英語新入試延期 受験生を翻弄した責任は重い

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 土壇場での方針転換は極めて異例だ。受験生を翻弄ほんろうした文部科学省の責任は極めて重い。

 2020年度からスタートする大学入学共通テストで、英語民間試験の活用が見送られることになった。萩生田文科相は「自信を持ってお勧めできるシステムになっていない」と述べ、陳謝した。

 試験に向けて努力を積み重ねてきた高校生の間には、困惑が広がっている。試験開始まで5か月を切っての延期は、失態と批判されても仕方がない。

 英語民間試験は、大学入試改革の目玉だった。受験生は、4~12月の間に2回まで、民間試験を受けられる。実用英語技能検定(英検)やTOEFLなど6団体が実施する7種類の試験から、自分で選ぶという方式だ。

 ただ、当初から、実施会場が都市部に偏り、地方在住の受験生には負担が大きいとの声があった。受験料が高額で、家計が苦しい受験生は不利益を被りかねないとも懸念されていた。

 加えて、試験日程や会場の詳細がなかなか決まらず、9月に入って、全国高校長協会が延期を求めていた。準備期間があったにもかかわらず、試験の実施環境を整えられなかったのは問題だ。

 さらに、「自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」という萩生田文科相の発言が、不信感を招いた。民間試験の活用にあたり危惧されていた有利不利を、是認したと取れる内容だった。

 経済的な格差を埋めて、教育の機会均等を図るべき行政のトップとして不見識極まりない。結果的にこの発言が、英語民間試験の見送りを決定づけたと言える。

 文科省は1年程度かけて、民間試験活用の是非を検討し、24年度の入試から新たな英語試験の実施を目指すという。ここは、立ち止まって考え直すべきだろう。

 英語の入試改革には、「読む・聞く・話す・書く」の4技能をバランスよく測る狙いがあった。その方向性は、間違っていない。

 だが、大学入試センター試験に代わる共通テストで、性格の異なる複数の民間試験の結果を合否判定に使う、という制度設計に無理があったのではないか。

 大学入試センターが自前で、適切に4技能を測る試験を開発するのも選択肢となろう。

 高校の現場では、英語のコミュニケーション力を育む指導が広がりつつある。生徒が身につけた英語力をきちんと評価できるテストを検討してもらいたい。

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877426 0 社説 2019/11/02 05:00:00 2019/11/02 05:00:00

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