは、解答を見れば一目瞭然です。非常に印象が悪いです。
また、英語の構文を自然な日本語に訳せないからといって、「これでも構わないだろう」と勝手に「意訳」をしてしまう人もいます。しかし、本人は「意訳」のつもりでも英語の構文にそぐわない訳になってしまっていうことがあり、そうなると先の例と同じで印象は悪くなります。構文は意識して崩さないようにする、その上での適切なこなれた和訳が必要なのです。
英語というのは、数日触れないだけで一気に読むスピードが落ちてしまうことがありえます。毎日1ページ程度の英文を読む、英作文を一つ書く、10分でもよいので英語を聴くといったことを習慣にして、怠らないようにしましょう。
しかし、英語の場合、数日触れないだけで一気に読むスピードが落ちてしまうことがあり得ます。毎日 1 ページ程度の英文を読む、英作文を一つ書く、10 分でもよいので英語を聴くといったことを習慣にして、怠らないようにしましょう。
英語の長文を読んだ際、その内容をすぐに忘れてしまってはもったいないです。なぜなら、入試に出題される文章の展開は似通っているものがあるからです。「前に読んだことがあるような文章だな~」と感じる文章が多いはずですので、自分が読んだ文章の内容を頭に留めておけば、次に似たような文章に当たったときに展開が予測できるようになります。
また内容を覚えておくと、自由英作文で意見を問われたときに、そのまま使えるときもあるでしょう。
これらのことはとても基本的で英語の学習全体を通して非常に大事になってきます。
文系だから数学は苦手。大学に入ったら数学は使わない。そもそも数学がある大学なんて東大をはじめほんの一握り……!
そんな受験生の悲鳴を自分の受験時代も、大学に入ってからも聞いてきました。確かに多くの文系にとって、数学は地歴や英語と毛色が違ってとっつきにくい科目であるばかりではなく、模試の度に点数のブレが激しく、一見「コスパの悪い」科目かもしれません。
でも、ちょっと待って。数学で重視される論理的思考力はきっとほかの科目でも、そして大学に入ってからも必要なもの。特に大学受験レベルの数学なら、論理的思考力の初歩の初歩を勉強しているようなものです。にもかかわらず、点数を取れる人はほぼ満点、取れない人はほぼ零点……と、点数の二極化が激しい科目です。
文系数学は理系数学と比べてIIIまでやる必要はないし、もの凄い発想が必要、という訳でもありません。練習量を確保して苦手意識を取っ払ってしまえばある程度は戦えるようになります。そう、実は決して「コスパが悪い」とも言い切れないのですよ。
総合点さえ良ければ入試は乗り切れますが、数学が 10 点から 40 点になるだけで、合格にぐんと近くなる気がしませんか……?
そうときたら、参考書を開いて、取り掛かってみましょう。
そのまえに、せっかくなのでこの章を読んでみてください。
数学IA・IIB(数列、ベクトル)から出題される。
大問 4 題の形式。基本的には関数・図形・整数・確率(場合の数)の4分野からよく出題される。関数は幅広いが、微積、軌跡と領域の2分野が頻出。特に後者は最近出題頻度が高まっている。
例年文理共通問題が 1 問出題される(ただし、2009 年度は 2 問、2011 年度は 3 問、2014 年は 3 問と近年は安定していない)。
大層大げさな言い方ですが、分野・パターンともに限定される文系数学ではかなり有用。問題の解き方を分野ごとに確立し、自分の解法と比べよう、ということです。ちょっと抽象的ですかね。言ってしまえば、最終的に 3. 分野ごとの定石のまとめのようなことが自分自身で書けるようになればよいということでしょう。
皆さんの中で、数学の勉強=ただ闇雲に問題数をこなす、と捉えている人はいませんか?その演習方法では、なかなかすぐ結果に結びつくという訳にはいかないでしょう。よく、参考書を○周、ということを自分の進歩状況の目安にしている人がいます。自分がやったことが即数字で明確化されるし、実力も全く伸びていないというわけではなさそうなので、その方法に甘んじているのです。でも、一律に何周もやっていたのでは、得意な分野は余計に演習量を取ってしまい、不得意分野は逆に演習量が足りない、ということになりかねません。問題集という一般向けに作られたものにむやみに頼りすぎず、もっと今の自分に適切な勉強法を模索すべきです。
では、どういった方法をとればよいのでしょうか。
数学が苦手な生徒とお話しすると、「問題集は解いているが過程は殴り書き」「問題集も模試もあまり復習をしていない」といった事実が判明することが多いです。本番の試験でやることと違う作業を普段からやっているのであれば、当然点数は伸びませんよね…。人それぞれ伸ばすべき分野・力が違うので一概には言えませんが、「解けるか怪しいと思った問題だけでも、過程も含めしっかり書く」「どこでつまったか、なぜ解答と違う方法をとってしまったかを追究する」といったことが、解けない問題を解けるようにしていくのに繋がると思いますよ。
どんなに数学が苦手でも、正しく計算することはできます。一方で、実際に問題を解くと計算ミスはなかなか無くせないものでもあります。誰だって計算ミスはするんです。じゃあ、ミスが少ない人はどうしているのか。
これは簡単な話で、彼らは自分なりの「計算ミスを減らすシステム」を持っているんです。このシステムには、大きく 2 種類あるかなと個人的には考えています。第一にスポットを当てるべきなのは、どのぐらいのスピードで解けば計算ミスを効率よく減らせるのか、自分の計算ミスはどこで起こりやすく、どこの計算に時間をかけたらよいのか。こういったことは、問題をこなし、見直していくなかで分かってきます。そして第二には、検算の手法です。計算ミスが少ない人は、自分の中に検算ツールを多く持っていて問題を解きながら常にそれらを駆使しているのだと、そういう話を聞いたことがあります。検算ツールは自分の武器になります。頭の中にストックしておいてください。
どんなに難しく見える問題も、まずは実験から入ってみてください。図やグラフを書くなり、小さな数で試すなり。ここは丁寧に。
どの問題から解くのか、1問に何分くらいかけるのかは予め考えておくべきです。特に、煮詰まったときは一旦他の問題に移ったほうがよいことが多いです。どのタイミングで他の問題に移るか、それくらいは考えておかないといつまでも一つの問題に固執してし
余計な計算はなるべく減らしてください。対称性や適切な場合分けを利用したりするのも一つの手です。無駄に計算量の多い手法をとって計算ミスするのは、完全に自業自得です。
もちろん例外はありますが、文系数学の傾向を踏まえた、単元ごとの簡潔なレビューを書きました。過去問や模試を何度か経験するとよりここで述べることを理解できると思いますが、まだ経験していない人はまず「そういうものなのか」と軽く頭に入れてみてください。経験済みの人は、自分は今、各単元でどのキーポイントを落としているか、少し反省してみてください
多様な出題方法が存在しますが、まず肝となるのが、初等幾何、座標、ベクトルの3本柱からどのルートを選び出すかです。どれを利用して解くかは問題で明示されている場合もありますが、明示されていない場合や他の方法を利用した方法がよい場合もしばしば。2017 年度の正六角形問題などはまさにこれですね。この3つの方法を自在に行き来できる広い視点を身に付けてほしいです。
また、とりわけ三角関数を用いる問題を苦手とする人は多いのではないでしょうか。この時、「どの角度をθ(変数)でおくか」が、問題の出来を左右することが多いです。角度に変数を一つ置けば、他の角度はもちろん、sin θ・cos θを用いることで辺長も表せます。しかし変数は自分で設定するので、どこに置くかの候補はたくさんあります。どこを変数とすると最終的に計算がスッキリするか、という経験と実験に基づく憶測が、意外と重要です。文系数学は他にも「対称性」などに着目すれば、計算がかなり楽になりますよ。
最初に具体的数値を代入した時の値を計算させ、最終的に「作業を n 回おこなったときはどうなる?」という普遍化をさせるケースが極めて多いです。しかも、そういった問題では基本的に漸化式を使います。漸化式、苦手な人は多いですがパターンは極めて少ないです。基本問題を通じて早めに吸収しておきましょう。焦点を当てるべきポイントを伝えておくなら、作業による「変化」と作業後の「状態」です。この二つを把握してしまえば、見通しはかなり良くなると思います。なお、この二つの把握の大きな助けとなるのが推移図です。苦手な人は積極的に使ってみるのをおすすめします。
あとは、全分野共通の部分でも述べましたが、「実験」がものすごく大事。問題文だけでは意味がよく分からなくても、「n=1,2,3の時は…?」と具体数値を代入していけば、「結局同じことの繰り返しだ!」と感覚的に分かることもあります。困ったらとりあえず、実験。そしてこの実験結果は、計算用紙に残しておきましょう。最後の検算にも使えます。
新課程で導入されたということもあり重要度が増している分野ですが、よく言われるのは「思いつかなければ手も足も出ない」ということです。実際、初手で方向性を間違えるとかなり難儀なことになります。しかし、様々な整数の性質をしっかり押さえておけば解くことのできる問題も多いです。
まずカギになりやすいのが、「因数」や「剰余(余り)」でしょうか。「一の位が」や「下二桁が」は10や100で割ったあまり。「互いに素」などは共通因数が主役になってきますね。商や余り、因数を主役に考えたい場合は適宜自分で文字設定をしてください。余りのみに着目する問題では、合同式で手軽に片付けられる場合もあります。
