現代社会
全体概観

基本的な標準問題が中心。統計読み取りが2題に。 


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

形式面では、ほぼ例年並みである。大問数6、マーク数36は昨年と同じであるが、大問の配点は毎年のように変化し、昨年の24点・14点・12点・22点・14点・14点から、今年は14点・22点・14点・14点・22点・14点となった。22点の大問では幅広い視野からの出題が見られた。
昨年は大幅に平均点が上昇した現代社会であるが、今年は昨年なみの難易度となった。政治経済分野では基本的な問題が中心となっている一方で一部細かい事項の出題もみられたが、統計問題は常識的判断で得点できる問題となった。現代社会だからと常識だけで解こうとするタイプの受験生よりも、政治経済分野を中心にコツコツと勉強した者が得点を積み増す、実力が見えやすい問題であった。
一昨年2問、昨年1問あった統計読み取り問題は2問となったが、難易度からみてあまり時間は取られなかったように思われる。
出題内容では、裁判員制度、犯罪被害者保護法、日本小売業の近況、高齢者対策、ベンチャービジネス、企業の社会貢献、エコロジー活動などが問われた。時事的に話題性のあるテーマや言葉に注目しておくことがやはりカギとなった。

【出題フレーム】

年度

大問

出題範囲

問数

マーク数

配点

2009

第1問

裁判所と司法制度改革

5

5

14

第2問

地域社会の変化と地方自治

8

8

22

第3問

現代の経済社会

5

5

14

第4問

環境問題

5

5

14

第5問

グローバル経済と国際社会

8

8

22

第6問

青年期

5

5

14

2008

第1問

人権と日本の政治

9

9

24

第2問

国際経済と貿易

5

5

14

第3問

世界遺産と文化・宗教

4

4

12

第4問

国際連合と国際政治

8

8

22

第5問

青年期の課題

5

5

14

第6問

経済のしくみ、市場と金融

5

5

14

2007

第1問

民主主義と法の支配

8

8

22

第2問

国際経済について

5

5

14

第3問

青年期の意義

6

6

17

第4問

日本の農林業

5

5

14

第5問

戦後の日本経済

6

6

16

第6問

服装と社会

6

6

17

2006

第1問

生命倫理と近代的思考方法

5

5

14

第2問

第二次世界大戦後の国際経済

5

5

14

第3問

基本的人権に関する諸問題

4

4

11

第4問

武力紛争解決への国際的取組み

5

5

14

第5問

日本国憲法をめぐる諸問題

5

5

14

第6問

循環型社会と企業の社会的責任

4

4

11

第7問

インターネット社会と男女平等

4

4

11

第8問

日本経済の展開 〜失われた 10 年と高度経済成長

4

4

11


過去19年間の平均点
2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999
60.55点 50.31点 57.91点 70.22点 57.27点 59.53点 60.49点 56.66点 44.39点 55.24点
1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990  
66.28点 56.66点 61.67点 61.85点 61.02点 62.09点 57.86点 63.62点 60.80点  

設問別分析
【第1問】裁判所と司法制度改革
時事問題としての裁判員制度を起点として、検察審査会などの国民と裁判のかかわり、裁判制度の問題点、人権、民主主義と司法権のかかわりについての出題であった。2009年に裁判員制度が開始されることで出題が予想された裁判所に関する出題であるが、問2で裁判制度に関する若干細かい知識が要求されていること以外は、概して基本的事項である。

【第2問】地域社会の変化と地方自治
戦後日本の地域社会の変化、小売業の現状という「現代社会」的な出題をきっかけとしながら、高齢化や地方自治に関してオーソドックスな内容を問う設問となった。問6・問7は、通常「現代社会」受験生が学習するよりも一段突っ込んだ事項で正解を決定する設問となっており、事項自体が基本的であったわりにひっかかった受験生が多かったかもしれない。一方問8に出た調査研究手法に関する出題は、昨年同様簡単なレベルとなっており、一昨年の「KJ法」のような細かい知識なしで解ける。

【第3問】現代の経済社会
知的所有権、技術革新による経済や社会の変容、経済思想、ベンチャービジネス、企業の社会貢献と、現代の経済社会に関して、時事的要素をリード文にいれつつも設問自体はオーソドックスな出題をしている。問3・4は語群を選ぶタイプの設問であるが、問3は必出の「リカード=国際分業」「アダム・スミス」に関して覚えていれば正解できた。他の設問もあわせて易しい内容であったといえる。

【第4問】環境問題
外部不経済、自然保護に関する条約や運動、エコロジー活動の具体例での問題点、地球温暖化問題、廃棄物処理・リサイクルに関する事項が出題された。問2で若干知識の幅を要求される程度で、他は環境問題について予想されるレベルの基本的な出題であった。

【第5問】グローバル経済と国際社会
市場経済の促進要因、アジア通貨危機、国際社会の経済格差解消への動き、留学生に関する統計問題、異文化理解に関する用語、地域的国際組織、日本における外国人の人権、国連を中心とする安全保障に関する出題がなされた。負の側面が最近の金融危機などで明らかにされている「グローバル化」をテーマとして、人権・国際経済・国際組織にわたる幅広い出題ではあるが、時事的要素よりも理論的事項を多く出題している。冷戦後の国際組織の変化が問6で出題され、問8では安全保障についての国連に関する事項が若干細かく出るなど、全体のレベルは標準からやや難である。一方、問4の表による統計を分析する設問は、昨年と同レベルの簡単なものとなっている。

【第6問】青年期
青年期に関する出題で、マズロー・レヴィン・ハヴィガーストや第二反抗期、防衛機制、青年期における青年と周囲の関係、エリクソンに関する出題となっている。問5のエリクソンに関する出題は難であるといえるが、他は基本的な内容であった。青年の意識に関するグラフ問題である問2は、丁寧にグラフを追えば知識なしで正解できる設問であり、昨年同様簡単であったといえる。

新高3生へのアドバイス
「現代社会」では、時事テーマを素材としつつも、その根本にある基本的知識と、その理解度が問われています。「政治・経済」に比べて、特に時事テーマなどの方面から設問が導かれる傾向がありますが、それに対応する理論的事項をあわせた知識と理解が必要ですので、制度・仕組みの定義、存在理由(意義)、問題点、解決策を確実に押さえていきましょう。センター試験では「青年期の課題、現代社会の特質、倫理、文化」「人類的課題〜人口・資源・環境・都市問題」「経済分野」「政治分野」「国際政治・国際経済分野」「国民福祉」という大きな分野から幅広く出題されていますので、知識の穴を作らずに幅広く基本知識を積み重ねていくことが肝要です。とくに政治経済の分野では知識が問われ、点差のつく部分ですから、しっかりと勉強しておいて下さい。また、時事テーマとして出題される問題は、現実の問題点と解決策ですので、基本事項の先にどのような現実と問題点があるのかを押さえていく姿勢が大切です。地球環境問題や少子・高齢化といった大きな時事的テーマはもちろんのこと、最新の時事動向に興味を持っておくことが高得点のカギとなるでしょう。また、資料やアンケート調査の読み取り問題では、今年度は2題でしたが、教科的知識にとぼしくても解答可能な問題が多い一方で、資料の読み取りに時間を取られるため、設問形式に十分慣れておくことが大切になります。また、最新の時事問題に対応するためにも過去問演習を繰り返すだけでなく、2カ月に1回実施される東進の「センター試験本番レベル模試」を積極的に受験して、本番の雰囲気に近い状況での訓練を十分に積むようにしましょう。
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