英語民間試験、東大など8割見送り 国立大21年春入試
2020年度開始の大学入学共通テストで英語民間試験の活用が見送られたことを受け、国立大が29日までに個別試験での対応を公表した。学部入試を実施する82校のうち、21年春の一般選抜(一般入試)での活用を見送る大学は65校で全体の約8割に上った。活用する大学16校もほぼ全てが出願条件とはしない。共通テストでの活用見送り前に比べ、民間試験を使う割合は大幅に縮小した。
共通テストでの見送りに伴い、大学入試センターが民間試験の成績を集約して大学に提供するシステムの導入は中止された。ただ民間試験の成績を独自に使うかの判断は各大学に任されていた。国立大学協会は29日までに各大学に活用方針を示すよう要請していた。
一般選抜で民間試験を一切活用しないのは東京大や京都大など65校で全体の79%に上った。国が見送る前、国立大は95%が成績提供システムを活用予定だった。システムが使えなくなり、大半が方針を転換した。
見送りの理由では多くの大学が「独自に成績を提出してもらい、集計するのは困難」などを挙げた。一般選抜に比べて受験者が少ない学校推薦型選抜などでは民間試験の成績を使う大学は多い。
民間試験の成績を受験生から独自に取り寄せて活用する大学は、一部の学部などに限定して使う場合も含めて16校になった。20年春の入試でも同様の方法で民間試験を使うなど、既に活用しているケースが多い。
うち15校は受験生が民間試験の成績を提出すれば共通テストの英語や個別試験の成績に加点するなどの措置を取る。ただ出願条件にはせず、受験を必須にしなかった。居住地域や経済状況で受験機会に差が出る点などを考慮したとみられる。
東京海洋大は一定水準以上の成績を出願条件にするが、一部学部では成績を提出できない場合は理由書の提出でも認める。「グローバル人材育成のために活用を始め、継続する方針」という。
東京学芸大は方針を29日には示さず、12月中旬に公表するとした。
民間試験は英語の4技能(読む・聞く・書く・話す)を試すため共通テストでの活用が決まった。しかし公平性などへの懸念が拭えず、文部科学省が見送りを決めた。
文科省は公私立大にも個別試験での活用方針を12月13日までに示すよう求めている。活用を見送る動きはさらに広がる可能性がある。
文科省は24年度の実施を目指し、新たな英語入試の制度をつくる考えだ。それまでの間、共通テストの英語は大学入試センターが作成する「読む・聞く」の試験のみとなる可能性が高い。国際社会で活躍できる人材を育てるため、英語を「話す・書く」力をどう測り、どう育てるかは各大学に委ねられる。
一部の大学は英語4技能の育成への取り組みを始めている。京都工芸繊維大は当初から、受験機会の公平性への懸念などから民間試験を活用しない方針だった。一方でコンピューターを使ったスピーキングテストを開発し、学内の期末試験で使っている。「今後も英語4技能を伸ばす教育に力を入れていく」という。
東大は高校生や受験生向けに「キミの東大」というサイトを開設。英語で実施される授業を動画で紹介したり、必要な英語力を解説したりしている。福田裕穂副学長は「勉強の仕方を自分で考えてもらえるようにしている」と説明する。
河合塾の亀井俊輔・教育情報部統括チーフは「大学入試で4技能が重視される流れはあり、今後も変わらないだろう。国公立の個別試験でも会話文や実用的な文章を読ませるなど、民間試験を意識したような問題が増えている」としている。