また、証明問題では整数の性質上数学的帰納法が有効な場合もあります。「すべての自然数nについて○○を証明せよ」のようなタイプの問題なら、まずこれを疑ってみるとよいかと思います。
ただ、実際問題を解く時にどんな解法を採用するかは、問題文を隅々まで観察して考えましょう。
頻出分野です。かつ、整数や確率に比べるとなじみのある問題が多く、確実に取れるようになっておくことが望ましいです。中でも頻出なのは「軌跡と領域」・「微積」でしょうか。いずれの分野でも、図を丁寧にはっきり書くことは大事になってきます。以下では、それぞれで気を付けることについて記しておきます。
順像法・逆像法(順手流・逆手流とも)という解法を知っていますか?知らない人は学校や塾の先生に聞いてください。かなり必要な知識です。なお、この2つの手法の名前は正直どうでもいいのですが、順像法と密接な関係のある「ファクシミリの原理」は名前の由来も含めて知っておく価値があるかと思います。知らなければ是非調べてみてください。直観的な理解の一助になると思います。
話を戻しますと、この分野はこれら二つの解法を主軸に解き進めるものですが、どちらも「変数と定数」、「次数」の二つへの意識が大事です。問題には基本的に文字が二つか三つ出てくると思いますが、どれが定数で、どの変数を求めなければいけないのか、その場合余った変数はどう生かせばよいのか。自分で文字を設定する場合には、どれが定数でどれが変数かちゃんと把握できるよう、予め設定する文字のルールを決めておくとよいかと思います。また、もう一つが、次数が高くなると計算が難しくなるので、いかに次数の低い数式を作れるか(例外あり)。いきあたりばったりの解き方から脱却するには、いずれも大切です。
増減の考え方や面積に関わる問題などがあります。東大の数学の中では比較的取り組み易いレベルの問題が出題されることが多いと思います。しかしその一方で計算ミスなどの初歩的なミスで落としてしまうと得点的にも心理的にもかなりのハンデを負うことになるので要注意です。計算を進めている間も常にミスをしないよう、特にこの分野では気を遣ってもらいたいです。
ミスを減らすためには既に述べた通り計算を簡単にすることが非常に有用ですが、そのための一つのツールとして、積分は「6分の1公式」をどれだけうまく使えるかが勝負です。ゴリ押しでも解けるからいいや…と思っている人、本番まで時間があるなら「6分の1公式」の演習をしてください。
「私発想力ないんで。」
東大特進の担任助手をしていると、本当に沢山の生徒さんがそう言います。
今この部分を読んでいる皆さんもそう思ってはいないでしょうか?
しかし、その考えは捨てましょう。
数学に必要なのは発想力ではありません。
1.普段から論述練習を行う
2.解答に頼らず、ミスから逃げず、問題に正面から取り組む
3.問題を通して解法のパターンを習得する
数学力をつけることはこれらを習慣化することだと思います。
では具体的に何をすれば良いかを見ていきましょう。
数学IA・IIB(数列・ベクトル)・III
大問6題の形式。
例年文理共通問題が1 問出題される(ただし、2009年度は2問、2011年度は3問出題された)。
東大入試を突破するには、「分かるフェーズ」、「解けるフェーズ」、「点数が取れるフェーズ」の 3 段階があると思います。理解していても、実際に自分の力だけで解ききれるようになるまでには高い壁がありますし、また解けたはずなのに点数になっていないということも多く、この壁も非常に高くなっています。模試などで思い通りの点数が出なかったときは「たまたま失敗しちゃった」のではなく、「解ける段階の次の段階にまだ到達できていない」という姿勢で成績に向き合うと、気を緩めずに合格まで走りきれると思います。理解したと思ってから点数がついてくるまでには思っている以上に時間がかかるはずなので、油断せず早めから勉強していきましょう。
入試でどの科目もベストが出るなんてことはまずありません。5 科目も試験があるわけですから、どれか 1 科目くらいは失敗します。そして数学はどれほど得意な人でも、あるいは得意な人ほどコケやすいと言われる科目です。70%程度の力しか出せなくても受かるくらいの実力になるのが目標と思って、最後まで気を緩めずに頑張ってください。また、どれだけ数学に自信がある人も、数学に頼りきることは避けるべきだと思います。
以下、テーマごとに知っているだけで役に立ちそうだと感じたことを書いていきます。
証明問題ならば気を遣っているでしょうが、確率問題や図形問題でもしっかり書けているでしょうか?答案は、ただ事実と答えを羅列して満足するだけでは不十分です。ある事実を導く際、なぜそうなるのかを必ず説明しなくてはなりません。例えば 2016 年度第二問の確率の問題では、規則を見つけるだけでなく、それが必要十分であることの論理的説明を書くことが不可欠でした。また第六問の空間図形では、なぜ回転体と言えるのかの説明も大切になってきます。この論述は、普段から行っていないと本番に書くことはできません。実際に計算したり直感的に答えを出す時の解き方と、論述する際の解き方は必ずしも一致しないでしょう。問題が解けるようになってきたなら、普段の演習の際から、人に見せるレベルの答案を作っていきましょう。
言葉だけでは何をすればいいんだという感じだと思うので、2016 年度の第二問の答案を載せておきます。参考にしてください。
東大の数学はかなり計算量が多いとされるので、「解き方は分かったのに、計算でミスった」ということがよく発生すると思います。どうしたら計算ミスが減るのかということについて考えていきましょう。
まずは、意識を変えましょう。解き方は分かっていたが計算ミスで間違えてしまった場合、「理解はしていたし、ただのミスだから実力じゃない」と甘える心がどこかにありませんか?(私はありました。)こう思っている間は、どれだけ勉強しても直りません。何をどう言い訳しようと、言い訳を伝えられる近くの人をのぞき、評価の材料となるのは得点だけです。「得点≒実力」と評価されることに慣れましょう。
また、「ただのミス」というポイントですが、本当にそうでしょうか?もし「1+2=4」というタイプのミスならば話は別ですが、多くの場合「計算を減らす工夫を怠っている」のではないでしょうか?ある解き方を思いついたとしても、それが計算するのに適した解き方なのか、論述するのに適した解き方なのか、再考する必要があります。おそらく東大の計算系問題の本質は、様々な解き方を考え計算を減らす工夫をする思考力を試すところにあると思われます。この思考過程を普段から心がけて、解き方が分かってもそこでやめずに答えを出し切ってください。
学校や塾やどこでも強調される「復習」の重要性。確かに、一度学んだことを再確認することは大切です。定石を知ることは必要ですが、いつまでもそれに頼っているようでは、東大入試で必要とされる思考力は身につきません。東大入試は普段から思考することに慣れている人には簡単ですが、定石通りで解こうとすると解けないタイプの問題が多いです。同じ問題を二度と解くなとは言いませんが、必ず新しい問題に触れて思考する、という勉強を行ってください(復習の際には、似たレベルの違う問題集をやるという勉強法がおすすめです)。
また同じ理由で、すぐに解答をみたりすぐに公式を探したりするのはやめましょう。どうせ解けなかったとしても、30分や1時間考えてから解答を見るのと、何も考えずに見るのとでは大違いです。夏頃までは、「解く」ことが目的ではなく「考える」ことが目的と思って勉強してください。
問題を見たら突然解答を書き出すのでなく、まずは何分か考えてください。特に、計算の重い問題では、最初に思いついた方法で無理やり推し進めると、途中でうまくいかなくなる可能性が高いです。まずは、落ち着いて計算量や論述のしやすさを見積り、焦らず思考する時間を設けましょう。
最初の発想がものを言う単元であり、気づかなければ 20 点まるごと飛ぶことも珍しくありません。
しかし、思考の道筋に慣れれば、大抵の問題は解けるようになる単元です。まずは、合同式に慣れ、カンを磨きましょう。2016 年度の文系第四問がスラスラ解けるようになってください。
漸化式には手慣れている方が多いと思いますが、漸化式ではややこしくなって解きにくい、あるいは解けない問題が出ることが増えてきました。まずは実験してみて、状況把握を心がけましょう。ルール把握が命の問題としては、2010年度第三問や2005年度第五問あたりでしょうか。数学で点を取りにいく人はこの難易度の問題を確実に解けるようになる必要があります。
漸化式を立てるときも、できるだけ求めるものが少なくなるように工夫しましょう。(例:2012 年度第三問)
また、意外と忘れがちですが、確率は場合の数が分からなければまともに解けません。まずは、場合の数を固めましょう。2009年度の第三問が解けなかった人は、まず場合の数を勉強してください。1989 年度の第六問が解ければ場合の数は完璧といってよいでしょう。
「東大国語では差がつかない」と耳にすることがあると思いますが、果たしてこれは正しいのでしょうか。確かに、合格者の点数を見ると、文系であればおおよそ55~75点、理系であれば30~50点、と数学などと比べるとあまり差がつかないように思います。しかし、誰もが一定の点数を取ってくる科目だからこそ、対策を怠れば国語の不出来が足を引っ張ることは十分にありえます。さらに、不安でいっぱいの本番において、自分の得点の読みにくい国語で「平均以上はできているはず」と思えることがどんなに心強いかは理解していただけるはずです。そこで「国語って結局何を勉強すればいいの?」という疑問に応えるべく、筆をとりました。
