大学入試、コロナで116校変更 実技中止や遠隔面接
文部科学省は27日、国公私立の大学・短大116校が、新型コロナウイルス感染対策で個別入試の中止や方法変更を決めたと発表した。志願者が多い大規模校も感染者向けの追試・振り替えなどの対応に追われる。大学関係者からは「コロナに限らず感染症が広がりやすい真冬の一斉受験は負担が大きい」との声が出ており、入試改革の議論にも影響を与えそうだ。
国公私立大の一般選抜(一般入試)は2月から本格化し、3月下旬まで続く。同省は各大学から報告があった入試の変更点をまとめ、ホームページで公開している。27日は22日までに変更を決めた大学93校、短大23校の変更点を学部学科ごとに掲載した。
変更は3密などを避けるのが目的だ。北海道大や山形大、立命館大は面接をオンラインに切り替え、東京芸術大は一部のピアノ実技試験を取りやめた。東京外国語大は遠隔地に住む受験生が日帰りで受けられるよう、試験時間を繰り下げた。流通経済大は感染者が多い東京都内の会場での試験を中止した。
個別試験自体を中止した大学もある。宇都宮大は小論文などの提出を求める共同教育学部以外は学力検査をやめ、大学入学共通テストの成績などで代替すると公表した。栃木県への緊急事態宣言の再発令が決まった13日に「実施できない可能性がある」と公表。21日に中止を決めた。
日本大や早稲田大など、志願者数の多い大規模校では、留学生や帰国者向けを除き大幅な変更の動きは広がっていない。コロナに感染した受験生向けには追試や別日程への振り替え受験を認めたり、共通テストのみで合否判定したりして対応する大学が多い。無症状でPCR検査が陰性ならば濃厚接触者の受験を認める大学もある。
試験直前での方法変更は受験生が混乱する。萩生田光一文科相は「感染防止策を徹底し、受験生の立場にたって各大学の個別試験を適切に実施してほしい」と強調。同省は22日、変更時は慎重に検討するよう大学側に通知した。国公立大の2次試験への出願は25日に始まっており、これから大幅な変更をする大学は少ないとみられる。
ただ、信州大が、緊急事態宣言が延長された場合、対象地域にかかわらず2学部の個別試験を中止し、共通テストのみでの選抜とする方針を示すなど、感染状況で変わる可能性がある。受験生は志望校のホームページをチェックするなど注意が必要だ。
コロナ下での受験をこなすため、各大学は密を避ける入試会場づくりなどに取り組んできた。受験生にとっても対策は負担で、インフルエンザも含めて感染症が流行しやすい真冬に受験をすることへの疑問の声は絶えない。
検討すべき案は少なくない。自宅のパソコンなどを使うオンライン受験も感染リスクの抑制には有効とされる。大学の入学時期を欧米で主流の秋に移行すれば、入試は冬を避けて春から夏に実施しやすくなる。政府の教育再生実行会議も昨年10月の高等教育ワーキンググループの会合で、大学の入学時期を4月以外に多様化させていくのが望ましいとの認識で一致した。
文科省は2024年度からの大学入試改革をめざし、有識者会議で議論している。萩生田氏は「来年度以降の入試日程や制度について、今回の実施状況を踏まえ、受験生が安心して入試に臨めるような仕組みを検討したい」と話す。今後はポストコロナ期の入試のあり方が焦点となりそうだ。