大学入試センター試験解答速報2008
政治・経済
全体概観

国際化・高齢化の視点から政治経済全体を問う基本的問題。  


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

形式面は昨年度を踏襲した。会話文形式の問題も一題出題された。国際政治でゲーム理論の出題があったことが注目されるが、特別な対策を要求する水準の問題ではなかった。グラフや図表を使用する問題が6題出題され昨年よりも増加傾向を示したが,用語などの知識のみを要求する問題もあったため、受験生にかかる負担は昨年並みと推測される。出題テーマは経済理論・日本政治・国際政治・国際経済・日本経済であり,政治:経済は2:3の割合だった。
問題内容では、昨年同様企業の社会的責任、コンプライアンス、いじめやセクハラ、格差社会、非正規雇用など、近年の時事的話題を反映した事項が多く含まれている。一方で、日本国憲法の成立過程や戦後日本経済史など、歴史的事項の出題が目を引くが、全般の傾向に昨年から大幅な変化が存在するわけではない。出題されている設問の多くは基本事項であり、制度・メカニズムなどの理解度を確かめる理論問題なので、その延長線上に最新の時事問題を意識して勉強しておけば得点できたであろう。

【出題フレーム】

 

大問

出題範囲

問数

マーク数

配点

2008

第1問

企業の社会的責任

10

10

24

第2問

行政権の拡大

7

7

19

第3問

国際協力

7

7

19

第4問

戦後の貿易

7

7

19

第5問

格差社会

7

7

19

2007

第1問

国際政治,人間の安全保障

10

10

24

第2問

政治思想,立憲主義

7

7

19

第3問

日本国憲法,地方自治

7

7

19

第4問

アジア経済

7

7

19

第5問

バブル経済の発生と崩壊

7

7

19

2006

第1問

政治経済の諸問題

10

10

24

第2問

各国と日本の政治制度

7

7

19

第3問

国際関係と日本の政治

7

7

19

第4問

企業・消費者問題と国際経済

7

7

19

第5問

財政と社会保障

7

7

19

2005

第1問

人権の尊重と手続保障

8

8

22

第2問

憲法の基本原理

5

5

13

第3問

地方自治と地方分権

5

5

13

第4問

行政の情報化とプライバシー保護

5

5

13

第5問

市場メカニズムと景気・雇用

5

5

13

第6問

日本経済と金融政策

5

5

13

第7問

国際経済と経済統合

5

5

13


過去18年間の平均点
2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999
64.41点 61.05点 64.55点 61.49点 62.95点 52.45点 54.11点 58.30点 56.83点
1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990
71.10点 63.32点 64.92点 67.03点 62.75点 62.34点 60.88点 63.31点 71.88点

設問別分析
【第1問】企業の社会的責任
企業の働きや社会的責任、独占形態、設備投資、コンプライアンス、自己決定権や個人情報保護、いじめやセクハラなどにおける人権、政府予算内訳のグラフ、環境基本法や法人税について出題された。今年は企業の社会的責任というテーマのもとに、経済分野を主としながら人権から環境まで問う時事的要素の濃い総合問題となった。

【第2問】行政権の拡大
政治団体やNPO、内閣の権限、行政委員会、各国の政治体制、衆議院の解散、小選挙区での議席配分、表現の自由に関する出題。問3が若干細かい以外はごく基本的な出題。

【第3問】国際協力
国際法や平和維持のための国際社会上の構想、国際連盟から国際連合にいたる歴史、主権、日本国憲法成立の経緯、憲法における自衛隊、国際協力についての出題。問1のゲーム理論は2004年以来であるが、出題条件を整理できれば知識なしでも解答可能なレベル。

【第4問】戦後の貿易
戦後日本の経済史、中央銀行の景気対策、戦後の国際通貨体制、日米経済摩擦、日本とアジア各国の経済関係に関するグラフの出題。問7のグラフは1980年代以降のアジア経済史の知識が要求されるなど、基礎的な出題のみならず細かい知識を要求される設問が混在している。

【第5問】格差社会
格差社会のテーマのもと、完全競争市場、就職者の属性に関するグラフ、労働法、介護保険制度、合計特殊出生率と高齢化率に関する日韓中のグラフ、国民経済指標、男女雇用機会均等法について出題されている。グラフ問題については、問2に関してはグラフの解読のみで解答可能だが、問5に関しては近隣諸国の出生率動向の知識が必要である。
新高3生へのアドバイス
 センター試験の「政治経済」は、多くの場合は時事問題を大問に織り交ぜながら、そこに至るまでの基本的事項を問うパターンになっています。あくまで基本的な制度・しくみ・理論メカニズムの理解が出題の大半ですから、定義・理由付け・問題点・解決策(対策)を正確に押さえておきましょう。「現代社会」よりも学習範囲が狭いぶん、歴史的事項も含めた細かい点が出題されますので、じっくりと勉強しておきたいところです。そうした学習におけるポイントをつかむ上でも、2月の段階からセンター試験本番のレベルで出題される東進のセンタープレ入試を受験することをお勧めします。
 高得点のカギは時事問題の克服です。日頃から話題となっている時事的な出来事の問題点や改革の内容・目的をおさえていきましょう。時事問題に興味と関心をもって新しい情報をキャッチしていけば、出題されやすいポイントが明らかとなるのみならず、時事問題を理解するために必要な理論の理解を深める結果をもたらし、高得点が狙えるでしょう。たとえば、グローバリゼーションの影響,国家財政と行政改革,少子高齢化問題では、何が原因で,だれがどのように問題を解決しようとしているのか、を自分なりに学習の過程でまとめていくことが要求されています。経済動向であればそれを示すデータ(経済成長率、物価指数、国債依存度、国債残高、公定歩合、完全失業率、有効求人倍率など)に注目しておくとよいでしょう。その際,国際化の観点も忘れないでください。国際社会の中で日本はどうすべきか,あるいは,外国との比較(統計データなど)に注意するとよいでしょう。
 単純な暗記では確実な得点を望めない「政治経済」だからこそ、2か月に1回実施されるセンタープレ入試を一つの目標とし、計画的に学習を進めるよう心がけましょう。
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