東大国語で、特に大事になってくるのが古文・漢文の対策です。多くの受験生が現代文の対策で悩むものの、それほどしっかりとした対策を行えないまま二次試験本番を迎えてしまうために、古漢の対策を行ったかどうかが国語全体の点数を大きく左右することになります。ありがたいことに、おそらく東大の古典は皆さんにとっては非常に簡単なので、しっかり対策すれば安定して高得点を望めます。それゆえ、古漢の点数を固めて現代文でそれに上乗せをする、というのが一般的な受験生の定石と言えるでしょう。
しかし、それは必ずしも現代文の対策をしなくてもよいということを意味するわけではありません。多くの受験生が対策をきちんとできないということは、むしろ基礎の部分を固めてしまえば武器として非常に有用になるということです。実際、現代文に安定感があると他教科を受ける際の安心感が全く違います。というのも、どの科目も問題文は現代文で書かれているからです。古漢、現代文ともに他教科と同じく、基本を押さえた上で論理的に物事を考えられているかが問われるものなので、きちんと対策して臨めば全く恐れるに足りません。以下、筆者なりの対策法を古漢、現代文についてまとめていきます。ここで紹介する方法を鵜呑みにする必要は全くありませんが、一つの参考にして皆さんなりの勉強法を確立していただけたら幸いです。
国語総合、国語表現から出題されます(ただし、文系の場合は現代文B、古典Bも範囲に含まれる)。
2000年度以降、大問4問構成となっています(以前は現代文2問、作文1問、古文・漢文2問ずつの大問7問構成でした)。
第一問は完全に文理共通問題、第二問・第三問は文章が共通となっています。時間としてはちょうどよいという意見が多いようです。
2017年度の入学試験問題を解いてみると、全体的に難しい問題は見られないという印象でした。数学が易化する中で、国語できちんと点数を取ることが必要だったと思われます。
国語の勉強は大きく三つに分けられると思います。暗記、読解、解答作成です。暗記は主に古典における、古文の単語・文法と漢文の句法でしょうか。これらは、高2の時点である程度終わらせ、高3で文章を読む中で徐々に定着させ、センター試験前と二次試験前に最後の確認をすればよいでしょう。読解と解答作成については古典の場合は読むことさえできれば文章自体はそれほど難しくなく、現代文の勉強をきちんとしていれば十分読解・解答作成はできるようになるでしょう。詳しい現代文の勉強法は現代文のページに譲ります。
「東大の国語は差がつきにくいからそれほど対策しなくても大丈夫だよ!」・・・東大受験生であれば一度はこの台詞を耳にすることと思います。実際、国語で高得点を狙うのは難しいですし、戦略として賢明ではないでしょう。しかし、国語の中ではまだ対策のしようがあるのが古典。なぜならば、ほとんどの問いが現代語訳の応用であり、単語と文法さえ押さえてあれば大部分答えられるからです。しかも、古典はきちんと基礎力が固められていれば大コケする危険性も小さいですよね。国語は6割とれれば十分。安定させにくい現代文に左右されることなく得点したいのならば、古典で求められる正答率は7割程。基本に忠実に、一つひとつの要素と真摯に向き合えば不可能な数字ではありません。受験生皆が答えられないような難問を解ける必要はないのです。そう考えれば、古典対策のやる気が上がってきませんか…?
逐語訳を求める問題で、例年3~4問が出題されます。理系だと1問少ないことが多いです。解答欄は1行しか与えられず、狭い解答欄の中で基本的な文法事項の確認をする問題がメインです。内容的な補いはあまりせずに、逐語訳に徹するほうが堅実なやり方だと思います。ただ、2005年度には「必要な言葉を補って」という指示がなされているので、そのような場合は指示に従いましょう。点を取りやすい箇所なので、周りに差をつけられないためにも傍線部の要素の見落としがないか見直しましょう。特に助詞・助動詞は見落としがちなので要注意!!
逐語訳を前提としながらも、内容把握を踏まえて解答を練り上げる力を試す問いが多くなります。この傾向は設問中においても明らかであり、「内容が(よく)わかるように/わかりやすく」(2011・2012年度等)「必要な言葉/主語を補って」(2015・2016年度等)といった指示がなされる場合も多くあります。いくつか例を挙げてみましょう。
このように出題形式は多様でパターン化するメリットもあまりなく、近年は、「どのような考えを戒めたものか」「要点を簡約に述べよ」など、指示も多様化してきています。結局、出題形式に拘泥するのではなく、出題者は本文の理解を正確に問うことを主眼にしている、と考えてよいでしょう。そして、出題者の聞き方に対応するような形で、正確に理解できたことをアピールしましょう。
古文の対策は1.基本的な単語、文法の知識を身につける2.過去問演習を中心とした記述の練習をする この2点に大別されます。高2の終わりまでは前者に専念してください。学校の授業を大事にしましょう。単語テストがあればそれにむけて単語を覚えましょう。予習の際品詞分解が宿題になっている学校の人は、かなり辛いと思いますが、文法で苦労することがなくなるのでしっかりこなしておくとよいです。授業で扱った文章は単語の意味が全て分かり、品詞分解もできるという状態にしておきましょう。助詞・助動詞や句法がなかなか覚えられないかもしれませんが、何回も繰り返したり実際に読解する際に用いたりしているうちに、自然に覚えられます。反復が大切です。ド忘れしたときの対処法として、有名な文章を暗唱しておくことも効果的です。東大の二次試験では、本文理解に照らして単語を意訳する必要が生じます。本番までにできるだけ多く文章に触れて、実際に単語が使われている場面に出会って、その原義を押さえておくことが肝心になります。そこまででなくとも、「あぁ、授業で実際にこう意訳していたな」ということを思い出せれば、2月25日にスムーズな解答が可能になります。単語は、何度も繰り返さないと頭に入らないので、単語帳を1冊決めて、何周もしましょう。
次に後者の記述練習について。東大形式の記述問題に慣れるには過去問が一番です。過去問演習は高3の夏や秋から始めるのが一般的です。それまでに単語や句法など基礎の部分をしっかりと固めておきましょう。市販の問題集をこなすのもよいですが、学校の授業で扱われる文章の徹底的な予習・復習だけでも十分な基礎力を身につけることができます。古文の対策は量より質であることを念頭に置き、他教科とのバランスも見ながら対策してください。
因果関係の構築を求める問題等、直接的に解答に関係ない場合もありますが、いずれにせよ逐語訳ができないと解答作成に支障があることははっきりしています。特に以下の3点に注意するとよいでしょう。
「『聞くとも聞かじ』とぞ仰せられける」(傍線部エ)とあるが、ここには白河院の、だれに対する、どのような気持ちが表れているか、説明せよ。(2008年度共通(三))
この設問においては、白河院の気持ちの向けられる対象、および気持ちの内容についての記述が解答に不可欠となります。このように、問題文で直接的に問われている要素を解答に含めない、というようなミスは極めて致命的です。第一に、問題文の要求を正確に把握することを心がけてください。また、東大古文においては傍線部が本文把握に重要な箇所に引かれていることが多くあります。設問に沿って傍線部への理解を深めることは、本文理解を深めることに直結するといっても過言ではないかもしれません。他にも、以下に挙げることを心がけると、よりよい解答に近づくことができるでしょう。
東大物理では、近年難問は出題されていません。もちろん、ややとっつきにくい問題は出題されますが、対策次第、時間配分次第では50点以上取ることも十分可能です。
ところで、この本は「東大の基礎知識」ですが、物理に東大も何大学もありません。「東大物理」などというものは存在しないのです。物理の基本法則を正しく理解し、自由に操ることさえできれば、自然と試験で点数が取れるのです。東大は細かいテクニックを問うのではなく、基本を理解できているかをストレートに問う問題を出題します。東大入試では、受験生が見たこともないような新しい設定や仕掛けの問題が出題されることが多々ありますが、それらは真の基礎力を見抜くためのものであり、公式の暗記などで太刀打ちできるものではありません。これから受験勉強に取り組むに当たってはそのことを意識しておきましょう。
したがって、物理を学習する際は闇雲に演習するのではなく、どのような法則や定理が背景にあるのかを意識しつつ丁寧に演習を積んでください。公式をなんとなくあてはめて解けた、というようなことを続けていては壁にぶち当たります。丁寧な演習とその復習を繰り返すことで、いつの間にか自然にさらっと問題が解けるようになるのです。そうなれば物理がとても面白く感じるようになるのは間違いないでしょう。
ただ、近年分量増加の傾向にあるのでその点においては工夫をしておいたほうがよいかもしれません(後で自分なりに行った工夫を書いておきます)。
物理基礎・物理の全範囲から出題される。
毎年大問3題の形式。
