国語
全体概観

出題形式に大きな変更は無し。難易度は問題文の分量の増加によりやや難化か。時間配分が勝負を分ける。 


大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問数4、各大問の配点50点という形式に変化はない。第1問の評論文は共通一次時代の1984年に出題された藤田省三氏の文章を踏まえた内容であった。「隠れん坊」や「かんけり」の背後にある「市民社会」「管理社会」の意味を説明する内容の文章で、やや読みづらく漢字も難易度の高いものであった。第2問の小説文は、加賀乙彦氏の「雨の庭」の一説を踏まえての出題だったが、内容が受験生にとって把握しづらかった分、出来た人と出来なかった人との間で大きく差が付く問題だったと言える。第3問古文は、擬古物語が出題された。内容は難しくないが、選択肢が微妙で判断に時間がかかる。敬意の方向・和歌修辞は久々の出題であった。第4問漢文は本文の長さも論理的な内容もほぼ昨年並みだが、設問の傾向にやや変化があった。国語全体としては問題文の分量が増加し、やや難化したものと思われる。

【出題フレーム】

 

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2009

第1問

評論:栗原彬「かんけりの政治学」

6

11

50

第2問

小説:加賀乙彦「雨の庭」

6

9

50

第3問

『一本菊』

6

8

50

第4問

『壮悔堂文集』(侯方域)

6

8

50

2008

第1問

評論:狩野敏次「住居空間の心身論−『奥』の日本文化」

6

11

50

第2問

小説:夏目漱石『彼岸過迄』

6

9

50

第3問

『狗張子』(浅井了意)

6

10

50

第4問

『衡廬精舎蔵稿』(胡直)

6

8

50

2007

第1問

評論:山本健吉「日本の庭について」

6

10

50

第2問

小説:堀江敏幸「送り火」

6

9

50

第3問

「兵部卿物語」

6

9

50

第4問

「竹葉亭雑記」(姚元之)

6

8

50

2006

第1問

評論:別役実『言葉への戦術』

6

10

50

第2問

小説:松村栄子『僕はかぐや姫』

6

9

50

第3問

「うなゐ松」(木下長嘯子)

6

8

50

第4問

「胡祭酒集」(胡儼)

6

8

50


過去19年間の平均点
2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999
121.64点 109.95点 125.52点 119.55点 114.15点 101.08点 112.68点 102.05点 112.92点 107.17点
1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990  
116.02点 140.20点 137.89点 134.82点 129.62点 134.30点 122.90点 127.84点 133.1点  

設問別分析
【第1問】「評論文」栗原彬「かんけりの政治学」→やや難化
「高オニ」や「かんけり」など子供の遊びについて論じた文章で、受験生にはとっつきにくい内容で読みにくかったかもしれない。問1の漢字問題は難易度のレベルが確実に上がっている。問3・問4も筆者の論旨を的確に把握しなければならず、難問。その他は標準的な問題であったが、全体的にやや難化したといえる。


【第2問】「小説文」加賀乙彦「雨の庭」→昨年並み
長年住みなれた家を手放すことになった場面を、息子である「彼」の視点から描いた文章。問1の語彙問題はなじみのうすい言葉が並んでおり、やや難化した。問2〜5の読解問題は本文から根拠を拾って登場人物の心情を把握することが求められる。問6は2つとも正解するのは難しい。全体として昨年並みと思われる。


【第3問】「古文」『一本菊』→やや難化
本文の内容はさほど難しくないが、分量が増えた。問1の単語や助詞の意味、問4・5の心情やその変化、問6の内容合致は例年と変わらないが、選択肢に微妙なものがあるので判断に時間がかかる。新傾向はないが、問2の敬意の方向を問う問題は2005年以来、問3の和歌の修辞を問う問題は、1992・1999年以来の出題で、対応に困難を感じた受験生が多かったろう。全体としてやや難化したといえる。


【第4問】「漢文」侯方域『壮悔堂文集』→昨年並み
問題文の分量は、2006年度150字、2007年度138字に対して、2008年度の181字とほぼ同じく、191字と長めであった。5年続いていた漢字の読みの問題がなくなり、問1は語句の意味の問題になり、問3の主語の組み合わせの問題も2001年度以来久々に出題された。問4の「文の表現と内容の特徴」を問うような形式も、現・古にはあったが漢文では新しい傾向である。全体として、やや論理的な内容であることと、出題のされ方が変わったことで違和感を覚えた受験生がいるかもしれない。難易度は昨年並みと思われる。

新高3生へのアドバイス
現・古・漢の3つにわたるこれだけの分量を80分で解き終わるには日頃から時間配分の練習を重ねておく必要があります。「マーク式だからなんとかなる」という安易な考えでは、志望大に合格する十分な得点はとれないことを肝に銘じてください。現代文第1問の「評論」に苦手意識のある生徒は、まず漢字・語彙といった知識事項を固めることが先決です。こうした「言葉についての知識」は、単に漢字問題や語彙問題で点を取るだけでなく、読解力を根本から支えることにつながります。第2問の「小説」については、主観的に読む癖を直して、より客観的に読み、選択肢を分析していくための学習を進めていきましょう。高3のスタート時の段階では、現代文を解くのに時間を取られすぎて、古文・漢文に十分な時間が使えないまま終わってしまう人も多いようなので、過去問の演習などを通して時間配分の訓練をするように心がけましょう。古文・漢文では単語・文法・句法などの知識で確実に点がとれる部分があるので、まず第一に基礎知識をしっかり身につけることと、それを活かせるためのトレーニングを積み重ねて下さい。こうした一連の学習の進捗度・定着度を測定し、自分の弱点を修正して読解力を高めていくためには、東進の「センター試験本番レベル模試」を年6回定期的に受験していくことが効果的です。
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