大学入試センター試験解答速報2008
現代社会
全体概観

基本的な標準問題が中心。統計読み取りは減少。 


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

形式面では、ほぼ例年並みである。大問数6、マーク数36は昨年と同じであるが、大問の配点は毎年のように変化し、昨年の22点・14点・17点・14点・16点・17点から、今年は24点・14点・12点・22点・14点・14点となった。24点・22点の大問では幅広い視野からの出題が見られた。
一昨年、昨年と2年連続して平均点が下落していた現代社会であるが、今年は大幅に易化した。政治経済分野では基本的な問題が中心となっており、また昨年得点が伸び悩んだ現代社会特有分野の青年期もまた、レポート作成の方法など、今年は常識的判断で得点できる問題となった。平均点が下がったからといって現代社会から逃げずに、コツコツと勉強した者が救われた問題であった。
一昨年3問、昨年2問あった統計読み取り問題が1問となり、時間がとられないですんだということも特徴である。
出題内容では、日本の外交にかかわるPKO協力法、イラク復興支援特別措置法、GATTウルグアイラウンドでのコメの部分開放と例外なき関税化への移行、国連改革としての人権委員会の人権理事会への格上げ、出入国管理法改正(2007年11月施行)の入国外国人の指紋採取・写真撮影などのテロ対策、日本の国連分担金問題、最新の時事用語であるセーフティネットやモラルハザードの意味などが問われた。時事的に話題性のあるテーマや言葉に注目しておくことがやはりカギとなった。

【出題フレーム】

年度

大問

出題範囲

問数

マーク数

配点

2008

第1問

人権と日本の政治

9

9

24

第2問

国際経済と貿易

5

5

14

第3問

世界遺産と文化・宗教

4

4

12

第4問

国際連合と国際政治

8

8

22

第5問

青年期の課題

5

5

14

第6問

経済のしくみ、市場と金融

5

5

14

2007

第1問

民主主義と法の支配

8

8

22

第2問

国際経済について

5

5

14

第3問

青年期の意義

6

6

17

第4問

日本の農林業

5

5

14

第5問

戦後の日本経済

6

6

16

第6問

服装と社会

6

6

17

2006

第1問

生命倫理と近代的思考方法

5

5

14

第2問

第二次世界大戦後の国際経済

5

5

14

第3問

基本的人権に関する諸問題

4

4

11

第4問

武力紛争解決への国際的取組み

5

5

14

第5問

日本国憲法をめぐる諸問題

5

5

14

第6問

循環型社会と企業の社会的責任

4

4

11

第7問

インターネット社会と男女平等

4

4

11

第8問

日本経済の展開 〜失われた 10 年と高度経済成長

4

4

11

2005

第1問

地球環境問題とリサイクル社会

7

4

20

第2問

政治的原理と国民の政治参加

4

4

10

第3問

青年期の特徴・性格論

7

8

20

第4問

わが国の経済動向と農業

4

4

10

第5問

財政と高齢化社会・社会保障

4

4

10

第6問

日本の安全保障と自衛隊

4

4

10

第7問

地域社会の活性化

4

4

10

第8問

国際社会の諸課題

4

4

10


過去18年間の平均点
2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999
50.31点 57.91点 70.22点 57.27点 59.53点 60.49点 56.66点 44.39点 55.24点
1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990
66.28点 56.66点 61.67点 61.85点 61.02点 62.09点 57.86点 63.62点 60.80点

設問別分析
【第1問】 人権と日本の政治
人身の自由の内容、通信傍受法、DV防止法、PKO協力法、イラク復興支援特別措置法など話題の法律の内容、日米安全保障条約と思いやり予算、米軍基地整理縮小についての沖縄県での住民投票、ベンサム・ホッブズ・マルクス・モンテスキューの思想の違いを問う問題が出題された。あわせて、情報公開法が各地方で情報公開条例が制定された後に制定された事実や、法の支配のあらわれが憲法第81条の違憲法令審査制度であること、小選挙区制が大政党有利な多数代表制であることが問われた。人権・法律・思想・政治制度・選挙区制にわたる広い出題であるが、内容は概して基本的である。