力学・電磁気が大問で1つずつ出題される。残りの1問は熱力学または波動分野。原子分野に関しては恐らく第三問で出題されることが予想されるが、電磁気との融合で出題することも容易なため、絶対ではない。
最初は「定理や公式の背景を理解する」→「基本的な演習問題を解く」という勉強を繰り返して、物理の根本に対する理解を深めてください。例えば、力学的エネルギー保存則を理解したらそれを用いて問題を解く、といった具合です。わからないからといってすぐに答えを見て満足していては一向に理解が深まらないので、なるべくどこで詰まったかを明確にしてから答えは見たほうがよいと思います。そして徐々に演習問題の難易度を上げていって、自由に定理や公式を操れるようになり(例えば重力の位置エネルギー、ばねの弾性エネルギー、外力の仕事、……と複雑になっていってもエネルギー保存の式が書けること)、物理現象を自然にイメージすることができるようになること(例えば物体がどのように運動していくか、波がどのように伝播していくかが想像できること)が大事です。ここで注意してほしいことは、「物理の勉強=定理や公式の暗記とそのあてはめ」では断じてない、ということです。数学という言語を用いて、現象の背後に隠れた法則のつながりを見つけることを意識してください。ただ、物事の原理が理解できたからといって、必ずしもそれを使いこなせるわけではないので、演習を積みましょう。演習を積む中で、物理現象を表現する定理や公式が自然に感じられるようになってくるはずです。また、公式を暗記してからそれを理解するという手順をとったほうがスムーズに頭に入ってくる人もいるかも知れません。要は公式、定理を理解することができればよいわけですからその道筋は自分で色々と探してみてください。
このようにして物理に対する理解が深まったら、後は自分の思考力が大事です。新しい設定や仕掛けの問題は思考力がないと手も足も出ないので、一つ一つの問題をじっくり考えることはとても大事です。また、思考力をつける上で数学はとても大事なので数学の勉強もしっかりやりましょう。
そして各分野ごとの対策の最後にはその分野のおすすめ問題も載せておくので是非参考にしてください。
第一問では力学の問題が出題されます。ここでは、頻出の分野である単振動と二体問題を主に扱います。
単振動はとても重要な物理の基礎事項ですが、多くの受験生が苦手にしています。それゆえ、単振動はよく出題されるのでしょう。しかし実際はそんなに複雑な現象ではなく、周期的に運動する美しい現象と言えます。問題を解くに当たって大事なことは、単振動の特徴やイメージを掴んでおくこと、運動の様子を視覚的に捉えられること、正しく力を見つけて運動方程式を立てること、エネルギー保存則を意識すること、これだけです。言うまでもなく、単振動は運動方程式(※注:ここでは回路の単振動などは考えないが回路方程式を考えれば同じ)を解くことで得られるので、単振動の特徴やエネルギー保存則は全てそこから導かれるのです。ですから、一度運動方程式という根本に立ち戻って様々な法則・定理を導き、理解しておきましょう。ただ丸暗記するだけではいけません。
さて、東大入試では単振動はどのように出題されるのでしょうか。東大入試で単純な形で単振動が出題されることはまずないと考えてよいでしょう。二体問題と絡めたり、バネの代わりにゴムひもを用いたり、何らかの装置を使ったりして問題を複雑にして、そう簡単には運動がわからないようになっています。しかし、これらは基本的な現象の組み合わせに過ぎないので、落ち着いて運動方程式を立てて、それを解きましょう。なんとなくこうなりそうだ、というような勘で解くのは禁物です。複雑になればなるほど、テクニックや直感に頼ることなく、基本に忠実になることが求められるのです。これは他の分野にも通じる普遍的なことです。肝に銘じましょう。ただ、かなり実力がついてくると物体等にかかる力の関係を把握するだけでエネルギー保存がすぐに書けるような場合も出てきます。そこまでいけばかなり時間も縮めていけるでしょう。
二体問題というのは、互いに力を及ぼしあう二つの物体の運動を解くという問題です。二体問題は一般的に解ける問題です(三体以上になると一般的には解けないようです)。二つの物体の運動を相対運動と重心運動に分けて考えると、驚くほどきれいに解けてしまうので、その考え方を是非身につけてほしいと思います。また、運動量保存則やエネルギー保存則、衝突の原理なしには二体問題を理解することはできませんが、皆さんはこれらを根本から理解できているでしょうか(苑田先生は東大特進でこれらを始め、相対運動・重心運動の話まで根本から丁寧に解説してくださいます)。前述の重心運動、相対運動について説明すると、例えば動いている台の上で球がばねにより単振動しているとすれば、動いている台(重心←球があるので不正確ですが)から球を見れば球はただ単振動しているだけ(台に対する運動なので相対運動)というように簡単になるということです。この手法は東大の単振動問題でよく用いることができて、重心運動の等速直線運動と、相対運動のただの単振動に分けられる場合が多い気がしますね。
振動・二体問題以外には円運動についての出題が多いです。円運動を考える際は、向心力や遠心力についての理解が不可欠です(コリオリ力などは高校物理では問われません)。その定義や導出までしっかり理解しておけば変なミスをしなくて済むでしょう。
他にも万有引力、剛体の問題など出題は多岐にわたり、力学以外の分野と絡めて出題されることもあります。全ての範囲を深く理解しておかないと太刀打ちできない問題が多いので、浅い学習で満足せずに、深く掘り下げて理解しようとする努力が必要です。深い理解といっても、結局は何度も言っているように基本なのでそんなに身構える必要はありませんが。少し心配になってきたら、過去問に少し目を通してどれぐらいのレベルが必要か見てみると実感がわくかもしれませんね。
理系で東大を目指すほとんどの受験生が避けては通れない科目である化学。理科の中でも特に範囲が膨大で、なかなか完成に至らず、苦手意識を持っている人も多いかと思われます。化学が特に苦手というわけでもないという人でも、特に東大化学においては問題文の長さ、問題数の多さ、時間的余裕のなさから苦しむ人が多くみられます(2017年度は例外と言えるかもしれません)。
しかし、東大の理科において化学は、得点源になりうる科目です。
実際、ある程度やれば、40~45点は安定して取ることができます。ただ、そうするのに時間がかかるだけです。得意な人はあまりは多くないので、他の人と差をつけることが可能かもしれませんから、是非化学を得意科目にしてしまいましょう。この攻略本が皆さんの勉強法の一助となれば幸いです。
「化学基礎・化学」の全範囲から出題される。
1987年以降、大問3題の形式。ただし、それぞれの大問がI・IIに分かれている。
「概要」で挙げたように、化学の出題範囲は理論化学・無機化学・有機化学の3分野に分かれています。ここからは分野ごとに傾向・対策を説明していきます。
東大化学の第一問は、ここ十数年ずっと理論分野からの出題が続いていましたが、2017年度は有機化学からの出題となりました。さらに近年は第二問においても理論分野の内容が絡み合ってくることがほとんどとなっています。理論分野といっても範囲は多岐にわたり、「物質の構成と化学結合、結晶」、「物質量と化学反応式」、「物質の状態変化」、「気体の性質」、「溶液の性質」、「化学反応と熱」、「酸と塩基」、「酸化還元反応」、「電池と電気分解」、「反応速度と化学平衡」などが挙げられます。2017年度はいわゆる典型問題のような出題がされていましたが、近年はこれらを数分野にわたって融合させた問題や、目新しい素材を用いた新傾向問題、過去の論文を題材にした問題などが出題され、多くの受験生たちを苦しめてきました。
一つ強調しておきたいのですが、東大化学においてこれが出やすい、という分野があるわけではありません。ですから、当然のことといえばそうなのですが、特定の分野に絞ることなく、全分野が問題なくできるようにしておく必要があります。
近年の傾向としては、計算量が多い、記述問題がよく出る、問題文が長い(特に第一問のI)、問題数が多いことが挙げられます。
それぞれの対策法について詳しく見ていくことにしましょう。
計算量が多いことに伴うミスとして、計算ミス、単位の勘違い、有効数字に関連したミスが考えられます。計算ミスは誰でもするものです。大事なのは、それを減らそうと努力することです。頭の中で計算できそうで面倒くさいと思っても、紙に書いて計算したり、一行ずつ検算をしたりしながら進めるのがよいでしょう。次に、単位を揃えること、そして単位の確認をすることも大切です。同じものを表す単位(mmHgとPaなど)を混同したまま計算してしまわないように気をつけましょう。そして次元(単位)が式の中で等しくなっているかどうかもしっかり確認しましょう。ありがちなミスなので注意しておくに越したことはないです。最後に有効数字についてです。途中計算は有効数字の1桁下までを用いて行いましょう。有効数字に気を取られるような計算では、計算ミスがさらに増加します。自信がないときには、計算しやすい近似値を使ったり、概算したりして、時間をとられないようにしつつ確認するのも一手でしょう。浮いた時間などに見直すことができればさらに得点は上がるでしょう。普段の演習から心がけていればおのずと正確な概算ができるようになります。
