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東大特進スタッフによる東大現役合格者の体験談

1. 進学選択とは?

皆さんは「進振り」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?正式名称を「進学振分け制度」といい、通称「進振り」と呼ばれていました。2015年度から「進学選択制度」に変更されましたが、大枠は変わりません。この制度は東大独特のものであり、かなり有名なので、東大に興味を持っている人なら一度くらいは聞いたことがあるかもしれませんね。ただ、まだ知らない人、知っていても正確にはわかっていない人も多いかと思いますので、具体的な話に入る前に、簡単に説明しておきたいと思います。

よく知られていることですが、東京大学は他大学のように入学の時点で一つの学部を選ぶという形式をとっていません。つまり、法学部や経済学部、理学部といった個々の学部の選択を受験の段階で行う必要はなく、これらの選択は入学後、正確に言えば2年次の夏休みに、それまでの成績と各自の志望に応じて行うことができる、という形式をとっているのです。この、2年S2ターム・Sセメスターまでの成績と志望を元に、学生が各学部の定員数に応じて進学先を選択する制度が「進学選択制度」というわけです。

ただ、当然のことながら東京大学入学者全員が全く同じ条件で全ての学部を選ぶことができるわけではありません。ご存知のように、受験生は入試にあたり、学部を選択する代わりに、文科一類(文一)から理科三類(理三)までの科類の中から一つを選んで受験する必要があり、そして、これらの科類と2年次に選ぶ学部には基本的な対応関係があるからです。つまり、文一→法学部、理一→工学部といった具合ですね。なので、東京大学では進学先の学部を入学後に選べるとはいっても、実際は、学生は将来自分のやりたいことに応じて、入試の時点で科類を選択しなければならないのです(また、一部の理系学部は文系学生を受け入れていない、ということもあります)。

では進学選択制度に意味はないのでしょうか。そんなことはありません。なぜなら、各科類と各学部の間には基本的な対応関係があるものの、その関係性は比較的緩く、対応関係のない学部への進学も、他大学で学部を変えるのに比べたらかなり容易にできるからです。よって、入試の時点で科類を選択する必要があるといっても、入学後の進路にかなりの柔軟性がある、という特徴に変わりはないのです。

2. 進学選択制度の概略

以下に示すのは平成30年度(2017年実施)の進学選択の概略です。来年度以降変更される可能性もあるので注意してください。

  • ・2S2ターム・2Sセメスター終了時点(成績が確定した時点)で学生の志望と、それまでの
  • 学生の学修成績等によって、学部・学科等の進学先毎に定められた人数になるよう学生の進学先を内定させる
  • ・2S2ターム・2Sセメスター終了時点で一定の成績・取得単位が要求される
  • ・単願で志望を登録する第一段階、第一段階で進学先が決定しなかった場合に単願または複願で志望を登録する第二段階、第二段階で進学先が決定しなかった場合に、第二段階までで定数が満たされなかったところに単願、もしくは志望学部内での複願で志望を登録する第三段階にわけて行われる。
  • ・指定された科類の学生しか志望登録できない指定科類枠と、どの科類からも志望登録できる全科類枠がある。
  • ・基本平均点(各科目の"(点数×単位数×重率)の総計/(単位数×重率)の総計")が評点として用いられるが、一部の学部・学科では異なる算出方式を用いた評点を利用する。

指定科類枠と全科類枠の存在が、各科類の特徴を生みつつ、入学後に多様な進学先を選択することを可能にしています。

3. 文二→法学部

どの科類に出願するか。

東大特進で担任助手をやっているとよく受ける相談のひとつです。

私が受験生のときに散々悩んだ問題でもあります。そして私は迷いに迷って文二に入学し、更に迷いに迷って文二から法学部というイレギュラーな進振りを経験しました。

どうして文二に入学したか

高校受験を経て高校入学後、漠然とした憧れから東京大学を志望校に設定。高2のときに文系科目のほうが好きで得意だから、と文系を選択したものの、受験科類は後でいいやと先延ばしにしていたら、結局決まらないまま受験生に。

