「共通テストは競争試験」 大学入試センター理事長が見解

「共通テストは競争試験」 大学入試センター理事長が見解
前回に続き、WEB会議で行われた大学入試検討会議。中央は、発言する萩生田文科相
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 今後の大学入試について議論する文科省「大学入試のあり方に関する検討会議」の第6回会合が4月23日、WEB会議で開かれ、大学入試センターの山本廣基理事長が従来の大学入試センター試験と今年度から始まる大学入学共通テストについて、「大学入学者を選抜する競争試験であり、高校までの学習指導要領の達成度を測る資格試験ではない」との見解を表明した。また、同省は席上、全ての大学を対象に、大学入試における英語4技能試験と記述式問題の扱いについて、学部学科や入試形態の区分を踏まえた詳細な実態調査を行うことを明らかにした。

 検討会議では、これまでの会合で委員が順次意見発表を行っており、最後にオブザーバーとして出席している山本理事長がセンター試験と共通テストの現状をまとめた。

 山本理事長はまず、学力テストには、目的別に「学力調査」「資格試験」「競争試験」の3つがあると説明。センター試験と共通テストは、集団の傾向を分析する学力調査や、個人の達成度を評価する資格試験ではなく、個人の順位付けを目的とした競争試験だと位置付け、「高校における学習指導要領の達成度を測る試験ではない」と説明した。

 その上で、大学入試センター試験は利用大学が共同で実施する試験で、利用大学が行う入学者選抜の一部だという法律上の位置付けを確認。「大学教員の一部には、センター試験をやらされているとの認識があるが、自分の大学が行う入学者選抜だという位置付けを理解してほしい」と述べた。

 センター試験の利用大学数は私立大学の利用拡大によって昨年度に858大学・短期大学となり、同試験が開始された1987年度の148大学に比べ約6倍に増加。志願者数は2017年度で57万人を超え、さまざまな障害によって受験上の配慮を必要とする受験者も増加傾向で、昨年度には3119人に上ったことを説明した。

 センター試験から共通テストへの移行について、試験の実施と運営はほぼ同じだとした上で、基本的な考え方について▽センター試験の蓄積を生かしつつ、大学教育の基礎力となる知識・技能や思考力、判断力、表現力を問う問題を重視▽「どのように学ぶか」を踏まえ、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視――と変更点を説明した。

 報告の最後に山本理事長は、大学入学者選抜で測るべき学力について、「それぞれの大学のカリキュラム・ポリシー(CP)に沿った教育を受けるのに必要な学力などを有しているかを、それぞれの大学の責任で判定する手段の一つが入学者選抜試験。高校までの学習指導要領の達成度を測ることは目的の一部にすぎない」と結論づけた。

 質疑応答では、柴田洋三郎・公立大学協会理事(福岡県立大学長)が「高校関係者からは、資格試験にしてほしいとの要望もある」と確認を求めると、山本理事長は「センター試験と共通テストは、57万人に順番をつける競争型の試験といっていい」と明言。

 また、小林弘祐・日本私立大学協会(私大協)入試委員会委員長(北里研究所理事長)が「英語4技能のうち、『話すこと』は無理かもしれないが、『書くこと』を測るのは可能か」と質問すると、山本理事長は「英語4技能を測るのは、どこまでが『読むこと』でどこからが『書くこと』かを明確に分けられない。直接『話すこと』『書くこと』を測ることにはならないが、そういった力も測れるように、全体の中に溶け込ませたような作問にしている」と答えた。

 これまでの検討会議の協議で、昨年に共通テストへの導入が見送りになった英語4技能試験と記述式問題について、現状でどこまで大学入学者選抜に反映されているかを調べる必要性が指摘された。これを受けて、文科省はこの日の検討会議で、全ての大学・短期大学を対象に、昨年度に行われた大学入学者選抜の実態調査を行うことを明らかにした。

 学部学科や入試形態(一般選抜、AO入試、推薦入試)ごとに、センター試験と個別試験の役割分担、英語民間試験の活用状況、記述式の出題状況などについて、詳細な実態調査を行う。今後、検討会議の委員と共に設問を作成し、2カ月程度の調査期間を設定する。

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