「~行程度で述べよ」「~字程度で説明せよ」という問題がよく出題されます。こういう問題は実は点を取りやすいです。なぜなら、何を問われているかを理解していれば、言葉遣いの差こそあれ、自然と書くことは一つに決まるからです。なお、~行、~字という文句にそれほど神経質になる必要はないと思います。論理的に過不足のない答案が書ければ、丸がもらえるはずです。それが難しくても、最悪、キーワードの羅列をしておくことくらいはできます。対策は、普段から反応や現象が起こる原理を考えておいて、それを人に説明できるようにすることかと思います。ノートなどに記述問題をまとめてみると記述の仕方を含めて何が重要か明確になります。水素結合やルシャトリエの原理が絡む記述は頻出です。「~行程度で」という問題についてなのですが、解答用紙を半分に分割するという人は倍の行数を書くようにしましょう。
問題文が異常に長い場合(2014年度、2007年度第一問など)があります。この場合、隅々まで熟読していたら幾ら時間があっても足りません。こういう時は概要を掴む感じで、つまりどういう実験が行われているのか、問題となっている事象はどのようなことなのか、を掴む程度に読んでいきましょう。具体的には、傍線部と式や表の部分を中心に読めばよいかと思います。これで十分問題は解けます。必要だと思う条件には印などをつけると後で探す手間が省けます。
問題数は非常に多いです。近年は各大問で20問を超える出題がされることが多いです。全部の問題が解ければそれに越したことはありませんが、時間の制約もあるので、詰まったら飛ばす勇気が必要です。ややこしい計算問題に時間を費やし、結局解けないor答えが合わない、という事態にならないようにしましょう。それで他のもっと簡単に取れるはずの問題に手が付けられなかったら本当にもったいないです。一問二問捨てたところで大きな失点にはなりません。確実に取れるところから点数をかき集めましょう。
2017年度では典型問題の出題が目立ちましたが、近年の傾向でいうと、(無機分野の問題では特に)一般の受験生では知らない事象や反応がテーマとなる問題が出題されてきました。
こういった問題への対策としては、まず基本的な(典型的な問題を解く上での)知識をしっかりその原理から理解すること。そして演習を通してその知識を問題となっている事象に対して応用することができるようになることが必要です。これができるようになれば、50点以上の高得点がぐっと近づくでしょう。
有機分野は2017年度を除きここ十数年第三問で出題され続けています。ほとんどの年で、IかIIのどちらかで構造決定の問題が出題されていますが、構造決定はやればできるようになる分野なので、演習を積んで必ず解けるという状態まで持って行きましょう。演習の際には、強い条件と弱い条件、与えられた条件とすでに使った条件、というものをしっかりと区別し、意識しながら演習を積むのがよいかもしれません。
近年では2013、2014年度のように糖や高分子からの出題もあります。2014年度Iで問われたグルコースなど糖類や2013年度のIIでのタンパク質・アミノ酸といった天然高分子化合物や付加重合・縮合重合といった合成高分子化合物の代表的な反応に関しては、実例とともに押さえておくとよいでしょう。高分子からの出題の際、計算問題が出ることがあります。重合度を意識するとよいでしょう。基本的には理論分野と同様に解けますが、縮合重合が出てきたとき端をどう扱うかなど、問題を解き、感覚を養っておきましょう。
最後に、受験生が見落としがちな実験に関する問題が多いのも特徴です。とはいえ、突飛な内容は問われないので、実験が絡んだ問題を解くときには実験の操作一つ一つ、及び、その順序の意味、実験装置の仕組み、名前などをしっかり確認しておきましょう。もし実験をする機会があれば、しっかり操作一つ一つの意味を意識しながら行うとよいでしょう。ちなみに2015年度から2年連続で実験レポートの正しい書き方について問われていました。
生物は満点を取りにくい科目であり、50点を超えるのも難しいです。ただ、しっかり勉強すれば、他の科目を選択した人に大きく負けることはありません。それどころか、生物の得意な人であれば、周りの受験生に点差をつけることすら可能になっています。生物が好きな人や将来生物の勉強をしたい人は生物選択で全く問題ありません!
一方で、「物理が苦手だから」という消極的理由で生物を選択するのは避けるべきです。現行の生物は後ろ向きな姿勢で対応できるような軽いものではありません(物理も生物も得意で相対的に物理が苦手だという場合は除きますが)。
さらに、生物も理科全般に言えることが当然ながら通用し、演習量を増やせば簡単に解けます。ある人は受験期に過去問レベルの問題を400題解いた結果、東大の生物を60分で解いて50点を超えるという、物理受験者と同等の高得点を実現しました。
また、生物選択だと受験できる大学が制限されることには注意しましょう。生物以外の科目なら化学でも物理でも受けられる大学数はほとんど変わりません。詳しくは調べていただければと思います。
ちなみに、東大は基礎知識で解ける問題が20点前後と比較的配点が高く(2014年度のみ10点ちょっとでした)、ここをしっかり押さえたうえで、考察問題を攻略すれば高得点が狙えます。
教科書から逸脱した内容を「知識として」求めることはありません。
入試問題ですので知らない内容が出されることは普通にあり、当然知っていれば有利になることはありますが、教科書の知識があれば解けるようになっているのです!
ただし、だからといって教科書の暗記で満足してはいけません。教科書の内容を踏まえたうえで、教科書範囲外のことを考察できるように考察問題の演習を十分に積んでください。
毎年大問3題の形式。大問ごとに前文が一つから四つ('01~'17年度)付され、それに設問が続きます。基本的には各大問内で知識問題から考察問題へと移っていきます。分量は知識問題よりも考察問題のほうが多い傾向にあります。
大問ごとに何が出題されるかは固定されていません。様々な分野からまんべんなく出題されます。また、分野をまたいだ出題をされる可能性があります。
記号選択や単語を答える問題、記述問題が基本的には多いです。図やグラフを描かせてそこから問題を解くといったものもたまに見られます。
さて、一度過去問を解いたことがあれば分かると思いますが、ほとんどの受験生にとって生物の試験では時間が足りなくなるのは明らかです。その対策として大切なのはメリハリをつけた前文の読み方です。具体的には、
1.問題の方向性や新たな知識・用語をきちんと読み取る。
2.内容を図や絵で視覚化する。
3.設問から読む。
などが挙げられるでしょう。
ただし、解けないな、と思ったときには前文を読み直すと意外とヒントがきちんと書かれていて、それを見落としていることがあるので、そういう時は読み直す心構えが大切になります。
また、問題数をこなしていけば追々わかってくるでしょうが、前文を読まずに解答できる設問も多く、基礎知識がいかに重視されているかを感じることができます。出題は教科書の範囲内からなので、教科書に書いてある内容は確実に理解し、疑問点があればすぐに質問するか調べるかして解消しておきましょう。しかし、前文に説明を加えた上で、教科書の範囲外である最新の研究範囲も出題されることはあります。そこで、普段から生物に関するニュースに関心を持ち、調べてみるとよいでしょう。ただし、知っている内容だからといって、思い込みで解いてしまうと思わぬ間違いをおかすことがあります。知っている内容であるときこそ、注意深く前文を読むようにしましょう。
実験考察は非常に大切です。また、実験結果を表す図を読み取る力も大事です。
さて、実験はそれぞれを比較することで情報を与えてくれます。「注目している部分以外の条件を同じに揃え、注目する部分を変えていくことで結果が変わる⇒そこが結果に影響を与えると結論付けられる」という流れさえしっかりと理解しておけば大丈夫です(対照実験の基本ですね)。
具体的には、
という二つに注目することです。基本的に生物の実験はこの積み重ねで成り立っているようなものです!自分で実験を構築する時もこのようなことに気をつけるとよいですね。
さらにもう一つ付け加えるならば、
という点です。
また、論述においては現代文で解答を書くのと同じように気を使い、「どこまでが前提として認められていて、どこからを解答に含めなければならないのか」、「問われていることは何なのか(理由なのか部位なのか現象なのか、など)」など、答えるべきことをずらさないようにしましょう。
生物の論述でしばしば出題される設問があります。以下のようなものです。
Q.ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官の起源は、原始的な真核生物の細胞内に寄生した原核生物だという説がある。その説を支持すると考えられる事実を2つ答えよ。(2009年度東大で出題)
A.・ミトコンドリアや葉緑体は、核とは異なる独自の環状のDNAを持ち、分裂して増えること。
・ミトコンドリアや葉緑体は、二重の膜に包まれていること。
演習を積んだ人ならどこかで見たことがあるかもしれません。こうした問題は基礎知識の確認なのです。このような設問に対応するためには、教科書の内容を正しく理解しておく必要があります。教科書を読む際には、1ページに一つ質問を見つけるような気持ちで読んでいくとよいでしょう。普段から「なぜそうなるの?」「これはどういう意味?」などと考えながら読んでいくことで知識も定着しやすくなりますし、そうした姿勢は、生物学的意義を考える問題など、他の論述問題を解くうえでも非常に役立ちます。大学に入ってからの勉強にもつながってくると思います。
