国語
全体概観

現代文は昨年の形式どおり、古文は本試験では初めての軍記物語で読み易かった。漢文は論理的な文章が出題された。 

大問数 減少 | 変化なし | 増加 
設問数 減少 | 変化なし | 増加 
マーク数 減少 | 変化なし | 増加 
難易度 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 

大問数4、各大問の配点50点は例年通り。設問数は変わらないが解答数は1つ増えて37になった。 第1問の評論文出典は鷲田清一の「身ぶりの消失」。頻出著者かつ頻出テーマであり、受験生にとってはなじみのある内容。形式的には昨年同様、問6の「文章の表現」についての設問が小問二つに分かれてのものであった。設問レベルは昨年並みだが、二択まで絞ったあと迷う問題がいくつかあった。 第2問の小説文出典は芥川賞作家の加藤幸子の「海辺暮らし」。人物関係はそれほど難しいものではなかったが、後半の展開がやや読み取りにくい。設問別にみると問5が傍線部のない問いであるほかは昨年と同様。現代文全体としては難易度は昨年並みといえる。 第3問の古文は本試験では初めての軍記物語。本文は読みやすいが、正確な内容把握と選択肢との照合ができないと得点出来ない。 第4問の漢文は論理的な文章で、やや難。設問は三か所の空欄問題や、本文全体の構成の説明などにやや新味はあるが、ほぼ例年どおりであった。 国語全体としては、やや易化

年度

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2011

第1問

評論:鷲田清一「身ぶりの消失」

6

11

50

第2問

小説:加藤幸子「海辺暮らし」

6

9

50

第3問

古文:『保元物語』

6

8

50

第4問

漢文: 黄『金華黄先生文集』

6

9

50

2010

第1問

評論:岩井克人「資本主義と『人間』」

6

11

50

第2問

小説:中沢けい「楽隊のうさぎ」

6

9

50

第3問

『恋路ゆかしき大将』

6

8

50

第4問

『野鴻詩的』(黄子雲)

6

8

50

2009

第1問

評論:栗原彬「かんけりの政治学」

6

11

50

第2問

小説:加賀乙彦「雨の庭」

6

9

50

第3問

『一本菊』

6

8

50

第4問

『壮悔堂文集』(侯方域)

6

8

50

2008

第1問

評論:狩野敏次「住居空間の心身論−『奥』の日本文化」

6

11

50

第2問

小説:夏目漱石『彼岸過迄』

6

9

50

第3問

『狗張子』(浅井了意)

6

10

50

第4問

『衡廬精舎蔵稿』(胡直)

6

8

50


過去の平均点の推移

2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001
107.62点 115.46点 121.64点 109.95点 125.52点 119.55点 114.15点 101.08点 112.68点 102.05点
2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991
112.92点 107.17点 116.02点 140.20点 137.89点 134.82点 129.62点 134.30点 122.90点 127.84点

設問別分析
【第1問】「評論文」鷲田清一「身ぶりの消失」→昨年並み
身体と空間の文化的な関係について論じた文章。文章量はやや増加したが、頻出著者・テーマであり、受験生としてはなじみのある内容のものであった。設問別では、問1の漢字が難化。問2〜4は二択までは絞れるが、正解するためには正確な読解が必要。問6は昨年同様の形式なので特に戸惑う受験生は少なかったのではないだろうか。

【第2問】「小説文」加藤幸子「海辺暮し」→昨年並み
文章量は昨年よりやや増加したが、人物関係が単純で会話も多く、読むのにそれほど苦労しないはずだ。設定としては、一人(と猫)暮らしのおばあさんとそれを訪ねてくる市役所の職員との関係だが、後半に入ると展開がやや読み取りにくくなり、それに関係する問5、問6が正解しにくい。

【第3問】「古文」『保元物語』→やや易化
昨年より百字程多いが、物語に比べて読みやすい軍記物語であり、前書きや注も十分なので、内容理解はしやすい。問1は文意を踏まえて解くものが例年より多い。問2の文法は基本。問3〜5は、選択肢と本文表現との照合をすれば解答できる。問6の「表現の特徴」は、近年現代文や漢文で出題された形式だが、古文では2008年に「表現および文学史」の問題として出されて以来。読みやすいが、内容把握が正確でないと得点できない。

【第4問】「漢文」黄『金華黄先生文集』→やや難化
問題文は208字で、昨年度よりは長いがほぼ例年並み。設問はともかく、本文は学問論を述べた論理的な内容でかなり難しく感じられたのではないだろうか。問1の語の意味、問2の解釈、問3の書き下し文と解釈、問4の理由説明は例年の傾向だが、問5の空欄補充は漢文では珍しい傾向で、問6の本文の構成を問う問題は2008年度以来の出題であった。

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