【第2問】 国際経済と貿易
リカードの比較生産費説は過去問で何度も出題されたパターン。日米貿易摩擦の歴史も1995年のコメの部分開放(ミニマム=アクセス)から1999年例外なき関税化への移行、日米構造協議(1989〜90年)、日米包括経済協議(1993〜94年)の事実、ウルグアイラウンド(1986〜94年)でコメの自由化問題が話し合われた事実が問われた。円高・円安の輸出・輸入などへの影響は、一般受験生には難しく見えても、公式的ルールで解ける問題である。また、GATT→WTOの最恵国待遇も問われたが、IMFが為替の自由化・安定化、GATT・WTOが貿易の自由化を目的としているという基本的理解で解答することが可能な問題であった。

【第3問】 世界遺産と文化・宗教
世界遺産の場所を問う問題にはあせった受験生もいたかもしれない。しかし、富士山がまだ世界遺産に指定されていないというのは有名。文章から見て負の歴史遺産といえば「原爆ドーム」と推定できる。また、文化財であれば民間の所有物でも保存のために公的資金が出されると推測できる。
キリスト教が戦国時代に庶民のみならず一部の大名にも信仰されたというのもやや細かい知識だが、正解して欲しい。庶民に広まった仏教としては鎌倉仏教が重要。臓器移植も話題のテーマであり、「死」の相対性をめぐる議論が行われたことを押さえているかがポイントとなった。

【第4問】 国際連合と国際政治
国際連合の組織として、事務総長権限の強化、国際人権委員会の人権理事会への格上げという時事問題、出入国管理法改正(2007年11月施行)の外国人に対する入国時の指紋採取・写真撮影導入も出題された。その他、2001年のブッシュ大統領によるアフガニスタン制裁やPKO協力法の内容、国連分担金(1位アメリカ22%、2位日本19%、2007年には16%台に引き下げ)など話題のテーマが多く出題されている。また、「持続可能な開発」が国連環境と開発に関する世界委員会で提唱され、「国連人間環境会議」(1972年)ではなく、「国連環境開発会議」(1992年)のスローガンに用いられたことが問われている。時事性の強い出題であった。

【第5問】 青年期の課題
青年期の課題を問うごく基本的な出題であった。問1ではモラトリアム、ルソーの第二の誕生の意味(言葉の暗記ではない)、マズローの欲求階層説の内容が問われた。高校教科書にある尾崎豊に見られる対抗文化も、文脈から解答は明らかであろう。統計データ読み取りも、今年は問4のわずか1問であり、時間不足という受験生も大幅に減少したであろう。また問5のレポートの方法も昨年とは異なり、簡単になっている。

【第6問】 経済のしくみ、市場と金融
政府の機能としての財政機能(補整的財政政策)、小泉内閣で話題となったセーフティネットという言葉の意味、少子高齢化の影響で生産年齢人口の社会保障費用負担が増大する事実、ペイオフ(預金保護上限を元本1000万円+利子までで遮断すること)が問われた。また、最近の企業不祥事も含めてモラルハザードの具体例を問う出題もあったが、概して、基本的・常識的に解ける問題であった。

新高3生へのアドバイス
「現代社会」では、時事テーマを素材としつつも、その根本にある基本的知識と、その理解度が問われています。「政治・経済」に比べて多方面にわたる知識と理解が必要ですので、制度・仕組みの定義、存在理由(意義)、問題点、解決策を確実に押さえていきましょう。センター試験では「青年期の課題、現代社会の特質、倫理、文化」「人類的課題〜人口・資源・環境・都市問題」「経済分野」「政治分野」「国際政治・国際経済分野」「国民福祉」という大きな分野から幅広く出題されていますので、知識の穴を作らずに幅広く基本知識を積み重ねていくことが肝要です。とくに政治経済の分野では知識が問われ、点差のつく部分ですから、しっかりと勉強しておいて下さい。また、時事テーマとして出題される問題は、現実の問題点と解決策ですので、基本事項の先にどのような現実と問題点があるのかを押さえていく姿勢が大切です。地球環境問題や少子・高齢化といった大きな時事的テーマはもちろんのこと、最新の時事動向に興味を持っておくことが高得点のカギとなるでしょう。また、資料やアンケート調査の読み取り問題では、今年度は1題でしたが、教科的知識にとぼしくても解答可能な問題が多い一方で、資料の読み取りに時間を取られるため、設問形式に十分慣れておくことが大切になります。また、最新の時事問題に対応するためにも過去問演習を繰り返すだけでなく、2ヵ月に1回実施される東進の「センタープレ入試」を積極的に受験して、本番の雰囲気に近い状況での訓練を十分に積むようにしましょう。
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