もうひとつ、論述問題を解くうえで非常に重要なことがあります。先ほども書きましたが、「設問の要求に沿って簡潔な解答を書く」ということです。どうしても多くの情報を詰め込みたくなりますが、自分の知識をいくら並べて書いても、設問の要求から外れた解答は点数をもらえません。そればかりか、設問で問われていないことを書くと、問題が理解できなかったのではないか、という悪印象を採点者に与えかねません。時間を短縮して高得点を取るためにも、設問の意図をよく理解し、なるべく簡潔に解答を仕上げることを心がけましょう。
さらに、受験用のテクニックになるかもしれませんが、忘れないでいただきたいのは、「論述とはいえ配点は最大でも3点ほどである」ということです。解答しにくい論述問題で詰まって時間を浪費するより、その問題を飛ばす覚悟を持って、他のところの見直しやもう一方の教科に時間を回したほうがよい可能性があります。
詳細にこれについて書くと現代文と同じ内容がたくさん出てくる可能性が高いので、簡単に説明します。
東京大学の近年の入試世界史の問題は、第一問が450~600字程度の大論述、第二問が60~120字程度の中小論述と一問一答の混合、第三問が一問一答または30字程度の小論述という形式で出題されています。
初めて過去問を見たとき、目が行くのはおそらく第一問でしょう。東大入試の中で最多の記述量とされている第一問は受験生に十分すぎるインパクトを与えると思います。しかし、東大入試において第一問だけが重要な問題というわけではありません。第二問、第三問への対策も非常に重要です。むしろ、第二問、第三問への対策が第一問対策の前提といっても過言ではありません。
第一問において求められるのは、問題の要求に応じて時代・場所ごとに知識を取捨選択する力と、その知識を論理的に構成する力です。第一問対策はすなわち、要求通りの知識上のポイントを含んだ論理的な文章を構成する練習であり、知識の詰め込みが終わっていない段階では対策をしても仕方ないのです。
一方、第二問や第三問は原則知識さえあれば解ける問題です(ただし第二問は論理性を求められる問題もあります)。第二問、第三問を解けないのに、第一問を解けるはずがないということです。
つまり、東大入試世界史の対策は知識の補充→論理的文章の構成練習という流れが絶対であるということです。まずは、知識の補充に努めることを年間を通じて忘れないでください。
知識の補充において求められる作業は、単語の暗記と、マクロな視点からの通史の整理です。世界史においては、各地域間の密接な影響関係がどの時代においても重要となってきます。ある出来事が、別の地域に影響を与えることは世界史において日常茶飯事です。その出来事ごとのつながりを整理するのが重要な作業となってきます。地域ごと、時代ごと、テーマごと……。様々な切り口から、世界史を俯瞰してみましょう。
以上の視点をもって対策を行えば、東大入試世界史の問題は恐るるに足らぬものです。対策を行えば行うほど、安定して自分に点数をもたらす頼れる武器となってくれるはずです。この本が、少しでも皆さんの受験の一助となることを願ってやみません。
世界史Bの範囲から出題される。
毎年大問3題の形式。
世界史の勉強法は2パターンあります。教科書や参考書の熟読によって全体の流れをつかんだ後に、一問一答で細かい知識を詰め込むパターンが一つ。一問一答で細かい知識を詰め込んだ後に、教科書や参考書を熟読して覚えた単語を流れに沿って整理するパターンがもう一つ。自分に合うほうを勉強する中で選んでいってください。ただ両者に共通して、インプットした知識を地域ごと・時代ごと・テーマごとにアウトプットする努力は必要です。例えば王朝の変遷をまとめたり、民族の移動をまとめたり……。様々な切り口から知識を整理してみてください。このインプット→アウトプットの流れが知識の習得の近道です。
また、知識は細かく覚えるに越したことはありません。第二問、第三問で必要になるからということは言うまでもないですが、第一問対策においても細かい知識は自分の武器となってくれます。確かに450~600字という字数の中でマクロな視点での世界史の整理が求められる第一問では、細かい史実や経緯に言及している余裕はないのですが、指定語句の中で細かい知識が問われることもあります。また、直接問われないような細かい知識を補充することによって、歴史の大きな流れをより理解できるという面もあります。ヤマをはったりせず、全範囲くまなく知識を習得するようにしましょう。分からない単語が出てきた際に用語集や教科書を用いて確認する習慣をつけると、効果的な学習ができるかと思います。
基本的に論述の練習は過去問を用いて行いましょう。東大の要求水準をストレートに示してくれるという意味で、過去問はやはり最高の教材です。大手予備校の模試や論述問題集よりも、過去問に取り組むことを重視しましょう。そして、問題に取り組んだ後は必ず添削をしてもらい、客観的に言葉の使い方や論理構成が正しいものになっているかを確認してもらいましょう。添削を受けた後の復習では、添削時に教えてもらった上手な文章表現を積極的に「盗む」よう心がけましょう。そしてもう一度書き直してみることをおすすめします。
東大世界史の問題と対峙したとき、最も目を引くのはおそらく第一問、いわゆる大論述でしょう。他大学では見られない字数であるのはもちろん、解答するよう要求されている事柄のレベルも非常に高いです。では、その大論述にはどのように取り組んで行けばよいのでしょうか。これは、どのような問題が出題され、どのように試行し解答を作成していくのか、のプロセスを実際に見ていただいたほうが早いと思いますので、以下に東大の頻出テーマの1つである帝国主義関連の過去問(2008年度)を取り上げます。
1871年から73年にかけて、岩倉具視を特命全権大使とする日本政府の使節団は、合衆国とヨーロッパ諸国を歴訪し、アジアの海港都市に寄航しながら帰国した。その記録『米欧回覧実記』のうち、イギリスにあてられた巻は、「この連邦王国の……形勢、位置、広狭、および人口はほとんどわが邦と相比較す。ゆえにこの国の人は、日本を東洋の英国と言う。しかれども営業力をもって論ずれば、隔たりもはなはだし」と述べている。その帰路、アジア各地の人々の状態をみた著者は、「ここに感慨すること少なからず」と記している。(引用は久米邦武『米欧回覧実記』による。現代的表記に改めた所もある。)
世界の諸地域はこのころ重要な転機にあった。世界史が大きなうねりをみせた1850年ころから70年代までの間に、日本をふくむ諸地域がどのようにパクス・ブリタニカに組み込まれ、また対抗したのかについて解答欄(イ)に18行(540字)以内で論述しなさい。その際に、以下の9つの語句を必ず一度は用い、その語句に下線を付しなさい。
インド大反乱 クリミア戦争 江華島事件 総理衙門 第1回万国博覧会
日米修好通商条約 ビスマルク ミドハト憲法 綿花プランテーション
まず、要求されている事柄の確認です。第3段落にあるように、「1850年ころから70年代までの間に、日本をふくむ諸地域がどのようにパクス・ブリタニカに組み込まれ、また対抗したのかについて」論述するよう求められています。
次に、リード文の分析を行いましょう。第3段落冒頭には、「世界の諸地域はこのころ重要な転機にあった」とあります。直後のリード文の「世界史が大きなうねりをみせた」は前文の言い換えとも捉えられます。では、この時期どのような転機、うねりがあったのでしょうか。それは、1850年ごろから70年代とそのあとの時期とを比較することで見えてきます。例えば、1850年ごろから70年代はリード文にもあるように、イギリスは圧倒的な工業力(世界の工場)、影響力を誇り、パクス・ブリタニカと呼ばれる状態を形成していました。この時期に、イギリスはその力を背景に世界を主権国家体制化に組み入れていきます。ここが、「組み込まれ」の部分でしょう。しかし、その一強状態というのは長くは続きません。他の強国がイギリスへの対抗意識を明確にし、対抗近代化を行っていくからです。これにより、力をつけた少数の強国が世界全体を分割していく、いわゆる帝国主義の時代へと突入していきます。ただし、そのプロセスや方法はイギリスと異なるところも多々見受けられます。(e.g.フランスでの国民国家の誕生など)
さて、整理すると、この問題は4つのパートに分けられると思います。1.イギリスが覇権を握った頃、2.そのイギリスが主権国家体制を広げる頃、3.他の強国が対抗近代化を行った頃、4.他の強国が主権国家体制を広げる頃、の4つです。そして、指定語句を見ると、きれいにどれもがこの4つのいずれかに属すと思います。ここまでくれば解答はすぐそこです。
いかがだったでしょうか。第一問が群を抜いて難しいのは、単なる知識の羅列をしてはならず、何が聞かれているのか、どう答えればよいのか、その指定語句が指定されているのはなぜか、といった様々な事柄をリード文から汲み取り、正確にそれを処理しなければならないからに他なりません。これをなしうるためには第二問、第三問レベルの知識は前提となってきます。第一問が気になる気持ちはわかりますが、まずはその土台となるほかの問題の対策をきっちりするようにしましょう。
東京大学の入試における日本史科目(以下、東大日本史と呼びます)は、他大学の日本史の入試問題と比べて異質なものです。
