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 大学入試改革の一環として2021年から大学入試センター試験の後継として始まる「大学入学共通テスト」を巡り、目玉だった英語民間試験と国語、数学での記述式導入が見送られました。実施目前の変更で、受験生や高校生は振り回された形。なぜ大学入試改革が必要とされ、どのように議論が進められたのでしょう。(太中麻美)

■脱「知識偏重」 多様な人材育成

 13年10月、政府の教育再生実行会議がセンター試験に代わる新テスト導入を安倍晋三首相に提言し、具体的な動きがスタート。一定の幅を持たせた段階評価とし、各大学2次試験では面接や論文など多様な選抜を求めました。

 中央教育審議会(中教審)は14年、20年度からの新テスト実施を下村博文文部科学相(当時)に答申。知識の活用力や思考力を重視する新テストを複数回行い、高校生の学力到達度をみるテストの実施も盛り込まれていました。

 背景には、大学進学率の上昇と少子化により実質的な「大学全入時代」が到来し、大学生の学力低下が指摘されていたことがあります。約30年前に比べ大学(学部)進学率が25%前後から53.7%(19年度)まで上昇する一方、18歳人口は約200万人から約117万人(同)に減少。知識だけでなく思考力や判断力を測る大学入試を導入し、多様な課題に対応できる人材育成を目指そうとしたのです。そのため「一発勝負」ではない実力を測る意図もありました。

■文科相失言発端 記述式など見送り

 当初から、高校や大学の関係者には「趣旨は理解できるが、大学ごとの受験生が数万人規模の状況で面接や討論での評価は可能なのか」などと実現性が懸念されていました。その後、国語と数学に記述式を一部導入する案が示されると「50万人以上が受験するテストなのに、限られた時間で公平な採点は困難では?」との声も上がりました。

 実現に向け議論を重ねる中で当初の構想は変容。16年3月、文科省の専門家会議が新テストの複数回実施を当面見送るなどとする最終報告をまとめました。

 英語では「読む・書く・聞く・話す」の4技能を測るため、複数の民間検定試験の導入が決まりました。しかし、これも「地方や離島など居住地によって受験機会に差が出る」「出題傾向の異なる民間試験を活用するのが妥当なのか」といった問題点が指摘されていました。

 こうした声に対し萩生田(はぎうだ)光一文科相が19年10月のテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と発言し政治問題化。記述式の採点に学生アルバイトが含まれる可能性が浮上し、批判を浴びました。結局、具体的な解決策を示せないまま21年の共通テストには英語民間試験や記述式が導入されないことになりました。

■英語の新試験 24年度実施目指す

 19年6月に発表されていた共通テストの問題作成方針は20年1月末に一部が変更。改革のメインが見送られ、センター試験からどう変わるのかが分かりにくくなりました。

 しかし、大学入試センターが行った試行調査をみると、問題傾向がかなり様変わりしていることがうかがえます。国語は、著作権法の条文や法律を基に作成された複数の資料を読み解く問題が出題されました。数学でも、階段の形を例に取り上げた三角比の問題や、文化祭でTシャツを販売する場面から利益が最大になる価格を求める問題がありました。英語の配点でもリスニングの配点が増え、リーディング(筆記)と同じ比率になっています。

 兵庫県内の予備校関係者によると、最後のセンター試験の受験生が傾向の変わる共通テストを警戒し、浪人しないよう志望校をワンランク下げる傾向があったそうです。

 文科省は1月15日、新たな入試制度を考える検討会議を開催。英語の新試験は24年度実施を目指しており、年内に結論をまとめる予定です。記述式は期限を区切らず、充実させる策を話し合います。試験制度を変えるには、少なくとも2年前に変更点を通知するルールがありますが、当初の内容を踏まえた共通テストを実施できるのかどうかは不透明な状況です。

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