《国語》 設問別分析
【第1問】「評論文」木村敏「境界としての自己」→昨年並み
個体および集団における自他の境界と自己意識についての考察文。昨年よりもやや文章量が少なくなっている。また、頻出テーマである自己存在に関するもので論理展開が明快な文章であり、受験生としては読みやすかったのではないか。問1の漢字が昨年に引き続きやや難しいが、問2〜問5までは基本〜標準レベルの傍線問題。特に「指示語」に絡む問題が複数出されたことが特徴といえる。問6はここ2年、(i)(ii)に分かれていたが、今年は論の展開を問うもののみであり、マーク数も1つに減った。この形は2007年以来のものである。問5と問6の選択肢が3行ずつと長いが、難易度的には決して高くない。
【第2問】「小説文」井伏鱒二「たま虫を見る」→昨年並み
昨年より文章量がやや減り、内容的にも読みやすいものであった。しかし、主人公「私」のいろいろな時代の境遇を「たま虫」に投影する形で書かれており、その状況下での主人公の心情をうまく汲み取れるかどうかが勝負の分かれ目になった。昨年出された問5の「傍線のない問題」は出題されず、すべての問いが例年通りの設問形式、内容であった。問1の語句の問題で、文脈だけで判断すると間違えてしまうものが出題されるのも例年通り。問3と問5の選択肢が3行ずつと長いが、全体的に見てセンター試験の小説文の平均的な設問が並んでおり、難易度も昨年並みといえる。
【第3問】「古文」『真葛がはら』→昨年並み
本文は昨年より700字以上少ないが、受験生には見慣れない表現があり、それらに惑わされずに文意の流れを把握する力が必要とされる。問1は必修単語・文法の知識だけでなく、漢字の当てられ方や前後の脈略も見て解く必要がある。問2の文法は基本。問3〜6は本文内容との合致を確認すれば解答できる。問5の和歌の問題も主語や本文内容を問うており、昨年に続いて出題された問6の「表現の特徴」問題も、ほぼ内容合致問題と言える。
【第4問】「漢文」孫宗鑑『西よ(「余」の下に「田」)瑣録』→易化
問題文は215字で、ほぼ例年並み。内容的には、昨年度の論理的文章に比べ、人物の語る逸話的なもので、かなり読み易いものであった。問1の語の意味は2009年度から4年連続。問2の返り点と書き下し文の組合せ問題にプラスして問3の書き下し文の単独問題が出た分、全体の設問数が7になったと思われる。空欄補充が昨年に続いて出題された。問7に表現の特色を問う問題も出た。