《地理B》 設問別分析
【第1問 世界の自然環境】
例年通り第1問は自然環境に関する出題であった。問1の大気の大循環に関する正誤判定はやや目新しいが、冷静に対応すれば平易である。問2の植生と土壌を問う問題、問3の北アメリカ3地域の気温の年変化を問う問題は平易である。問4・5は、基本的な地形環境に関する問題だが、問4ではあまり扱われない地域が取り上げられており、選択肢の語句も受験生をやや迷わせる。問6は、第1問としてはめずらしく農牧業に関する知識を扱う。自由地下水・被圧地下水の区別、小麦の栽培、大規模漑農業など、判断を誤りかねない語句がちりばめられている。全体的には標準的な大問であった。
【第2問 産業構造の変化と産業の立地】
第2問は、例年、産業分野に当てられるが、本年のテーマはやや意表をついており、意欲的な設問もみられる。問1は、三角図表の読み取りさえできれば平易である。問2は第3次産業の業種を国別に問う問題でやや難であり、金融業が決め手となるだろう。問3・5は、頻出の工業立地を示す統計地図判定で易しい。問4は、研究開発費や特許件数の統計から国名を判定するが、フィンランドと韓国の判別で悩んだ受験生が多いだろう。問6は、産業別の立地傾向をグラフから問う問題で工夫された出題だが、かなり難しい。全従業者に占める割合に注目するとよい。設問ごとの難易度の差が大きい大問であった。
【第3問 都市と村落・生活文化】
前年の第3問と同じ分野からの出題であった。問1・2の統計問題はいずれもやや難である。3つの要素を総合的に判定する。問3は、村落の伝統的な形態と機能に関する問題で、やや細かい用語の知識が問われている。問4の住宅街の分布地図は、正答自体はすぐに選ぶことができると思われるが、4つとも判定しようとすると時間がかかる。問5の日刊新聞に関する統計は珍しい出題であり、経済水準や国の規模の大小から判定する。問6は生活文化に関する問題で、国ごとの気候環境なども考慮して考える。やや難しい大問であった。
【第4問 地中海地誌】
地誌を扱う大問の地域として、地中海地域が取り上げられた。ヨーロッパは3年前、アフリカは2年前に取り上げられている。問1は用語に気をつければ平易である。問2の気候に関する問題は、かなり難しい。問3の農作物の分布のうち、柑橘類とブドウについて過去問でも問われている。問4の工業地域の特徴に関する問題は易しい。観光に関する問5は、出題形式がユニークだが、内容は平易である。問6の食文化の問題は、宗教との関係がポイントとなる頻出内容である。標準的な大問であった。
【第5問 現代世界における人口および民族の諸問題】
現代世界の諸課題に関する総合問題であるが、前年に続きテーマが絞られている。問1の出生率に関する問題は、頻出かつ平易である。問2で喫煙率のデータを取り上げているのは目新しい。アメリカ合衆国とサウジアラビアの判定に注意したい。問3は人口・食料問題に関する文章正誤判定問題であり、「欠如」の語に注意する必要がある。問4の出題はユニークだが、結局はクルド人に関する知識の有無が決め手となる。問5はいくつかの先住民の共通点に関する正誤判定であるが、この形式は珍しい。全体としては標準的な大問である。
【第6問 地域調査(徳島県鳴門市)】
例年通り地理Aとの共通問題である。問1の鳥瞰図を判定する問題は、落ち着いて処理すれば易しい。問2の日照時間に関する問題は難しい。問3の新旧地形図の比較はごく易しい問題であった。問4は写真を用いた唯一の設問であるが、内容は平易である。さらに、問5・6ともに常識的に判断できる設問であった。全体としては、かなり点のとりやすい大問であろう。