地理B
全体概観

やや難化。受験生が迷いやすい問題が散見。 


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問数6は昨年・一昨年と同じだが、設問数は一昨年から35→36→37と増加し続けている。形式面では昨年と比べて特に大きな変化はないが、今年度は写真を用いた問題が2問みられたのが特徴的である。なお、組合せ式問題は計12問であった(6択11問+8択1問)。内容的には、一部の正誤判定問題でやや細かい地名などの知識を要求するものがあったが、全体的には、地理的な考え方や理解を丁寧に問う問題が中心であった。特に第2問に置かれた地域調査の問題にその傾向がみられる。その一方、第1問のフェーン現象に関する問題や、第4問の都市の内部構造に関する問題のように、旧課程時代によくみられた知識そのものを問う出題も目立った。難易度としては、受験生にとって苦手な分野の設問が散見されるため、易しかった昨年よりはやや難化したといえるのではないだろうか。

【出題フレーム】

 

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2009

第1問

ヨーロッパとその周辺地域の自然環境

8

8

18

第2問

地域調査(鳥取県境港市)

6

6

18

第3問

農林水産資源とそれを利用した産業

6

6

17

第4問

村落,都市

6

6

17

第5問

カナダの地誌

6

6

17

第6問

現代世界の諸問題

5

5

13

2008

第1問

自然環境

6

6

16

第2問

世界の資源と産業

6

6

16

第3問

世界および日本の都市

6

6

16

第4問

南アジアの地誌

6

6

17

第5問

現代世界の様々な社会的課題

6

6

17

第6問

地域調査(広島市)

6

6

18

2007

第1問

世界の自然環境と自然災害

6

6

16

第2問

世界の工業

6

6

16

第3問

世界における都市の発展や都市問題

6

6

16

第4問

アフリカの地誌

6

6

17

第5問

現代世界の課題

6

6

17

第6問

地域調査(青森県八戸市)

5

6

18

2006

第1問

地理の基礎的事項

5

5

10

第2問

地域調査(函館市)

6

6

18

第3問

世界の自然環境

6

6

18

第4問

資源と産業

6

6

18

第5問

ラテンアメリカの地誌

6

6

18

第6問

現代世界の諸課題

6

6

18


過去19年間の平均点
2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999
66.36点 58.41点 65.13点 70.22点 62.11点 54.99点 66.34点 63.55点 58.22点 62.27点
1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990  
77.23点 67.34点 62.75点 72.35点 77.05点 69.47点 62.74点 60.50点 65.86点  

設問別分析

【第1問】 ヨーロッパ周辺の自然環境
例年通り第1問は自然環境に関する出題だったが、昨年と違い特定地域が題材となっており、配点も多い。問2の大陸棚の分布、問3の地形断面図は頻出パターンとはいえ迷いやすい。問5・6・8も、用語暗記だけではなく正確な理解が問われている。全体としてやや難の印象で、出鼻をくじかれた受験生もいただろう。

【第2問】 地域調査(鳥取県境港市)
例年第6問に配置される地域調査が第2問に置かれるのは2006年以来。問3までの地形図の読図は、例年並みの標準的な出題。問4・5と統計の読み取り問題が続いた。知識は不要で、落ち着いて考えれば難しくない。問6の地域調査の方法に関する問題も常識的に判断できる。大問全体としては標準レベル。

【第3問】 農林水産資源とそれを利用した産業
昨年は第2問に置かれた産業に関する問題である。産業分野で農林水産業が主題となったのは2004年以来。問2の小麦カレンダーは多くの受験生にとって難問であったろう。他はいずれも標準的な知識で処理できるので、大問全体ではやや易。

【第4問】 村落,都市
集落の形態や内部構造、機能や景観に関する標準的な設問が中心であった。問1・2のような集落の形態に関する出題は近年減少していたので戸惑った受験生もいるだろう。実際の都市名を扱った問題のうち、問2はともかく問3は細かい地名の知識が必要となる。問5は3都市の性格を理解していれば易しい。標準レベルの大問である。

【第5問】 カナダの地誌
地誌問題が国単位を題材に出題されることは珍しい。1999年の「アメリカ合衆国の地誌」以来であろう。問1はやや「ひっかけ」だが冷静に対応したい。問3の都市判定は地図の読み取りがヒントになる。問6において、カナダとメキシコの判定に迷わなければ全体としてやや易といえる。

【第6問】 現代世界の諸問題
水資源、医療、食料需給、少子高齢化、女性の社会進出について、おもに統計を基にした出題となっている。いずれも過去に類題のある標準的な出題である。問2と問5は途上国同士の比較になるので、各国の差異に注意が必要。問3は説明文の読み取りがカギ。問題数も少ないので、あまり時間をかけずに済ませて、他の見直しをしたいところである。

新高3生へのアドバイス
センター試験地理Bでは、標準的な知識をもとにした情報処理・思考・判断の能力を試す出題の割合が高くなります。したがって、地名・用語の丸暗記のような詰め込み学習では対応できません。「なぜそうなるか」を理解した上で、「使える知識」を増やしていきましょう。
ただし近年は、ゆとり教育への反動から、新しい指導要領(文部科学省が作る教科の方針)の方向性に従って、知識重視タイプの出題も目立っています。自然環境・産業・集落といった分野別の学習だけでなく、地誌(地域ごとの学習)の準備も早めに始めましょう。
地図や図表・写真などの資料を使った出題の割合が高いのはセンター地理の典型的な特徴です。自分が知らない地名が出てきた際には、必ず地図帳を開き、その位置を確認する学習を徹底するようにしましょう。
また、統計については、順位・数値の暗記ではなく、統計の背後にある地理的事象を読み取る意識で、最新の統計をこまめにチェックするようにしましょう。統計問題や組合せ式の6択問題など、独特な出題形式への慣れも必要です。時間的なゆとりはありません。10年分程度の過去問演習はもちろん、東進のセンター試験本番レベル模試を定期的に受験しておくことをおすすめします。
Copyright (C) Nagase brothers Inc.