まず東大日本史の特徴として、論述に特化している点が挙げられます。京都大学など多くの国公立大学では「一問一答+論述問題」の形式をとっており、早稲田大学や慶應義塾大学などの私立大学では細かい知識が要求される一問一答が問題の大半を占めることも少なくありません。その一方で東大日本史は、ごくまれに用語の単答問題があるものの、すべての問題が論述問題で構成されている場合がほとんどで、制限時間内に解ききることを課されている受験生は素早く文章を構築する必要があります。
また、東大日本史には問題をみた受験生がみな気づく「異質さ」があります。それは「○○を答えよ」という設問以外に、文章や史料、表やグラフといった資料が提示されているところです。多くの受験生は初めて東大日本史の問題に対峙した際、何をすればよいのかわからず戸惑うことになります。受験生が解答を作成する際に重要となるのが、与えられた資料のなかで「何が起こっているか」を理解する分析力と、その分析で得られたものと手持ちの知識を辻褄の合う形で融合させる論理力、そして社会科学的な用語を用いてその論理を抽象化する文章力の3つです。これらは歴史研究の現場において必要となる力であり、それはすなわち東大日本史と対峙する受験生は「研究者の姿勢」をもってして問題に臨まなければならないということを意味します。
このように東大日本史には、単なる「歴史」の勉強、すなわち歴史用語を暗記するだけの勉強では到底太刀打ちできません。この高いハードルを乗り越えるためには、正しい勉強計画を早めに立て、それを着実に実行していくことが不可欠です。逆に言えば、付け焼き刃的な試験対策では合格点(もう一つの地歴科目との兼ね合いはありますが、およそ40点程度だと思います)は奪取できないということです。
かの有名な孫子は「彼を知り己を知れば百戦して危うべからず」と言い残しました。以下の文章を読んで「彼を知り」、加えて自身の状況――知識不足or論理力不足or分析力不足――を見定めることで「己を知」って継続的な勉強の中でその改善に努めれば、必ず合格点を勝ち取れるはずです。皆さんの努力に期待しています。
日本史Bから出題される。
大問4題構成。(ただし、2002年には大問3題構成での出題がなされた。)
では、まず東大日本史の内容面における特徴を見ていった後に、実際に問題を解くのに必要な「論理的思考力」をどう身につけていけばよいか、その「戦略」を説明していくことにします。
文学部の日本史学科の先生方が出題者となることがほとんどであるため、東大日本史では各人の専門分野を前提に最近の研究成果を投影した問題が多くなっています。以下に示した問題では、いずれも近年特に注目されている研究テーマが取り上げられました。縄文・弥生時代からの出題は極端に少ないです。(単独での出題は1982年度のみ)
受験生はこれらを踏まえた上で戦略的な準備をすることが不可欠です。
テーマ(出題年度)
東大日本史の試験においてもっとも差がつくのが「論理的思考力」です。東大日本史では、与えられた文章・表・史料などの分析(抽象化・比較)を求める問題が非常に多いです。実際に1題見てみましょう。
次の(1)~(6)の文章を読んで、下記の質問A・Bに答えなさい。解答は、設問ごとに改行し、設問の記号を付して記入しなさい。
設問
(2008年度 第1問)
もしこの問題が単なる「古代国家における東国の役割について述べなさい。」といった問題だったら、何種類もの解答が存在することになります。しかし東大日本史では、冒頭の「(1)~(6)の文章を読んで設問に答えなさい。」という一文があるため、解答に与えられた文章(条件文とよく言われます)を反映させる必要があります。
したがって本問の解答で(1)~(6)の内容に合致しない事柄をつらねても全く点数は期待できません。逆に言えば、(1)~(6)の内容から問題に必要な要素を見つけ出し、それを上手に抽象化すれば高得点が取れる問題でもあるのです。
具体的に設問Aについて考えてみましょう。条件文の中から解答に使えそうな部分を抜き出し、それを抽象化していきます。
これをつなぎ合わせると、以下のような解答例が出来ます。
(解答例)
A国造を媒介として国家に奉仕した東国の人々は、平時には官人として王宮に出仕し戦時には軍事力の供給源とされた。さらに奈良時代以降も天皇の警護や辺境の防備を担う軍事的役割が重視された。(3行=90字)
このように、与えられた文章にしっかり向かい合い、それを分析・抽象化するという論理的思考力こそが東大日本史における最重要な能力であるのです。このことを絶対に忘れないようにしてください。
「論理的思考力」こそが東大日本史受験において最重要だということはわかっていただけたことだろうと思います。ではその「論理的思考力」をどのように身につければよいのでしょうか。
まず「論理的思考力」を身につけるために欠かせないもの、「基礎知識」についてです。確かに東大日本史は論述4問から構成されてはいますが、漫然と論述問題を解くだけで解けるわけではありません。論述を書くためにはある程度の日本史の「基礎知識」が必要となってきます。「基礎知識」というと細かい語句をどれだけ知っているかといったイメージがつきまといがちですが、東大日本史における「基礎知識」はそうではありません。東大日本史における「基礎知識」とは語句はもちろん、時代の特徴、政策の背景、経済的な視点といったもの全てです。全てと言ってしまうと途方に暮れてしまうかもしれませんが、要求される範囲は教科書が全てです。大学受験に際して高校教科書を軽視する受験生も多いですが、地歴科目(特に日本史・世界史)の東大対策の学習においては、高校の教科書をしっかりと読み込むことこそが全ての基本になってきます。
なぜ「基礎知識」が必要なのか、それは問題を解く際の視点が増えるからです。語句だけでなく、時代の流れも含めて把握することで、問題を多角的に吟味することが可能になるのです。
さらに教科書を読み込む重要性について補足します。新課程版の日本史の教科書は、新しい歴史的見解に基づいて記述されているので、それを熟読すると先ほど述べたような「最近の研究対象」とは何かがわかることでしょう。加えて、新課程版『詳説日本史B』や『新日本史』(ともに山川出版社)の執筆には東大の教員が数多く携わっており、いわば教科書は入試の出題者が受験生に出した課題文です。
「基礎知識」を身につけたら、次に身につけるべきは「論理的思考力」です。これは論理的かつ完成度の高い過去問と向かい合う練習を積むことで高めることが可能です。問題の要求はなにか、自分の持っている「基礎知識」は問題の要求のどの部分に生かされるのか、こうした視点から問題演習に取り組むことが欠かせません。過去問演習の必要性は知識補充の面からも語ることができますが、この「論理的思考力」育成の観点からも語ることができるのです。
そのためにも、ある程度知識が固まったところで見切りをつけて論述対策をスタートしましょう。知識の完璧さを求めるよりも、問題を解きながら知識の穴を埋めたほうが効率はよいです。
まずは過去問演習の時期についてです。オーソドックスな開始時期は夏休みが終わった頃からでしょう。これに関しては人それぞれですので、英数の学習進度に合わせて適宜調節するとよいと思います。
ここで注意してほしいのは演習の順番です。手元に教科書がある人は教科書の近現代のページをつまんでみてください。なんと教科書の半分弱の分厚さです。これが意味するところは単純に学習に時間がかかるということです。
これと東大日本史の特徴である「古代と近現代は知識が不可欠な問題が多い」ということを合わせて考えてみましょう。そうすると、古代、中世、近世、近現代の学習、演習順序はどうすればよいのでしょうか。
おそらくこれに対する答えも人それぞれだとは思いますが、個人的には近現代(一番学習に時間がかかり、かつ知識が不可欠であることが多い)→古代(知識が不可欠であることが多く、かつ易しい問題も多い)→中世→近世で行うことをおすすめします。もちろん学校の進度の都合もあるでしょうから、必ずしもこの順番がよいとは思いません。しかし、各分野の特徴を考慮した上で、自分にあった勉強の順番を考えてみる必要があります。
過去問に関しては40年分程度解けば十分でしょう。1970-80年代の問題は形式が少し異なるので、そちらの優先順位は低いです。近現代に関しては、一橋大学の日本史の問題が知識の確認には丁度よいので、時間に余裕があるのであればそちらを活用するのもよいかもしれません。
もう一つ、時間配分についても述べたいと思います。世界史と併せて選択している人であれば60分、地理と併せて選択している人であれば70分がおおよその目安でしょう。
ここで必要になるのは大問ごとの「時間対効果」を最大にすることです。換言すれば、簡単な問題には時間をかけずに高得点を取り、難しい問題では深追いしすぎずに点数の最大化を図るということです。
このためにも日頃の過去問演習においては、自分の解いている問題の難易度と時間を意識しつつ、自分の得点が最大になるような取り組みを心がけてほしいと思います。過去問演習についての補足事項は「教材の活用方法」にも載せましたので、そちらも参照ください。
地理という科目に対して皆さんはどのような印象を持っているでしょうか。細かい地名、工業都市の特徴、気候区、土壌、気候、…とにかくいろんな分野の知識を覚えなければならないと思う人、どこから手をつければよいか見当のつかない人、そもそもあまり地理に印象がない人など様々でしょうが、地理は単に分野ごとに知識を覚えればそれで終わりというものではありません。
