大学入試改革、英語民間試験だけではない 記述式こそ問題だ

初鹿明博・衆院議員
初鹿明博氏=須藤孝撮影
初鹿明博氏=須藤孝撮影

 11月1日、萩生田光一文部科学相は来年度からの実施を予定していた大学共通テストに英語の民間試験を活用することを延期すると表明しました。

 学校関係者や当事者である現役高校生が声を上げたことにより、世論の関心が高まってきたところで萩生田氏の「身の丈」発言があり、このまま強行することは困難だとの政権全体での判断になったのでしょう。

 来年度の実施が延期になったことでこの問題は一段落ついたと思っている方も多いと思いますが、そうではありません。むしろ、本丸がまだ残っていると私は考えています。

記述式こそ問題だ

 延期を表明した記者会見で萩生田氏が明らかにしたのは、来年度からの英語民間試験の活用は延期する、24年度からの実施に向け1年かけて検討する、そして、来年度から導入される国語、数学の記述式試験はこのまま実施するということです。

 英語民間試験の活用を断念したのではなく延期にすぎないことも問題ですが、24年度からとしているので時間的な余裕があります。

 しかし、来年度から予定通り実施すると萩生田氏が強調した国語、数学の記述式についてはもう時間がありません。そして、むしろこちらの方が受験生にとってマイナスの影響が大きいのです。

 事実、英語民間試験の導入延期が決まっても、これで良かった良かったとはならず、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などでは現役高校生が記述式も問題だ、こちらもやめてくれという声をあげはじめています。

 これまでのセンター試験はマークシート方式で行われてきましたが、今後は知識偏重から「判断力、思考力、表現力」を重視する入試に転換するために記述式試験を導入すると文科省は説明しています。

 高校生活の中で「判断力、思考力、表現力」を伸ばしていくことは必要です。しかし、それを大学入試の50万人が受験する共通テストで到達度を測るかどうかは別問題です。50万人の試験の採点を迅速にしかも採点のブレが出ないようにできるのでしょうか。

採点はベネッセグループ

 こともあろうに、文科省はこの共通テストにおける記述式試験の採点業務を大学入試センターで行わず、民間に委託するとしています。

 そして、その委託先として選ばれたのが株式会社学力評価研究機構というベネッセ・コーポレーションの関連企業です。5年契約で契約額は約61億円。この金額が妥当かどうかは判断がつきかねますが、英語民間試験に続き、ここでもベネッセの登場ですかと感じるのは私だけではないはずです。

 公平公正が問われる大学入試共通テストの採点を民間企業に任せること自体問題だと思いますが、それに加えて、50万人分の採点をする採点者の質を担保しつつ、これだけの大人数を確保できるのかはさらに疑問です。

 衆議院文部科学委員会に参考人として出席したベネッセの山崎昌樹・学校カンパニー長は採点者はアルバイトの場合もあると明らか…

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衆院議員

1969年生まれ。衆院議員秘書、東京都議を経て、2009年衆院初当選。比例東京、当選3回。立憲民主党。