正直、当時は決め手がなかなか見つからなくて迷走していました。「教育には興味があるから文三?いや、経済も面白そう。でも法学部の進路の幅の広さや就職での有利さも魅力的だな。」といった具合でぐるぐると。

ようやく「文二」という結論が出たのは高3の11月でした。そのきっかけは受験勉強から。好きだった地理を学ぶなかで、いわゆる「南北問題」、つまり先進国と発展途上国の経済格差とその問題に興味を持ち、その改善策を模索するには経済が足がかりになるのではと感じたからでした。

そんなこんなで入試を無事突破し、私は文二生になったのでした。

本当に経済でいいのか?

入学して最初の夏学期は、先輩のおすすめをもとに興味のある授業を片っ端から取り、歴史、社会学から天文学まで幅広い内容の授業を履修しました。また文二に入学すると、経済と数学の授業が必修となります。この学期には念願の開発経済(発展途上国の開発にまつわる経済学)の授業がちょうどよく開講されていたので、これを履修できたことも大きな収穫だったと思います。

入学後2、3ヶ月たつと授業に対するモチベーションが落ちる人が多いのが大学生の現実ですが、私の駒場時代は授業はほぼ全出席、授業がない時間は空き教室で課題に取り組むような日々でした。真面目ですね(笑)(もちろん部活に励んだり、友達と遊んだりもしましたよ!)。そして、なんとか乗り越えた初めての期末試験。このときの成績の平均点は、80点でした。80点というと上位3割=優のボーダーなので、まあまあといったところでしょうか。少なくとも経済学部には間違いなく進学できる点数なので、一安心です。

1年の冬学期も変わらず真面目に授業に出る平穏な日々を送ってはいたのですが、この頃から疑問が生じてきました。「本当にこのまま経済学部に進むのでよいのか?」と。

というのも自分は、経済には向いていないと薄々感じてきていたのです。まず経済は、世の中の様々な事象を「数字」を前提に考える世界です。でも私はどうやら「数字」を扱うよりも、文献を読むなど「ことば」を中心として物事を考えるほうが好きなようだと気づいてきました。もしかしたらその傾向は高校以前からあったのかもしれませんが(確かに受験時代、数学には苦しめられたので……)、私にとってこれは「経済学」「社会学」「法学」「歴史学」など様々な学問に教養学部で触れてみたからこそ気づけたことでした。

では、どの学部・学科を目指すか。80点という点数で行けそうで、興味があるところ……となると気になったのが、実は教育学部でした。私は小中学校の5年間をアメリカの現地校で過ごしたので、もともと日本の教育とアメリカの教育を比較して思うことは色々とあったし、1年次に受けた「現代教育論」や「教育臨床心理学」といった授業が特に面白かったので、教育学部なら興味を持って学べそう、と感じたのです。

というわけで、その後の就職のことなどは考えていなかったし、また「途上国開発」から遠ざかることに後ろ髪をひかれる思いはありましたが、1年生の後半は「教育学部に進む」という思いを抱き過ごしました。

「法学部」という選択肢

ところが1年生の3月、私はまた迷い始めます。きっかけは冬学期の成績発表で、平均点が85点にまで上がったことでした。要因は大学の試験に慣れて点数の取り方がわかった(自分はレポートよりも一発試験のほうが得意、など)こと、得意の語学で点数を伸ばせたことでした。

こうなると今までみえてこなかった選択肢も、手の届く範囲になります。これなら、文二としては最も高い点数が必要になる法学部にも行けるかもな……とふと思ったことをきっかけに真剣に法学部進学を検討するようになりました。

まず東大では法律・行政はもちろん政治も法学部の守備範囲になります。となると、法学部だったら政治的なアプローチから途上国の開発支援も学べる……?更には教育行政も選択肢に入る……?もちろん両方の専門家になるのは厳しいにせよ、私が興味を持った2つのことをどちらも叶えうるのが法学部なのでは……?と。