各分野は別々に存在しているのではなく、つながっているのです。
地形や森林分布、土壌は、降水量や日照など気候の影響を受けて現在の状態に至っています。産業に目を向けてみると、人間は何も考えず農業を営んだり、工業を発達させたりしたわけでないことに気づきます。長年の経験から、自らの住んでいる地域の気候や土壌などの自然環境に適した作物を栽培し、それを食糧として生き延びてきました。さらに年月が経つと、商業に携わる人々が増え、人々はより効率的により多くの作物を栽培するために灌漑や機械の導入などの技術を開発しました。さらには、各地で取れる鉱物や水資源の分布、広大な土地の有無や大消費地との距離、交通の便などを考慮し、各地でより有利な工業を発達させてきました。そしてこのようにして産業を発達させたことで人口が増えると、既存の都市を拡大し、人が住んでいなかった地域も開発して新たな都市を作り出してきました。それによって、現在では地球温暖化や熱帯雨林の減少などの環境問題、スプロール現象などの都市問題が生じてきています。
ざっとこのように見てみるだけでも、地理は地球全体の仕組みやそれを活かした人間の営み、さらにそれによってもたらされる現象を、つながりをもって捉えるものだと感じてもらえたのではないでしょうか。これが地理で論述問題が出題されやすい理由なのです。あらゆることをただ覚えるのではなく、因果関係や背景などを含めてしっかり理解するよう心がけましょう。この本で、少しでも地理のあらゆる部分がつながっていることを感じ取ってもらえたら幸いです。
では、早速東大地理についてみていくことにしましょう。
地理B の範囲から出題されます。
毎年大問3題の形式。各大問がA~Cの3パートに分かれ、さらに小問が含まれる場合もあります。客観問題(ex.短答問題)・論述問題の両方が出題されます。
日本史や世界史と違って、大問ごとに扱われる時代が一定だったり問題形式が変わったりはしません。どの大問も同じ形式の問題が出題されます。
大問3題が出題されます。各大問はA&BかA~Cのパートに分かれていて、さらに各パート中に小問が含まれています。客観問題(ex.記号問題,判定問題)・論述問題の両方が出題されます。
論述問題1問あたりの解答行数は2~3行程度と少ないですが、問題数が多いため地理全体での解答行数は多くなります。最近は増加傾向にあり、近年は合計30行前後で推移しており、世界史地理選択の人は時間内に解ききるのが難しくなってきています。したがって、本番ではわからない問題は止まらずに飛ばし、一通りすべての問題を見終えてから、残り時間の中でわからなかった問題の解答欄を埋めていくようにするとよいでしょう。すべての問題で満点を目指す必要はありませんし、難しいと思った問題は割り切って部分点を狙う解答を書くという判断も、時間配分を考えると必要です。
また、近年では解答欄の使い方によっては最後に解答用紙の行数が足りなくなる場合もあるので、2~3行指定の論述問題では(1)など設問番号を書いたらできるだけ改行せずに答えを書くようにする等、工夫する必要がありますね。
論述問題は字数制限が設定されている場合がほとんどなので、できるだけポイントを複数詰め込むように意識して解答しましょう。例えば「2行(60字)以内で述べなさい」という問題を1行半ほどで書き終えてしまった場合は何か必要なポイントが抜けている可能性があります。感覚的には1行(30字)に2ポイント盛り込むことを意識するとよいでしょう。
さらに指定語句が存在する問題では必ず全ての語句を用い、かつ下線も引き忘れていないか確かめましょう。
どの問題を解くにもある程度の知識が必要なので、まずは知識のインプットが必要不可欠です。そこで問題なのが「何をどれだけ覚えればよいか」ということです
学校の授業で一通り地理の全範囲について十分解説してくれる場合は、論述の頻出テーマの前提となる用語などの知識に関してはしっかり学校の授業を復習して理解しておきましょう。その際自分で作成したノートや書き込みのある地図帳、資料集は三種の神器になります。そしてその上で、東大特進の授業を受けている人ならば高橋和明先生の授業と問題演習で取り扱われていて知らなかった知識、論述テーマをしっかり覚えていきましょう。新しく学んだことをノートなどにまとめて入試直前に見返せる状態にしておくといっそうよいですね。
そして、地理を自習で行う場合は、とにかくセンター用の参考書に載っている知識は一通り覚えるのが無難でしょう。最終的にそれらの知識は常識になっていなければならないので、早いうちに丸暗記ででも覚えて知識を固めるのがおすすめです。
ただ、勉強をしても知識が定着しているか不安になる人もいるでしょう。
十分な知識を持っているかを確認したいのであればセンター試験形式の地理の問題を解くようにしましょう。
センターの過去問や模試でコンスタントに80点台後半がとれる人は、二次試験で40点は狙えるはずです。というのも、二次試験の論述に使われる知識とセンターに必要な知識は量も深さも基本的に同じだからです。
逆に言えば、センター模試などで80点台後半がとれないようならどこかの分野の知識が抜けている、十分でないなど、二次試験を解く準備が整っていない可能性があるので、資料集等で再度インプットを図るようにしましょう。
ちなみによく生徒の皆さんから、「地名ってどの程度覚えればいいんですか?」という質問を受けます。これに関しては、高橋先生が「中学で習うレベルのものと過去問で出てきたものを覚えればよい」と仰っていたので、それを目安にするとよいでしょう。言い換えれば、系統地理分野で習うものと、河川や山脈などに関しては世界全図に載っているものといったところでしょうか。2013年度の地理では「新居浜」という、受験生では知らない人も多いであろう日本の地名を答えさせる問題がありましたが、地理では試験の最中に知らないことが出てくるのは当然のことなので過度に気にする必要はありません(心配な人は高校受験用の参考書で日本地理を勉強すれば網羅できますがあまり効率的とはいえないかもしれません)。
気候区の名前や地名など語句レベルの知識もとにかく覚えるしかないでしょう。ただし、つながりのある知識はできるだけ意識してつなげて覚えるようにしましょう。例えば、「ウクライナはBS気候」「ウクライナにはチェルノーゼムが広がっている」「ウクライナの主要作物は小麦」と気候・土壌・農業という分野に囚われて別々に知識を覚えるのではなく、「ウクライナは中緯度高圧帯下にあるため降水量の少ないBS気候だが、チェルノーゼムという肥沃な土壌が広がっているため、小麦栽培が行われている」というように、各事実の関連性を踏まえて文章的に覚えるようにしましょう。論述問題のキーである因果関係を意識しながら知識を覚えることで論述問題において必要な地理的思考力が大きく鍛えられます。
また、東大特進のテキストや過去問の解答に載っている知識については細かいと思えるものでもできるだけ覚えるようにする姿勢を持つのがベストでしょう。
さて、ある程度知識固めが進んだら平行して問題演習も行いましょう。演習の際、基礎知識がしっかり身についているかどうか、思考問題を上手く考えられるかどうかを意識してください。そして問題を解いたら必ず答え合わせ(論述の場合は自分で自分の答案を添削する)をし、解説を読み込むようにしましょう。
世界史や日本史とは異なり地理の論述に特別な訓練が必要(ex.問題文の読み込み、文章の組み立てに気をつけなければいけない)ということはあまりありません。試験で問われる内容には限度がありますし、解答に盛り込むべき要素が過去問と一緒だったということもあります。つまり思考問題であってもどこかの問題集や過去問で見たことがあるということも大いにありうるので、問題を復習する際には「これはこう考えて、こういうポイントを書くんだったよな~」と思い出せるようにすることがとても大切です。
どの科目においても言えることですが、一番参考になるのは過去問です。地理の勉強もとにかく過去問を中心に置きましょう。東大の過去問は2000年度以降の分はこなす価値があると思います。それよりも前の問題は問題傾向が全く違うので、時間があれば解答を読む程度で問題ないと思います。古い問題の中には制限字数などの問題形式が今と異なっているものもありますが、2000年度以降の過去問に関しては、本番までには「問題文を見ればその問題で答えるべきポイント(東大特進のテキストや問題集の演習問題で言えば要点整理の項目)を頭の中で思い浮かべられる」という状態になるまで繰り返し勉強するべきだと思います。
論述問題の演習においては各ポイントがどの視点から書かれているのか、またポイント同士の関連はどうなのか(因果関係、対比、並列など)に注意しながら覚えることが肝心です。例えば、「アメリカの人口増加率が高いのはなぜか?」という問題に答えるとしましょう。解答は、「1.ヒスパニック系などの若年層の移民が流入してきて」「2.そのヒスパニックは人口抑制に否定的であるカトリックが多いため、出生率も高いから」となります。この問題ではポイント1.は社会増加の視点から、2.は自然増加の視点から書かれており、また、1.→2.には因果関係が成り立っています。このようにポイントを洗い出した上でそれぞれのポイントがどのように関係しているかを考えるようにすると論理的に整った解答が書きやすくなりますし、初見の問題が出たときの類推にも非常に役立ちます。また、頻出のものはノートに書き溜めて見直せるようにするとなおよいでしょう。