それに、まだ将来の職を決めかねている私にとって、法学部は法曹・公務員・民間企業など進路の幅が広いことも魅力的でした。

ただ、法学部に進学するにはいくつかの壁がありました。まず1つ目は、進振りの点数。いくら「法学部にも行けるかも」といっても、文一以外の文系、つまり文二・文三から法学部に進学できるのは合わせて14名と狭き門。85点は「文二・三→法学部」の進振りの第一段階選抜の底点程度です。2年生の夏学期にもし平均点を落としてしまったら、進振りで落ちてしまうかもしれません。

2つ目は専門科目の履修について。ほとんどの学部で専門科目の授業が始まるのは2年の夏に進振りが行われた後、2年生の冬学期からなのですが、法学部だけは進振り前の2年夏学期から専門科目の授業が始まります。もし法学部に進学するのならば、本来「文ニート」と呼ばれるはずの2年夏学期も、最終的に単位を取得するかもわからない授業に通いつめなければなりません。春休み中迷いに迷った結果、法学部の授業も履修登録はして、とりあえず法学部を目指してみることにしました。

そして法学部へ……

ただ2年生の夏学期は、本当に法学部でいいのか?教育学部でなくていいのか?と自問自答して過ごしました。

というのも法学部は「砂漠」と呼ばれるほど必要な勉強量が多くて単位を取るのがハードな学部なのです。どのくらいかというと、他の学部だと焦り始めるのは期末試験の1ヶ月前くらいですが、法学徒は試験の2ヶ月前には焦り始めます。

きちんと覚悟をもってそれほどの勉学に励めるのか、そもそも文二の私がついていけるのか……。2年生の開始と同時に始まった法学部の専門科目にも顔は出していましたが、迷いと逃げ道(=他学部へ行く選択肢)がどうしてもちらついてしまい、正直授業に身は入っていませんでした。

それにやはり法学部に行くには成績を落としてはいけないというプレッシャーは重くて、試験が近くなった頃には胃がキリキリと痛んだのを覚えています……。

ですが6月頃、知り合いの法学部の先輩に相談した際に、「法学部は大変だけど学べることの範囲は広い、途上国支援でも教育行政でもやりたいことにつながる道は、きっと見つけられる」と助言をいただいたことをきっかけに腹が据わり、点数さえ足りていたら法学部に行こう、と決意にいたりました。

そして8月、2年の夏学期終了時点での成績、つまり進振りに使う点数が発表に。結果は約1点上がって平均点86点でした。これなら例年通りだったら第一段階選抜で法学部に行けそう、と法学部を第一志望に最終登録。結果、「文二、三→法学部」の第一段階選抜の底点(最低点)は85.1点。無事、法学部に内定し、進振りを終えました。

以上、私の進振り体験を述べてきましたが、いかにふらふらと進路に迷って今に至るか、少しわかってもらえたかと思います(笑)。同じように悩んでいる人の参考に少しでもなっていたらうれしいです。

蛇足とは思いつつも、最後にひとつだけ。これを読んでくれている人のなかには、やはりやりたいことを決められなくて、東大入学後も選択肢を幅広く確保しておきたい人、あるいは進振りで高い点数が必要な学部学科に志望を定めている人もいるかと思います。その人たちに将来のためのアドバイスをするならば「いま英語の勉強をがんばっておくこと!」です(笑)。

特に文系では、進振りの点数において非常に大きなウェイトを占めるのが語学、つまり第二外国語と英語の成績です。第二外国語は入学後、コツコツと勉強を積み重ねられるか次第ですが、英語はやはり入学までに培った英語力がものを言います。私も文系のなかでは最難関とも言える「文二、三→法学部」の進振りを突破できたのは、語学が得意なことに助けられた節が大きいです。なので将来のためにも、まずは目の前の課題にひとつひとつ、一生懸命取り組んでいってくださいね。

皆さんが東大合格を無事勝ち取り、そして自らの力で進路を切り開いていかれますように!

東京大学法学部 第二類(公法コース)

勅使河原 美紗(’13年度入学)